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第二章 信者獲得
097 武器
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姫和のマンションまで戻ってきた時には夜になっていた。それほど遅い時間ではなかったが、日はすっかり暮れている。
鬼と早く話をしたい気持ちもあったが、あずさの家で気を張っていた影響で集中力も鈍っていた。まだ着替えなければならないことも考えれば時間的に厳しい。
「鬼とは明日の朝、話をしてみます」
「はい。瑞貴さんの思うように行動してください」
「ありがとうございます。……疫病神を解放する日については、また連絡させていただきます」
「ええ、お願いしますね」
玄関で采姫に伝えて帰ることにした。マンションで着替えている間も姫和は顔を見せなかった。部屋のドアは開いているので籠っているわけではない。
今回の件は瑞貴の判断に委ねているということかもしれないが、瑞貴は姫和から無言の圧力を感じていた。
マンションから歩いて帰る途中、瑞貴は整理して考えることにした。
――あずささんの家に異変が起こり始めたのは、去年の夏頃って言ってたよな。……でも、俺が16歳になってスグには頼みに来なかった
今日、あずさの家に行ったことで猶予がないことは分かっていたが、それでも瑞貴が神媒師になってから2ヶ月待ったことになる。
――天照大御神が無意味なことをするとは思えない。きっと、俺が神媒師になってからの2ヶ月間にも意味があったんだ。……八雲さんと話す機会を作ってくれたりもした
2ヶ月という短い時間の中でも瑞貴は貴重な経験をしている。この時間がなければ、あずさや茜を納得させる話は出来ていなかったかもしれない。
多少でも瑞貴に経験を積ませておく必要があったのだろう。
そして、もっと根本的な疑問もある。
――疫病神が起こしている不幸に天照大御神が係わるなんて変な話だよな?
瑞貴の中で『神様が人間を個別に救うことはない』は不変の考えだったが、あずさの家族を救うために天照大御神と市寸島比売命が行動していることになる。
――あまり深く考えない方がいいのか?単なる『気まぐれ』ってこともあるし。……それに、あの麻雀に意味があるとも思えない
神様の思惑など瑞貴が推し量れるものではない。考えることを放棄したわけではないが、他に考えなければならないこともある。
――今は、あまり余計なことを考えずに、あずささんたちを助けることに集中しないとダメだ。……あと、固徹の想いも伝えてあげたい
瑞貴は一緒に歩いている大黒様を見た。柴犬の姿をしているシヴァ神は、すっかり家族のような存在になってしまっている。
最近は『無に還す』の発動もなく、穏やかに生活して瑞貴を助けてくれていた。
今の瑞貴は大黒様に『居なくなってほしくない』とさえ思っている。
大黒様に対する感情の変化が固徹の想いをあずさたちに伝えたいと願うことになっているのであれば、神媒師になってからの時間は無駄ではなかったと思えていた。
※※※※※※※※※※
「瑞貴殿、おはようございます」
鬼は歩道橋の上で待っていてくれた。瑞貴が話したいと考えていることはお見通しなのだ。
「おはようございます」
「ここでの立ち話は冷えてしまうので、歩きながらお話しましょう」
確かに歩道橋の上で立ち止まっていると冷えてしまうが、これは瑞貴を気にかけての言葉になる。瑞貴と大黒様は鬼と並んで歩き出した。
ただ、瑞貴は何から質問すればいいのか分からず悩んでしまう。
「……目に見えない不幸を鬼のせいにすることは昔からありました。疫病神は鬼から派生したものとする考えもありますが、それは違います」
「え!?」
「何事も鬼のせいにされていたのでは迷惑ですね」
「やっぱり迷惑なんだ。……あずささんの実家に『鬼が棲んでいる』ってことになってたのは知ってた?」
「ええ、風評被害でしかありません。私たちは善良な方には親切な存在なんですよ」
鬼は不敵な微笑みを瑞貴に向ける。
