初恋と花蜜マゼンダ

麻田

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ep.1-8

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 考えに耽っていると、キスをしながら彼は、僕の下でベルトを外し、チャックを降ろした。ぶる、と勢いよく彼の分身が僕に擦り付いて、あまりの熱さに後ろがひくん、と反応してしまう。がさがさと購入してきたビニール袋から箱を取り出して、中から何かを取り出していた。けれど、彼の舌が容赦なく僕の好きな上顎と舌裏の付け根をくすぐるから気にする余裕がなかった。

「聖」

 下唇を舐められて名前を囁かれる。瞼をあげると、滲んだ青があって、僕を見つめていた。柔らかい声で名前を呼ばれる。

「ゆっくり、いれて」

 孔に彼の先端が宛がわれれる。ひや、と先ほどと感触が異なるが、彼の優しい眦に、小さくうなずいて、ゆっくりと腰を落とす。にゅ、ずにゅ、と自分の重さによって、彼が奥へと割り入ってくる。

「あ、あ…っ、さ、く、うぅ…んん…」

 僕を一つも見逃さないと言わんばかりに、彼は僕の着ていたセーターの裾を右手で捲り上げて、それを僕の左肩に添えていた。右乳首だけさらされていて、恥ずかしさに自分のペニスがふる、と小さく震えて、雫を零した。

「あぅ、んんっ…んん」

 こりゅ、としこりに彼の亀頭が当たってしまって、腰が跳ねる。にゅぽ、と抜けてしまいそうになるのを急いで腰を落として捕まえる。そうすると、またしこりを撫でられて、腰が落ち着かなくなってしまう。奥に入れるのが怖くて、腰が逃げてしまい、しこりと入口付近を行き来するくらいで、前後に振ることしか出来なかった。物足りないけど、彼と交われることの多幸感に身体からは力が抜けていく。上半身をそのまま彼に預けてしまうと、露わにされていた右乳首を摘ままれる。

「ひゃ、あ、んぅ、うっ」

 芯を持ったそこと転がされると、びり、と電流が流れて、頭を溶かして、腰に溜まる。くちゅ、くちゅ、と音を立てながら必死に腰を振る。自分でもわかる下手な技巧に情けなくて、足りなくて、涙が溢れる。それを慰めるように乳首を、よしよしと擦られると、全身が粟立つ。

「あぅ、あ、さくぅ、さくうっ、あん、う」
「ん、気持ちいいよ、聖…」

 ん、と彼が甘い喘ぎを耳元で漏らすからそれだけで達してしまいそうになって、内腿がびくびくと痙攣した。ぎゅう、とナカが強く彼を締め付けて、さらに彼が息をつめる。必死に彼に抱き着いて、甘い波がひと段落するのを待っていると、さらりと髪の毛を撫でられる。

「上手、聖、気持ちいいよ」

 上手だと頭を撫でながら、彼が褒めてくれた。顔をあげると、僕に微笑みかけている甘い顔立ちに、素直に身体が喜んでいる。

「う、そ…ぼく、ぜんぜん…」

 上手にできてない。熱に犯されている自分の身体が一番わかっている。
 それなのに、彼は首をかしげた。

「なぜ? すごく、気持ちいいが?」

 つ、と彼のこめかみから汗が滴って、また甘露な香りが漂う。

「ほ、んとに…? さく、きもちい…?」

 上目で覗き込むように彼の顔をうかがうと、また笑みを深めて、彼はうなずいた。

「ああ、すごくいい…、聖のナカ、とろとろなのに、すごくきつい…それに、」
「あっ…」

 首筋に顔を寄せられて、すん、と息が動く。それだけでくすぐったくて、声が漏れてしまう。さらに顔が熱くなるのを、彼がゆっくりと顔を動かして確かめるように見つめていた。

「聖、すっごくいい匂いがする…」

 おかしくなりそうだ。
 眉をつめて、彼がそうつぶやいた。勝手に身体がきゅん、と締め付けられて、自分で声があふれてしまう。口元を急いで覆うが、その手に彼の手が重ねられる。

「聖の声、すごくかわいい…もっと聞かせろ…」
「や…、はず、かし…っん…」

 その時、彼が腰を、小さくゆすった。硬いそれが、ナカをかき混ぜて、どろり、と溢れるような感覚がした。手に触れた彼の片手に両手でしがみついて、唇を寄せた。少しでも恥ずかしい声をこれ以上出さないように。
 けれど、彼が頭を撫でて褒めてくれるから、もっと彼によくなってほしくて、彼にすべてを見せてしまう座り方に変える。膝を開いて、膝ではなく床に足をつく。体重をかけて、ゆっくり、彼をもっと奥に向かえる。たくさんのひだが彼の登場に歓喜し、ぞわぞわとよどめきながらも、悦に染まる。


「ん、んう…っ、あ、さ、く…ぅ」

 深くに彼がやってきた悦びに、どれだけの快感が待っているかを昨夜、教え込まれた身体は期待に濡れそぼっていた。しこりよりもさらにさらに奥にある腹側を撫でられると、ぞわ、と全身が痺れる。口元にあった彼の指に吸い付き、甘く噛みながら、涙を零す。

「ん、ん、んん…っ、あ、う…っ」
「聖、無理するな…」

 足の付け根を彼が撫でて、ぴくん、と身体が跳ねると、思わず彼を最奥まで迎えてしまう。ぐぽ、とナカから耳の奥に音が響いて、何かが開く感覚があり、全身がびりびりと震えた。前から、とぴゅ、と勢いよく白濁が彼の胸元までかかってしまう。

