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第4話 少年、敗北する Aパート~束の間の休息~
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「進捗はどう?」
「良好。例の技術がいい感じに効果出てるらしいぜ」
司令と副司令は『鋼衣』が収納されているハンガーに来ていた。
前回手に入れた技術により、『鋼衣』の強度、整備性は劇的に改善していた。これならば一度の出撃による摩耗率を抑え、しかも変身を解けば自動的に武装を解除できるようになった。これにより整備性が劇的に向上し、翌日の出動までも可能になるであろう見通しだ。
さらにもう一台、新たな『鋼衣』の整備が進んでいた。こちらも新たに手に入れた技術によって難関としていた問題がクリアし、制作は最終段階にまで来ていた。
「それもこれも、リアナさんがまたこちらに技術提供してくれたおかげね」
「ふふっ、ダーリンのためならこのくらい朝飯前よ!」
そう言うとひょっこりとリアナが顔を出す。
前回こちら側に寝返ってから、敵の情報を秘匿する代わりに(本人曰く「姫様以上の情報はもっていない」らしい)、彼女が持っていた『鋼衣』の技術を教えてもらった。
ハツネとは違い実践に寄った技術はこれまでのGVが課題としていた技術に対する回答が多く存在しており、一気に技術的な課題がクリアへと向かったのだ。
「でもいいのか? 本当に向こうを抜けちまって」
「あーいいのいいの……向こうもさ、田舎者のあたしのことウザったく思ってたからね。部下たちは大変だと思うけど星の文化には理解あるし、ま、何とかなるわッ!」
そう胸を張るリアナに、司令と副司令はため息を漏らす。
だが、彼女のおかげで『とっておき』が完成しそうなのは事実だ。
司令は、目の前にある4隻の船を見ながら、そう感慨に耽った。
……
一方、僕らはというと。
「はい、勇――あーん」
「あ、あーん……」
「ママーあれ見てーイチャイチャしてるー」
「あらあらうふふ」
遊園地で、デートをしていた。
「ハ、ハツネさん……流石に人前でこれは……」
「我慢して下さい。これも任務の一環です」
そう。ことはこの前のリアナさんとの闘いが終わった後だ。
「面白い事実が判明したの」
そう言ってある画面を見せてきた。
「これは戦闘におけるあなたたちのシンクロ率……つまり二人の心がどれだけ重なった状態かを表す指標よ」
「えっと……この前の戦闘で、上がってますね」
「そう。そしてその時、あなたたちは『鋼衣』なしで幹部級の相手と渡り合えた……要するに、レグルス・フィーネの実力が底上げされたのよ」
「つまり……」
「そう。あなたたちがより互いを理解しあえば、レグルス・フィーネは強くなる。もちろん敵に勝つ確率も上がるはずよ」
「では、もっと仲良くなりましょう」
「ハツネさん!?」
「そうすれば実力が上がるのですよね。なら、しない手はないでしょう」
「ふふ、そういうと思った」
そう言って梶野さんは二枚のチケットを取り出した。
「ちょうど遊園地のチケットが二枚余っていてね、しばらく敵の襲撃もなかったことだし、この機会に二人で羽を伸ばしてきなさい」
梶野さんにそう言われ遊園地に来た僕たちは、こうして互いを理解するための行為を繰り返していた。
「ハ、ハツネさん……なんか僕ばっかり恥ずかしいことしてない?」
「では、次は勇があーんをして下さい」
「えぇっ!?」
「そうすれば も私のことを理解できるはずです。はい。あーん」
そう言って口を開けるハツネさん。
赤く瑞々しい唇は、人間と何も変わらない。そんな口を僕の方へ向けてついドキドキしてしまう。
だが、ハツネさんはこちらを見つめたまま待っているだけだ。ハツネさんをこのままにしておくわけにはいかないし……覚悟を決めるしかない。
「あ、あーん……」
パクッ
モッキュモッキュ――
頬をリスのように膨らませアイスを頬張るハツネさん。
しばらくすると無言でベンチの上を立った。
「ハ、ハツネさん!? もしかして好きじゃなかった……?」
「いえ、美味しかったです。口溶けの柔らかいクリームに、冷たいアイス。疲労が溜まった身体にはよく効く味です。ですがやはりもう一歩足りない。値段を考えるともう少し改良の余地はあると見るべきでしょう」
「お、おう……」
思ってたより全然詳しい品評が返ってきた。少しビックリする。
「ですがアイスはあくまでおまけ。本分はアトラクションです。さぁ勇、次へ行きましょう」
