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第2話 竜女王、降臨 Aパート~Grand Vanguard~
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「――ここが私たちの組織の基地です」
僕は今、地下にある鉄の扉の前に立っていた。
都市のとあるビルのエレベータを使い地下数十階に降りた僕たちの前にある扉。その横にある機械に、ハツネさんは手をかざす。
「――ハツネです。重要参考人を連れてきました。通して下さい」
何か不穏な言葉が聞こえた気がするけど気のせいだろう。
そして扉が開き通された先にあったのは……ハイテクな機械が並んだ広い部屋だった。
「ようこそ、GVへ。歓迎するぜ」
そう言葉を投げかけてきたのは、体格がいい男の人。野崎先輩より筋肉がありそうだ。
「ハツネ、まずは任務お疲れ様……そして、王子を見つけたようだな」
「――はい。この人が私の王子です」
「!? お、王子!?」
聞きなれない言葉に驚きつつも辺りを見回すが、どうやら驚いてるのは僕だけのようだ。
「ひ……ひひひ……シクレが来た……やったぜ、あと一個でコンプだ……」
「えーとここの経費が……あ! やっぱり副司令ミスってる! もう、仕方ないんだから……」
他の人たちはどうも忙しそうだ。
「悪ぃな、ここはいつもこんな感じなんだ……で、君の名前は?」
「あ……あ、浅谷 勇です」
「勇。いい名前だ。俺は海堂。ここの副司令をやってる」
そこまで言って副司令と呼ばれた人は席に座る。
「まーもう少し待ってくれ。あと少しで司令が帰ってくるんだ。その時一緒に説明した方が色々わかりやす……」
「王子が見つかったんだって!?」
バアァァンッ!!!
その言葉と同時に扉が勢いよく開く。その音に僕は思わず飛び上がるが、他の人たちは気にしてもいない。
「なぁんで伝えてくれなかったのよ! 聞いてればタヌキなんか放ってすぐ来たっていうのに!」
「現に今来てるじゃないですか、天知キャロライン司令」
その言葉に僕は目を見開く。
司令? この人が?
「あぁ、あなたがその王子ね。早速だけど解剖していいかしら?」
「え……? か、解剖……?」
「首を縦に振るなよ。この人は『マジ』でやる」
その言葉に実感めいたものを感じ、僕は体を震わせる。
司令さんの見た目はとんでもない美人だ。たなびくブロンドヘアに、整った顔立ち。彫りの深い顔に光る青碧の瞳がそれをより強調する。
スタイルも抜群だ。豊かに実った胸に、括れた腰。そしてしっとりと脂肪のついたお尻。女優もかくやというボディバランスをしている。
けれど、それを補ってあまりある……振る舞いから滲む空気。この人に近づいてはならないと本能的なものが告げているのを、僕は感じていた。
「ちっ、駄目みたいね……まぁいいわ。あなたにはどうせここに入り浸ってもらうことになるもの。チャンスはいくらでもあるわ」
そんな不穏な言葉を残し、再びこっちを振り向く。
「さ、それじゃ本題に入りましょう……率直に言って、まずあなたがこれまで見てきたものを聞きたいわ」
その冷静な言葉に、僕は息を飲む。
「えっと……氷室さんを狙った、う、宇宙人? と、戦った……?」
「そう。その宇宙人が太陽系外知能生命体……私たちはラスタ・レルラと呼んでるわ」
そう言って梶野さんは前方にあった画面を切り替える。
「まず大事なのは、この地球も大きな宇宙社会の一部ということ。これまでは知能が低い田舎の星だからと実質的に無視されてきたの」
「だからこの星には宇宙人はいねぇし、これからも来ることはまずねぇと思われてた……この姫さんの星が、滅ぶまではな」
その言葉に、僕は氷室さんの方を振り向く。
「……ハツネの住んでた星・セレーラは、この宇宙を支配する先進星の一つだった。けれど数年前にクーデタが勃発、それに巻き込まれた彼女はその星から何とか脱出し、この星にたどりついたの」
「……そんな」
つまりそれって、氷室さん、いやハツネさんの故郷はもう……。
「彼女がこの星にたどりついたのが7年前の話。以来、そこから私たちは彼女が提供する技術を検証、構築ノウハウを積んで……ラスタ・レルラの侵略に備えてきた」
「……ッ! な、なんでこの星が侵略されるんですか? さっきまでの話なら、無視されるはずじゃ……」
「それは7年前の事情だ。今は事情が違う……この姫様がいること以上に、故郷の星が『侵略星』へと変わっちまった。そして周辺惑星を侵略した今……奴らの次の目標は、この星だ」
「……っ」
息が詰まった。
宇宙人が侵略? あんな、化け物みたいな奴らが?