「いや、俺も神媒師になるまでは、鬼がこんなにも親切なことを知らなかった。……んっ?……それだと『善良じゃない方』には?」
「容赦は致しません」
その言葉に瑞貴はゾッとさせられた。根源的な恐怖を呼び起こすものであり、人間として知っておきたい感情だった。
「瑞貴殿は疫病神ともお話されたのではありませんか?」
「しましたよ。……鬼と同じでイメージが全然違ってました」
「邪神、悪神。としてのイメージでしょうか?」
「ですね。……もっと悪辣な物言いで嫌な感情にさせられる神様なのかと思ってました」
鬼は少しだけ黙ってしまった。瑞貴は鬼から何か話してくれるのを待つことにして歩き続ける。
「瑞貴殿は善い神と悪い神の違いは何だと思いますか?」
「えっ?……善い神と悪い神の違い?」
「はい。どうして疫病神が悪い神となってしまうのかについて、お考えになったことはありますか?」
「……それは、人間に病気や災いをもたらすんだから悪い神になるってことで、考えることなんてなかったけど」
「人間が基準ですか?……神の善悪を決めるのも人間基準になるのですか?」
「驕ってるって言いたいんですか?……人間に都合が悪い神様だから邪神になるのは人間の驕り?」
「さぁ、それは貴方自身でお考え下さい」
鬼が神を語る不思議な状況だった。それでも物事を人間の価値観で決めてしまうことに瑞貴が疑問を持つようにしている。
瑞貴は鬼や疫病神の存在を単なる悪だとは考えなくなっていた。それは人間としての判断基準だけで物事を見ていないことになる。
「人間に過度な期待はしないでください。そして、人間に失望もしないでください。……貴方が闇に囚われたとしても何処かに光はあるはずです」
「今回、俺の闇になるものがあるとすれば、それは何なんでしょうか?」
「……自称霊能者、向井義昭」
やはり鬼は全てを承知していたようだ。この言葉を聞いた瑞貴は疫病神の解放日を2月3日に決めた。
鬼が霊能者の名前まで教えたとなれば、瑞貴はこの男を避けて通ることは出来ない。そして、この自称霊能者を瑞貴にとっての闇だと表現していた。
「また、協力してもらえますか?」
「何なりとお申し付けください。瑞貴殿には借りもありますので」
「いや、今回はあずささんに夕食をご馳走になったお礼です。……お互い、ご馳走になってるだけじゃ心苦しいでしょ?」
「フフッ、承知しました。……それで、どんな協力をお望みなのですか?」
瑞貴が立ち止まると鬼も同じように止まって少し振り返る。
「すでに一つもらってしまいましたけど、俺に武器をください」
鬼と早く話をしたい気持ちもあったが、あずさの家で気を張っていた影響で集中力も鈍っていた。まだ着替えなければならないことも考えれば時間的に厳しい。
「鬼とは明日の朝、話をしてみます」
「はい。瑞貴さんの思うように行動してください」
「ありがとうございます。……疫病神を解放する日については、また連絡させていただきます」
「ええ、お願いしますね」
玄関で采姫に伝えて帰ることにした。マンションで着替えている間も姫和は顔を見せなかった。部屋のドアは開いているので籠っているわけではない。
今回の件は瑞貴の判断に委ねているということかもしれないが、瑞貴は姫和から無言の圧力を感じていた。
マンションから歩いて帰る途中、瑞貴は整理して考えることにした。
――あずささんの家に異変が起こり始めたのは、去年の夏頃って言ってたよな。……でも、俺が16歳になってスグには頼みに来なかった
今日、あずさの家に行ったことで猶予がないことは分かっていたが、それでも瑞貴が神媒師になってから2ヶ月待ったことになる。
――天照大御神が無意味なことをするとは思えない。きっと、俺が神媒師になってからの2ヶ月間にも意味があったんだ。……八雲さんと話す機会を作ってくれたりもした
2ヶ月という短い時間の中でも瑞貴は貴重な経験をしている。この時間がなければ、あずさや茜を納得させる話は出来ていなかったかもしれない。
多少でも瑞貴に経験を積ませておく必要があったのだろう。
そして、もっと根本的な疑問もある。
――疫病神が起こしている不幸に天照大御神が係わるなんて変な話だよな?