「ご、ごめ、さく、ぼく、だけ…あ、でも、だ、めぇ…とまん、な…」

 は、は、と短く呼吸をして、涎が口の端から溢れる。快感がずっと、びりびりと全身を包んでいて、びくん、びくん、と痙攣が収まらない。力が入らなくて、彼に寄りかかるしかできない。でも、そうすると全身で彼の湿度も熱さも、匂いも感じてしまって、さらに快感が強まってしまう。

「いい、ん…、たくさん、気持ちよくなってくれ、聖…」

 頭を優しく撫でられて、耳朶に小さくリップ音が響く。ぞく、と背筋が震えて、さらにがくがくと腰が言うことを聞かない、恥ずかしい反応を見せてしまう。

「ゃ…ら、め…、いま、やさしく、しな、で…っ」
「んっ…、やだ…今まで出来なかった分、優しくさせろよ…」
「ら、めぇ…あ、あ…っんぅ」

 セーターの裾から手が入り込んできて、背骨を撫でながらあがってくる。それだけでも、身体が跳ねてしまう。垂れた汗をなぞって、指先が遊ぶようにしていると、手のひら全体で強く抱きしめられると、愛情いっぱいに注がれている感じがして、しあわせで、もっと欲しくなってしまう。耳の中に滑った舌を挿入しながら、彼がかすれた誰にも見せない声色で僕にだけ甘えるように囁くから、それにだって身体は正直に喜んで、震えてしまう。
 その間にも、ナカは最奥の部分に、くっぽりとはまった彼をぎゅうぎゅうと締め付けて、ずっと快感に悶えていた。
 彼が僕を抱きしめたまま、押し倒してくる。腕をとられて、ベッドにもたれるように促される。上半身を彼から、ベッドに頼る形になると、彼は身体を起して、僕の足を自身の肩にかけた。ぐう、と腹が自然と圧迫されるようになると、より彼のものを感じられてしまい、唇を噛んで泣いた。くぷ、とさらに奥に入り込む感覚があって、熱がむくむくと起き上がってくる。
 ゆす、とゆるやかに彼が腰をゆらめかすと、同時にナカから、くぽ、くぽ、と奥まった出入り口の開閉の音がして、快感と羞恥に脳が支配される。

「あ、それっ、ら、め…ああっ、や、きもち、すぎ、る、あっ、あ」

 彼の亀頭がぐり、と奥の壁を撫でると、触れられることのなかった場所はより敏感に彼の存在を僕の全身に伝え、深く深く、僕たちがつながっている現実をわからせてくる。

「ああ、気持ちいいな?」
「んっ、ん…、さ、くも、…? んぁ…」

 奥をなじませるように彼が少しずつゆらす。その度に、僕の爪先がゆらゆらと揺れて、今、全てを彼に預けているのだと思う。
 汗と垂らしながら、微笑む彼は、僕の質問に嬉しそうに笑みを深めてうなずいた。

「聖が気持ちいいと、俺はもっと気持ち良くなる」

 ありがとう、と長い腕が伸ばされて、僕の黒子を撫でて涙をさらった。胸の奥が、じわ、と温かく滲むと、彼が眉間に皺を寄せて、小さく喘いだ。

(僕が、気持ちいいと、さくも気持ちいいの…?)

 頬を包む手を取って、指を絡める。もう片方はシーツを握りしめて、腰を軽くゆすってみた。くぽ、と奥から彼が抜けて、僕の体重の勢いでまたそこを叩いて戻ってくる。ぞり、とナカをこすられると、びりびりと全身が悦くなってしまい、きゅう、とナカが締まる。そうすると彼が険しい顔をして、頬をさらに上気させた。

「ひじ、り…」
「さくぅ…っ」

 快感に耐えながら、彼がかすれた声で僕を必死に呼ぶから、じりじりとうなじが騒いで、下腹部がさらに反応してしまう。彼も腰の速度に合わせて、僕も気持ちがいいままに腰をゆする。そのうち、快感がいきすぎて辛くて、涙が止まらなくなってくる。

「らめっ、あ、めぇ…っ、あ、んぅ、とま、とまっ、て、も、あ、ああっ」

 止まってと懇願するのに、彼は最奥を叩き、しこりのある所までずるり、と抜いてから、勢いよくまた叩きに戻ってくる。これまでも、日ごろ、快感とは遠ざかった清い生活を送っていた僕とはかけ離れた時間に陶酔していたが、今の快感はあまりにも強すぎた。だから、止まってほしいのに、僕の腰も言うことを聞かずに、かくかく、と彼の肉棒をいいようにこすりつけていた。

「ぅ、聖、…っ聖…好きだ、好きだ…っ」
「さく、さく、んあっ、さ、くう…ぅあ、ああっ、んぅう…っ!」

 びくんっ!、と背を反らせて、足を突っ張らせて、僕は長い快感の渦に連れ去られた。ぴゅ、ぴゅ、と吐精が弱まっても、びりびりと僕の神経を焼く快感はずっとあって、か細い呼吸で酸素を取り込むことで手一杯だった。
 僕の意識がぼんやりと戻ってきたのは、彼の長い射精が終わったころで、汗で湿った身体に包まれて、愛していると何度も囁かれて、顔中にキスをされてからだった。




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