竜女王テラレグルス

未来おじさん

文字の大きさ
上 下
19 / 32

第4話 少年、敗北する Aパート~束の間の休息~

しおりを挟む
「進捗はどう?」
「良好。例の技術がいい感じに効果出てるらしいぜ」
 司令と副司令は『鋼衣』が収納されているハンガーに来ていた。
 前回手に入れた技術により、『鋼衣』の強度、整備性は劇的に改善していた。これならば一度の出撃による摩耗率を抑え、しかも変身を解けば自動的に武装を解除できるようになった。これにより整備性が劇的に向上し、翌日の出動までも可能になるであろう見通しだ。
 さらにもう一台、新たな『鋼衣』の整備が進んでいた。こちらも新たに手に入れた技術によって難関としていた問題がクリアし、制作は最終段階にまで来ていた。
「それもこれも、リアナさんがまたこちらに技術提供してくれたおかげね」
「ふふっ、ダーリンのためならこのくらい朝飯前よ!」
 そう言うとひょっこりとリアナが顔を出す。
 前回こちら側に寝返ってから、敵の情報を秘匿する代わりに(本人曰く「姫様以上の情報はもっていない」らしい)、彼女が持っていた『鋼衣』の技術を教えてもらった。
 ハツネとは違い実践に寄った技術はこれまでのGVが課題としていた技術に対する回答が多く存在しており、一気に技術的な課題がクリアへと向かったのだ。
「でもいいのか? 本当に向こうを抜けちまって」
「あーいいのいいの……向こうもさ、田舎者のあたしのことウザったく思ってたからね。部下たちは大変だと思うけど星の文化には理解あるし、ま、何とかなるわッ!」
 そう胸を張るリアナに、司令と副司令はため息を漏らす。
 だが、彼女のおかげで『とっておき』が完成しそうなのは事実だ。
 司令は、目の前にある4隻の船を見ながら、そう感慨に耽った。

 ……

 一方、僕らはというと。
「はい、勇――あーん」
「あ、あーん……」
「ママーあれ見てーイチャイチャしてるー」
「あらあらうふふ」
 遊園地で、デートをしていた。
「ハ、ハツネさん……流石に人前でこれは……」
「我慢して下さい。これも任務の一環です」
 そう。ことはこの前のリアナさんとの闘いが終わった後だ。
「面白い事実が判明したの」
 そう言ってある画面を見せてきた。
「これは戦闘におけるあなたたちのシンクロ率……つまり二人の心がどれだけ重なった状態かを表す指標よ」
「えっと……この前の戦闘で、上がってますね」
「そう。そしてその時、あなたたちは『鋼衣』なしで幹部級の相手と渡り合えた……要するに、レグルス・フィーネの実力が底上げされたのよ」
「つまり……」
「そう。あなたたちがより互いを理解しあえば、レグルス・フィーネは強くなる。もちろん敵に勝つ確率も上がるはずよ」
「では、もっと仲良くなりましょう」
「ハツネさん!?」
「そうすれば実力が上がるのですよね。なら、しない手はないでしょう」
「ふふ、そういうと思った」
 そう言って梶野さんは二枚のチケットを取り出した。
「ちょうど遊園地のチケットが二枚余っていてね、しばらく敵の襲撃もなかったことだし、この機会に二人で羽を伸ばしてきなさい」
 梶野さんにそう言われ遊園地に来た僕たちは、こうして互いを理解するための行為を繰り返していた。
「ハ、ハツネさん……なんか僕ばっかり恥ずかしいことしてない?」
「では、次は勇があーんをして下さい」
「えぇっ!?」
「そうすれば も私のことを理解できるはずです。はい。あーん」
 そう言って口を開けるハツネさん。
 赤く瑞々しい唇は、人間と何も変わらない。そんな口を僕の方へ向けてついドキドキしてしまう。
 だが、ハツネさんはこちらを見つめたまま待っているだけだ。ハツネさんをこのままにしておくわけにはいかないし……覚悟を決めるしかない。
「あ、あーん……」
 パクッ
 モッキュモッキュ――
 頬をリスのように膨らませアイスを頬張るハツネさん。
 しばらくすると無言でベンチの上を立った。
「ハ、ハツネさん!? もしかして好きじゃなかった……?」
「いえ、美味しかったです。口溶けの柔らかいクリームに、冷たいアイス。疲労が溜まった身体にはよく効く味です。ですがやはりもう一歩足りない。値段を考えるともう少し改良の余地はあると見るべきでしょう」
「お、おう……」
 思ってたより全然詳しい品評が返ってきた。少しビックリする。
「ですがアイスはあくまでおまけ。本分はアトラクションです。さぁ勇、次へ行きましょう」
 そう論評を終えたハツネさんはジェットコースターの方に向かっていく。次あれに乗るのかな、僕苦手なんだけど……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

シーフードミックス

黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。 以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。 ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。 内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~

阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。 転生した先は俺がやっていたゲームの世界。 前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。 だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……! そんなとき、街が魔獣に襲撃される。 迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。 だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。 平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。 だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。 隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。

3024年宇宙のスズキ

神谷モロ
SF
 俺の名はイチロー・スズキ。  もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。  21世紀に生きていた普通の日本人。  ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。  今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。 ※この作品はカクヨムでも掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...