そんな想像をした瞬間、僕は吐き気を覚えた。胃からこみあげてくるものが食道を焼く感覚がして、一気に気持ち悪くなった。
「そのために、あなたに戦ってもらう必要があるのよ。勇君」
けれど、穏やかな栗色のショートカットを揺らす梶野さんの言葉に僕はビクッ、と肩を震わせる。
「え……ぼ、僕に?」
「そう……あなたはレグルス・フィーネに乗ってラスタ・レルラを撃退したわね? あれは誰にでも出来ることじゃない……というより、あなたにしか出来ないことなのよ」
そこで厳つい顔をした海堂副司令が鼻を鳴らし言葉を繋ぐ。
「こいつは、自分に乗せるヘテロ生命体……つまり男を選ぶ。もしその男を乗せたらレグルス・フィーネはそいつの思い通りに動かなきゃいけなくなるんだ」
「思い、通り……」
「そう。それは女の子にとって一大事ね。だから彼女は慎重に相手を選び……あなたを選んだ」
その言葉を僕は重く受け止める。確かにさっきの闘いでは天知司令の言う通り、僕のイメージ通りに氷室さんは動いていた。それが事実だと実感し、僕の額に冷や汗が流れる。
「……ど、どうして、僕なんかを……」
「さぁ? それはこの子に聞いてみないと。シャイだから絶対に言わないでしょうけど」
「――はい。言いません」
本当だ。完全に無表情で顔色からも窺わせてくれない。
「でも、それでもあなたは選ばれた。だからレグルス・フィーネはあなたにしか操れないのよ」
「レグルス・フィーネ……そういえばあのロボットは……」
「――私のもう一つの姿です」
「え……!?」
「私たちセレーラ星人は生体金属生命体です。この星の生物と同様のしなやかさに、金属の硬さを併せ持ってます」
そう無表情で告げた氷室さんの言葉を司令が補足する。
「それを十全に引き出せるのがレグルス・フィーネの姿。だから彼女は『鋼姫』なんて呼ばれてるのよ」
「なら、あの姿で敵を倒せるんじゃ……」
「ことはそう簡単にはいかないわ。まず、王子がいないとレグルス・フィーネにはなれない。そして例え王子が見つかっても、敵はあんな雑魚ばっかりではないわ」
「え……」
その言葉に、僕は息を詰まらせる。
「ここに来る間に戦闘の動画を見せてもらったわ。率直に言って……あれは下の下の雑魚。他のラスタ・レルラは、あの何倍も強いわ」
「ッ!!! あの化け物の……何倍も?」
「えぇ。だからあなたたちにはもっと強くなってもらわなきゃいけない。そのために……」
「あぁ~あれはまだダメっすよ」
瞬間、これまでただフィギュアを弄っていた中年男性の職員――小川さんが口をはさんできた。
「まだレグルス・フィーネのデータが全然そろってないっす。だから細かい調整とか終わってないので、まだ使えません」
その言葉に、僕は愕然とする。
「ッ! そんな……!」
「あら? どうしてあなたが悲しむのかしら?」
「だって……それがないとハツネさんはラスタ・レルラに勝てないんですよね!? それじゃ、ハツネさんが傷つくだけです!」
「……ふーん」
「いや、ふーんじゃなくて……」
けれど、天知司令は何も言わず僕を生温かい目でしばらく見て告げる。
「あなた、ハツネにぞっこんなのね」
「……え!?」
そして僕は思わず驚きの声を漏らす。
「なるほど。資格としては悪くないってわけね」
「い、今はそんな話してる場合じゃ……」
「安心なさい。彼女は私たちの虎の子よ。もし未完成のままなら出撃はさせないわ。だから心配しないで」
「……っ」
僕はそれでも何も言えなかった。もしその場合はこの星が一方的に侵略されるだけだ。それをそのまま見逃すというのも……僕としては許せない。
かといって、ただハツネさんを傷つけるだけというのも……僕には耐えられない。
一体、どうすればいいんだ……。
僕は今、地下にある鉄の扉の前に立っていた。
都市のとあるビルのエレベータを使い地下数十階に降りた僕たちの前にある扉。その横にある機械に、ハツネさんは手をかざす。
「――ハツネです。重要参考人を連れてきました。通して下さい」