そう論評を終えたハツネさんはジェットコースターの方に向かっていく。次あれに乗るのかな、僕苦手なんだけど……。
「良好。例の技術がいい感じに効果出てるらしいぜ」
司令と副司令は『鋼衣』が収納されているハンガーに来ていた。
前回手に入れた技術により、『鋼衣』の強度、整備性は劇的に改善していた。これならば一度の出撃による摩耗率を抑え、しかも変身を解けば自動的に武装を解除できるようになった。これにより整備性が劇的に向上し、翌日の出動までも可能になるであろう見通しだ。
さらにもう一台、新たな『鋼衣』の整備が進んでいた。こちらも新たに手に入れた技術によって難関としていた問題がクリアし、制作は最終段階にまで来ていた。
「それもこれも、リアナさんがまたこちらに技術提供してくれたおかげね」
「ふふっ、ダーリンのためならこのくらい朝飯前よ!」
そう言うとひょっこりとリアナが顔を出す。
前回こちら側に寝返ってから、敵の情報を秘匿する代わりに(本人曰く「姫様以上の情報はもっていない」らしい)、彼女が持っていた『鋼衣』の技術を教えてもらった。
ハツネとは違い実践に寄った技術はこれまでのGVが課題としていた技術に対する回答が多く存在しており、一気に技術的な課題がクリアへと向かったのだ。
「でもいいのか? 本当に向こうを抜けちまって」
「あーいいのいいの……向こうもさ、田舎者のあたしのことウザったく思ってたからね。部下たちは大変だと思うけど星の文化には理解あるし、ま、何とかなるわッ!」
そう胸を張るリアナに、司令と副司令はため息を漏らす。
だが、彼女のおかげで『とっておき』が完成しそうなのは事実だ。
司令は、目の前にある4隻の船を見ながら、そう感慨に耽った。
……
一方、僕らはというと。
「はい、勇――あーん」
「あ、あーん……」
「ママーあれ見てーイチャイチャしてるー」
「あらあらうふふ」
遊園地で、デートをしていた。
「ハ、ハツネさん……流石に人前でこれは……」
「我慢して下さい。これも任務の一環です」
そう。ことはこの前のリアナさんとの闘いが終わった後だ。
「面白い事実が判明したの」
そう言ってある画面を見せてきた。
「これは戦闘におけるあなたたちのシンクロ率……つまり二人の心がどれだけ重なった状態かを表す指標よ」
「えっと……この前の戦闘で、上がってますね」
「そう。そしてその時、あなたたちは『鋼衣』なしで幹部級の相手と渡り合えた……要するに、レグルス・フィーネの実力が底上げされたのよ」
「つまり……」
「そう。あなたたちがより互いを理解しあえば、レグルス・フィーネは強くなる。もちろん敵に勝つ確率も上がるはずよ」
「では、もっと仲良くなりましょう」
「ハツネさん!?」
「そうすれば実力が上がるのですよね。なら、しない手はないでしょう」
「ふふ、そういうと思った」
そう言って梶野さんは二枚のチケットを取り出した。
「ちょうど遊園地のチケットが二枚余っていてね、しばらく敵の襲撃もなかったことだし、この機会に二人で羽を伸ばしてきなさい」
梶野さんにそう言われ遊園地に来た僕たちは、こうして互いを理解するための行為を繰り返していた。
「ハ、ハツネさん……なんか僕ばっかり恥ずかしいことしてない?」
「では、次は勇があーんをして下さい」
「えぇっ!?」
「そうすれば も私のことを理解できるはずです。はい。あーん」
そう言って口を開けるハツネさん。
赤く瑞々しい唇は、人間と何も変わらない。そんな口を僕の方へ向けてついドキドキしてしまう。
だが、ハツネさんはこちらを見つめたまま待っているだけだ。ハツネさんをこのままにしておくわけにはいかないし……覚悟を決めるしかない。
「あ、あーん……」
パクッ
モッキュモッキュ――
頬をリスのように膨らませアイスを頬張るハツネさん。
しばらくすると無言でベンチの上を立った。
「ハ、ハツネさん!? もしかして好きじゃなかった……?」
「いえ、美味しかったです。口溶けの柔らかいクリームに、冷たいアイス。疲労が溜まった身体にはよく効く味です。ですがやはりもう一歩足りない。値段を考えるともう少し改良の余地はあると見るべきでしょう」
「お、おう……」
思ってたより全然詳しい品評が返ってきた。少しビックリする。
「ですがアイスはあくまでおまけ。本分はアトラクションです。さぁ勇、次へ行きましょう」
そう論評を終えたハツネさんはジェットコースターの方に向かっていく。次あれに乗るのかな、僕苦手なんだけど……。
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