【元幹部自衛官 S氏 執筆協力】元自衛官が明治時代に遡行転生!〜明治時代のロシアと戦争〜

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第128話.移動

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これはルシヤの。そうだルフィナ・ソコロワ作戦だ。
まんまとハメられた。心の中のざわつきを抑えて近くの隊員に言った。

「撤収するぞ!」
「良いのですか?敵将が見える位置にいるのに……」
「あいつは将軍ではない、替え玉だ」
「影武者であると?」
「ああ。意図はわからんが、あんな格好でルフィナが出てきたという事は、敵の指揮官は此処にはおらん」

物陰に隠れたまま、皆に指示を出す。

「こちらの場所が知られた可能性がある。各自、尾行に注意して合流地点へ戻れ」


……


幸いにも追っ手に追撃されることはなく、合流地点に戻る事が出来た。変わらぬ拠点の姿に安堵する。
するとそこにはウナと一緒に伝達に来た兵隊がいた。

「穂高中尉、師団長より伝令です」
「聞こう」
「穂高中尉率いる狙撃隊は、速やかに札幌の師団司令部まで帰還せよ。との事です」
「こちらもルシヤの遅延作戦を実行中だ。なぜ我々を呼び寄せるのか」

先にウナに聞いた情報の通りだな。しかし、理由がわからん。

「敵艦隊が青島を出港する気配があります」

海軍の仕事だな。
東京の守りを薄くしてでも、連合艦隊を増強してくれと浅間中将にお願いしておいた筈だが。

「……また、艦隊の中に毒ガス兵器を積み込んだ艦船がある。そういう可能性があるのです」
「毒ガスだと?」

まさか。
いや、当然か。戦争に有利になるなら使える物は何でも使う。

「万一、敵艦が明而海軍の手を逃れて上陸を許した場合。もし札幌にそれを持ち込まれれば……」
「そんな事をすれば占領どころでは無くなる。札幌には民間人の避難者がごまんといるのだ、どれだけの犠牲者が出るか想像もできん」
「はい」
「しかし。ルシヤがそれをしないとも限らんか」
「はい。そこで、精鋭部隊である狙撃隊を師団司令部に置きたいとの事です。最悪の場合、特殊な作戦を遂行する事になる。そこで穂高中尉の力が必要であると」
「うん」

ルシヤの作戦で考えられるのは、ルシヤ海軍が河川からの侵入を果たし陸戦隊と、陸軍で我々を挟み撃ちか。
それが叶わぬ場合の毒ガスだな。余りにも殺傷力が通常兵器に比べて強すぎる。切り札も切り札、ジョーカーになるだろう。

「分かった。三十分間の準備の後、札幌の司令部に移動を開始する」
「はい」

この地にいないであろう敵の大将は、札幌近郊での海軍との合流を考えてすでに移動しているということだろうか。ルフィナ・ソコロワが姿を表したのは我々(そげきたい)の足止めのためだと考えられるが。

どちらにせよ明而海軍次第だな。
敵艦隊を捕捉して、それを撃滅できれば毒ガス兵器も海の底。黄海が文字通り黄色く染まるだけだ。
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