何か不穏な言葉が聞こえた気がするけど気のせいだろう。
そして扉が開き通された先にあったのは……ハイテクな機械が並んだ広い部屋だった。
「ようこそ、GVへ。歓迎するぜ」
そう言葉を投げかけてきたのは、体格がいい男の人。野崎先輩より筋肉がありそうだ。
「ハツネ、まずは任務お疲れ様……そして、王子を見つけたようだな」
「――はい。この人が私の王子です」
「!? お、王子!?」
聞きなれない言葉に驚きつつも辺りを見回すが、どうやら驚いてるのは僕だけのようだ。
「ひ……ひひひ……シクレが来た……やったぜ、あと一個でコンプだ……」
「えーとここの経費が……あ! やっぱり副司令ミスってる! もう、仕方ないんだから……」
他の人たちはどうも忙しそうだ。
「悪ぃな、ここはいつもこんな感じなんだ……で、君の名前は?」
「あ……あ、浅谷 勇です」
「勇。いい名前だ。俺は海堂。ここの副司令をやってる」
そこまで言って副司令と呼ばれた人は席に座る。
「まーもう少し待ってくれ。あと少しで司令が帰ってくるんだ。その時一緒に説明した方が色々わかりやす……」
「王子が見つかったんだって!?」
バアァァンッ!!!
その言葉と同時に扉が勢いよく開く。その音に僕は思わず飛び上がるが、他の人たちは気にしてもいない。
「なぁんで伝えてくれなかったのよ! 聞いてればタヌキなんか放ってすぐ来たっていうのに!」
「現に今来てるじゃないですか、天知キャロライン司令」
その言葉に僕は目を見開く。
司令? この人が?
「あぁ、あなたがその王子ね。早速だけど解剖していいかしら?」
「え……? か、解剖……?」
「首を縦に振るなよ。この人は『マジ』でやる」
その言葉に実感めいたものを感じ、僕は体を震わせる。
司令さんの見た目はとんでもない美人だ。たなびくブロンドヘアに、整った顔立ち。彫りの深い顔に光る青碧の瞳がそれをより強調する。
スタイルも抜群だ。豊かに実った胸に、括れた腰。そしてしっとりと脂肪のついたお尻。女優もかくやというボディバランスをしている。
けれど、それを補ってあまりある……振る舞いから滲む空気。この人に近づいてはならないと本能的なものが告げているのを、僕は感じていた。
「ちっ、駄目みたいね……まぁいいわ。あなたにはどうせここに入り浸ってもらうことになるもの。チャンスはいくらでもあるわ」
そんな不穏な言葉を残し、再びこっちを振り向く。
「さ、それじゃ本題に入りましょう……率直に言って、まずあなたがこれまで見てきたものを聞きたいわ」
その冷静な言葉に、僕は息を飲む。
「えっと……氷室さんを狙った、う、宇宙人? と、戦った……?」
「そう。その宇宙人が太陽系外知能生命体……私たちはラスタ・レルラと呼んでるわ」
そう言って梶野さんは前方にあった画面を切り替える。
「まず大事なのは、この地球も大きな宇宙社会の一部ということ。これまでは知能が低い田舎の星だからと実質的に無視されてきたの」
「だからこの星には宇宙人はいねぇし、これからも来ることはまずねぇと思われてた……この姫さんの星が、滅ぶまではな」
その言葉に、僕は氷室さんの方を振り向く。
「……ハツネの住んでた星・セレーラは、この宇宙を支配する先進星の一つだった。けれど数年前にクーデタが勃発、それに巻き込まれた彼女はその星から何とか脱出し、この星にたどりついたの」
「……そんな」
つまりそれって、氷室さん、いやハツネさんの故郷はもう……。
「彼女がこの星にたどりついたのが7年前の話。以来、そこから私たちは彼女が提供する技術を検証、構築ノウハウを積んで……ラスタ・レルラの侵略に備えてきた」
「……ッ! な、なんでこの星が侵略されるんですか? さっきまでの話なら、無視されるはずじゃ……」
「それは7年前の事情だ。今は事情が違う……この姫様がいること以上に、故郷の星が『侵略星』へと変わっちまった。そして周辺惑星を侵略した今……奴らの次の目標は、この星だ」
「……っ」
息が詰まった。
宇宙人が侵略? あんな、化け物みたいな奴らが?
