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第5.1話 Dパート~他愛のない会話~
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「はぁ、はぁ……」
一方、勇たちは廊下を逃げ回っていた。
既に夜遅い時間のため、職員はほとんどいない。不気味なまでに静かな廊下に、ただ二人の足音だけが響いていた。
「全く、さっきまでの威勢はどこ行ったのよ……いつの間にか私が手を引いてるじゃない」
「ご、ごめんなさい……」
そう謝る勇に、思わずリアナは笑いを零す。
「ダーリンって、変な男ね……」
「うん、自分でもそう思う」
そう笑い返す勇に、リアナはまたも笑みを浮かべた。
何故だろう。ダーリンといると安らぐ気がする……リアナは、そんなことすら思っていた。
こんな痩せ細った男なのに。こんな頼りない男なのに。どこか彼を握る手に力がこもっていくのを、リアナは感じていた。
「……ね、知ってる? あたしって裏切り者なんだよ」
「そうなの?」
「うん……さっきまで、あの部屋に爆弾を仕掛けようとしてた。でも、実はあたしも裏切られてて、都合のいい鉄砲玉として使われてただけ。そして大幹部って地位も、『鋼衣』の実験のために用意されたものに過ぎなかったみたい。つまり……利用されてただけ」
「それは大変だ」
「なのに、ダーリンはあたしを助けるの?」
「うん、助けるよ」
「どうして? 私が、惨めだから?」
そう尋ねられて、勇はリアナに顔を向ける。
「……そうかもしれない」
そう困ったように笑顔を浮かべる勇に、リアナは思わず吹き出してしまう。
「何よそれ、ダーリンってホント素直ね」
「でも、仕方ないよ」
「なんで?」
「リアナさんが、助けてもらいたそうな顔をしてたから」
その言葉に、リアナはハッとする。
また、勇を握る手が強くなる。
全身がムズムズするのも感じる。
身体が……熱くなっていくのも感じる。
「え、え……?」
その自分の変化に……リアナ自身が、一番戸惑っていた。
「……隙ありッ!」
「ッ!」
だが瞬間、リアナは背中に殺気を感じたッ!
シュバァアアアッ!
刹那、リアナの蹴り上げた脚がキサラジの手を撥ね除ける。
そして後ろに下がったキサラジの姿が少しずつ浮かび上がっていった。
「うわ、もう追いついて……ッ!」
「……ダーリン、後ろに下がってて」
「え?」
その時リアナは……手に巨大化薬を握っていた。
「それって、もしかして……」
「ここなら、特に被害は出ないでしょう?」
そう笑うリアナの言う通り、彼女らは人気のない区画まで逃げていた。
確かに、ここならば誰かに迷惑がかかることはなかった……例え、巨大化したとしても。
「ちょ、ちょっと待って、えっと、リアナさんは裏切り者なのに、どうして……」
その勇の混乱した言葉に、リアナはクスッと笑う。
「そうね。こいつらにこの星を渡すと、もう好きな地雷系の服着れなくなっちゃうから……うん、多分それだけよ」
そして、リアナはキサラジを見つめる。
「さぁ、行くわよラスタ・レルラ……こっからが本番なんだから」
そして彼女は手に持つ薬剤を一気に飲み干し……光とともに、巨大化した。
一方、勇たちは廊下を逃げ回っていた。
既に夜遅い時間のため、職員はほとんどいない。不気味なまでに静かな廊下に、ただ二人の足音だけが響いていた。
「全く、さっきまでの威勢はどこ行ったのよ……いつの間にか私が手を引いてるじゃない」
「ご、ごめんなさい……」
そう謝る勇に、思わずリアナは笑いを零す。
「ダーリンって、変な男ね……」
「うん、自分でもそう思う」
そう笑い返す勇に、リアナはまたも笑みを浮かべた。
何故だろう。ダーリンといると安らぐ気がする……リアナは、そんなことすら思っていた。
こんな痩せ細った男なのに。こんな頼りない男なのに。どこか彼を握る手に力がこもっていくのを、リアナは感じていた。
「……ね、知ってる? あたしって裏切り者なんだよ」
「そうなの?」
「うん……さっきまで、あの部屋に爆弾を仕掛けようとしてた。でも、実はあたしも裏切られてて、都合のいい鉄砲玉として使われてただけ。そして大幹部って地位も、『鋼衣』の実験のために用意されたものに過ぎなかったみたい。つまり……利用されてただけ」
「それは大変だ」
「なのに、ダーリンはあたしを助けるの?」
「うん、助けるよ」
「どうして? 私が、惨めだから?」
そう尋ねられて、勇はリアナに顔を向ける。
「……そうかもしれない」
そう困ったように笑顔を浮かべる勇に、リアナは思わず吹き出してしまう。
「何よそれ、ダーリンってホント素直ね」
「でも、仕方ないよ」
「なんで?」
「リアナさんが、助けてもらいたそうな顔をしてたから」
その言葉に、リアナはハッとする。
また、勇を握る手が強くなる。
全身がムズムズするのも感じる。
身体が……熱くなっていくのも感じる。
「え、え……?」
その自分の変化に……リアナ自身が、一番戸惑っていた。
「……隙ありッ!」
「ッ!」
だが瞬間、リアナは背中に殺気を感じたッ!
シュバァアアアッ!
刹那、リアナの蹴り上げた脚がキサラジの手を撥ね除ける。
そして後ろに下がったキサラジの姿が少しずつ浮かび上がっていった。
「うわ、もう追いついて……ッ!」
「……ダーリン、後ろに下がってて」
「え?」
その時リアナは……手に巨大化薬を握っていた。
「それって、もしかして……」
「ここなら、特に被害は出ないでしょう?」
そう笑うリアナの言う通り、彼女らは人気のない区画まで逃げていた。
確かに、ここならば誰かに迷惑がかかることはなかった……例え、巨大化したとしても。
「ちょ、ちょっと待って、えっと、リアナさんは裏切り者なのに、どうして……」
その勇の混乱した言葉に、リアナはクスッと笑う。
「そうね。こいつらにこの星を渡すと、もう好きな地雷系の服着れなくなっちゃうから……うん、多分それだけよ」
そして、リアナはキサラジを見つめる。
「さぁ、行くわよラスタ・レルラ……こっからが本番なんだから」
そして彼女は手に持つ薬剤を一気に飲み干し……光とともに、巨大化した。
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