竜女王テラレグルス

未来おじさん

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3話Cパート~テラレグルス、合体不能~

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「さぁ、今日も会議を始めよう」
「はいはーい、今日の議題はメイスの処分ですか~?」
「……」
「違う、リアナ。だがメイスの部隊はしばらく待機だ」
「ま、妥当な判断ね……弱い奴を出すからこうなるのよ、全く」
「ことを構えるのはよくないが、イザベラの言う通りだ……油断のし過ぎは足元を掬われる。それを肝に銘じるのだな」
「……了解した。ローラ」
「では今日の議題だ……次は誰が出る?」
「はい! あたし! あたしの部隊が出る! 絶対あたし~!」
「アンタなんかの部隊で勝てると思ってんの? またあいつらの技の餌になるだけよ」
「確かにな……奴らが『鋼衣』を作っていることは想定外だった。これはこの地球の技術順位の再考を考えなければなるまい」
「ならさ……あたしが出ればよくない?」
「ッ……」
「……アンタ、それ本気?」
「いやさ~……あたしは少しでも成り上がらなきゃいけないわけ。だからこれってさ、むしろチャンスじゃない?」
「……確かに理には適っている……いくら『鋼衣』を作れても、それをメンテナンスする能力まであるとは限らない……ならば、今全力で叩くのは道理だ。やれるな?」
「当っ然よローラ……あたしを誰だと思ってんの」
「なら、次は君だ……行ってこい。そして今度こそ、『鋼姫』を捕らえてこい」
「了か~い♪ それじゃ獣人星ゾルレナス筆頭秋山莉奈ことリアナ……次、行ってきまーす」

 ……

「……うん、メンテナンス終了。もういいわよ」
 そう梶野さんに言われ、私はベッドの上から立ち上がる。
 体を少し動かしてみる。うん、良好だ。
「ごめんなさいね、昼休みまで時間貰っちゃって……でも、おかげで検査は終わったわ。わざわざ来てくれてありがとう」
「――それで、『鋼衣』の方は?」
 私が問いかけたその言葉に、梶野さんは言葉を詰まらせる。
「あーその……あんまりよくないわ。少なくともまだ出撃待機の状態までは時間が掛かりそうなの……そうね、3日ぐらい」
「――そうですか」
 私は制服を着てもう一度学校に戻ることにする。
 確かに見通しはよくないが、勇と一緒にいればまだ希望は持てる。
 最悪、レグルス・フィーネのまま戦うことも可能だ。
「あ、あの、ハツネさん……」
 すると、梶野さんがまだ言葉を掛けてくる。何か言いにくそうだ。
「……無理はしないでね」
「――はい」
 私はその言葉の意味もよく分からず、ただ頷いてその場を去った。

 ……

「さぁて、いっちょやりますか!」
 そう言って莉奈ことリアナは構えを取る。
 ラスタ・レルラ巨大化用薬剤。普段は人間サイズの肉体を持つ彼女は、投薬により戦闘形態へ変身、及び巨体サイズへとなることができる。
 そのための活性化剤を、リアナは……
「んっ、ちゅーっ♪」
 ストローを使って飲み始めた。
「んっ……来た来た♪」
 すると、彼女の身体は光り始める。
 それと同時に、彼女は口元に笑みを浮かべる。
「……変身ッ!」
 そして……街の中心で、リアナは真の姿を見せつけた。
「きゃあああああぁッ!」
 現れたのは、しなやかな身体をした豹型のラスタ・レルラ。
 頭にツインテールを抱え女性らしいシルエットをしたその姿は、しかし手足に纏う手甲・脚甲がともに戦いのための姿だと示している。
 その威容な姿で突然現れた巨人に、周囲の人々はすぐに騒然となる。
「か、怪人だぁッ!」
 逃げ惑う街の人たち。
 その中で、唯一勇だけ、その場に踏みとどまっていた。
「ッ……司令、ラスタ・レルラです! すぐにでも変身許可、よろしくお願いしますッ!」

 ……

「もう現れたの!? まだ『鋼衣』のメンテナンスは終わってないのに!」
「小川、メンテナンス進捗は!?」
「無理っすよ! まだバラバラの分解中です~っ!」
「ちっ……おい、どうする司令!」
「……副司令、自衛隊に救援要請! 二人にもすぐ変身命令を出すのよ!」
「変身って……! 無茶です! レグルス・フィーネのままじゃ勝てる可能性は……」
「それでもやらなきゃならないでしょうッ!」
「ッ!」
「こっちも出来るだけのサポートはする。それでも負けてしまった時は……この星が取られるだけよ」
「っ……」
「どうせ未来が変わらないなら……出来るだけ抵抗しといた方が、後悔は少ないと思わない?」

 ……

「あ、ハツネさんッ!」
「すいません、基地でのメンテナンスで遅くなりました……変身しましょう、勇」
「……『鋼衣』は?」
「……」
 その無言の返事だけで僕は察した。
 仕方ないだろう。あれだけ故障個所があったのだ。それを一晩で修復できるとは思えない。
 けれどそれは、僕たち二人だけであのラスタ・レルラと戦うということだ。
「……やろう、ハツネさん」
 それでも、僕は戦うことにした。
 不思議なことに、さっきまでの恐怖感はなくなっていた。それよりもレグルス・フィーネへ変身しなければ彼女は人間体のままで戦おうとするであろうことが気になっていた。
 それに……僕もこの星を守りたい。そんな気持ちは、ハツネさんと一致している気がした。
「……はい。行きましょう」
 そう言って僕たちは向かい合い……そして、変身した。
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