そんな想像をした瞬間、僕は吐き気を覚えた。胃からこみあげてくるものが食道を焼く感覚がして、一気に気持ち悪くなった。
「そのために、あなたに戦ってもらう必要があるのよ。勇君」
けれど、穏やかな栗色のショートカットを揺らす梶野さんの言葉に僕はビクッ、と肩を震わせる。
「え……ぼ、僕に?」
「そう……あなたはレグルス・フィーネに乗ってラスタ・レルラを撃退したわね? あれは誰にでも出来ることじゃない……というより、あなたにしか出来ないことなのよ」
そこで厳つい顔をした海堂副司令が鼻を鳴らし言葉を繋ぐ。
「こいつは、自分に乗せるヘテロ生命体……つまり男を選ぶ。もしその男を乗せたらレグルス・フィーネはそいつの思い通りに動かなきゃいけなくなるんだ」
「思い、通り……」
「そう。それは女の子にとって一大事ね。だから彼女は慎重に相手を選び……あなたを選んだ」
その言葉を僕は重く受け止める。確かにさっきの闘いでは天知司令の言う通り、僕のイメージ通りに氷室さんは動いていた。それが事実だと実感し、僕の額に冷や汗が流れる。
「……ど、どうして、僕なんかを……」
「さぁ? それはこの子に聞いてみないと。シャイだから絶対に言わないでしょうけど」
「――はい。言いません」
本当だ。完全に無表情で顔色からも窺わせてくれない。
「でも、それでもあなたは選ばれた。だからレグルス・フィーネはあなたにしか操れないのよ」
「レグルス・フィーネ……そういえばあのロボットは……」
「――私のもう一つの姿です」
「え……!?」
「私たちセレーラ星人は生体金属生命体です。この星の生物と同様のしなやかさに、金属の硬さを併せ持ってます」
そう無表情で告げた氷室さんの言葉を司令が補足する。
「それを十全に引き出せるのがレグルス・フィーネの姿。だから彼女は『鋼姫』なんて呼ばれてるのよ」
「なら、あの姿で敵を倒せるんじゃ……」
「ことはそう簡単にはいかないわ。まず、王子がいないとレグルス・フィーネにはなれない。そして例え王子が見つかっても、敵はあんな雑魚ばっかりではないわ」
「え……」
その言葉に、僕は息を詰まらせる。
「ここに来る間に戦闘の動画を見せてもらったわ。率直に言って……あれは下の下の雑魚。他のラスタ・レルラは、あの何倍も強いわ」
「ッ!!! あの化け物の……何倍も?」
「えぇ。だからあなたたちにはもっと強くなってもらわなきゃいけない。そのために……」
「あぁ~あれはまだダメっすよ」
瞬間、これまでただフィギュアを弄っていた中年男性の職員――小川さんが口をはさんできた。
「まだレグルス・フィーネのデータが全然そろってないっす。だから細かい調整とか終わってないので、まだ使えません」
その言葉に、僕は愕然とする。
「ッ! そんな……!」
「あら? どうしてあなたが悲しむのかしら?」
「だって……それがないとハツネさんはラスタ・レルラに勝てないんですよね!? それじゃ、ハツネさんが傷つくだけです!」
「……ふーん」
「いや、ふーんじゃなくて……」
けれど、天知司令は何も言わず僕を生温かい目でしばらく見て告げる。
「あなた、ハツネにぞっこんなのね」
「……え!?」
そして僕は思わず驚きの声を漏らす。
「なるほど。資格としては悪くないってわけね」
「い、今はそんな話してる場合じゃ……」
「安心なさい。彼女は私たちの虎の子よ。もし未完成のままなら出撃はさせないわ。だから心配しないで」
「……っ」
僕はそれでも何も言えなかった。もしその場合はこの星が一方的に侵略されるだけだ。それをそのまま見逃すというのも……僕としては許せない。
かといって、ただハツネさんを傷つけるだけというのも……僕には耐えられない。
一体、どうすればいいんだ……。
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