瑞貴の中で『神様が人間を個別に救うことはない』は不変の考えだったが、あずさの家族を救うために天照大御神と市寸島比売命が行動していることになる。
――あまり深く考えない方がいいのか?単なる『気まぐれ』ってこともあるし。……それに、あの麻雀に意味があるとも思えない
神様の思惑など瑞貴が推し量れるものではない。考えることを放棄したわけではないが、他に考えなければならないこともある。
――今は、あまり余計なことを考えずに、あずささんたちを助けることに集中しないとダメだ。……あと、固徹の想いも伝えてあげたい
瑞貴は一緒に歩いている大黒様を見た。柴犬の姿をしているシヴァ神は、すっかり家族のような存在になってしまっている。
最近は『無に還す』の発動もなく、穏やかに生活して瑞貴を助けてくれていた。
今の瑞貴は大黒様に『居なくなってほしくない』とさえ思っている。
大黒様に対する感情の変化が固徹の想いをあずさたちに伝えたいと願うことになっているのであれば、神媒師になってからの時間は無駄ではなかったと思えていた。
※※※※※※※※※※
「瑞貴殿、おはようございます」
鬼は歩道橋の上で待っていてくれた。瑞貴が話したいと考えていることはお見通しなのだ。
「おはようございます」
「ここでの立ち話は冷えてしまうので、歩きながらお話しましょう」
確かに歩道橋の上で立ち止まっていると冷えてしまうが、これは瑞貴を気にかけての言葉になる。瑞貴と大黒様は鬼と並んで歩き出した。
ただ、瑞貴は何から質問すればいいのか分からず悩んでしまう。
「……目に見えない不幸を鬼のせいにすることは昔からありました。疫病神は鬼から派生したものとする考えもありますが、それは違います」
「え!?」
「何事も鬼のせいにされていたのでは迷惑ですね」
「やっぱり迷惑なんだ。……あずささんの実家に『鬼が棲んでいる』ってことになってたのは知ってた?」
「ええ、風評被害でしかありません。私たちは善良な方には親切な存在なんですよ」
鬼は不敵な微笑みを瑞貴に向ける。
「いや、俺も神媒師になるまでは、鬼がこんなにも親切なことを知らなかった。……んっ?……それだと『善良じゃない方』には?」
「容赦は致しません」
その言葉に瑞貴はゾッとさせられた。根源的な恐怖を呼び起こすものであり、人間として知っておきたい感情だった。
「瑞貴殿は疫病神ともお話されたのではありませんか?」
「しましたよ。……鬼と同じでイメージが全然違ってました」
「邪神、悪神。としてのイメージでしょうか?」
「ですね。……もっと悪辣な物言いで嫌な感情にさせられる神様なのかと思ってました」
鬼は少しだけ黙ってしまった。瑞貴は鬼から何か話してくれるのを待つことにして歩き続ける。
「瑞貴殿は善い神と悪い神の違いは何だと思いますか?」
「えっ?……善い神と悪い神の違い?」
「はい。どうして疫病神が悪い神となってしまうのかについて、お考えになったことはありますか?」
「……それは、人間に病気や災いをもたらすんだから悪い神になるってことで、考えることなんてなかったけど」
「人間が基準ですか?……神の善悪を決めるのも人間基準になるのですか?」
「驕ってるって言いたいんですか?……人間に都合が悪い神様だから邪神になるのは人間の驕り?」
「さぁ、それは貴方自身でお考え下さい」
鬼が神を語る不思議な状況だった。それでも物事を人間の価値観で決めてしまうことに瑞貴が疑問を持つようにしている。
瑞貴は鬼や疫病神の存在を単なる悪だとは考えなくなっていた。それは人間としての判断基準だけで物事を見ていないことになる。
「人間に過度な期待はしないでください。そして、人間に失望もしないでください。……貴方が闇に囚われたとしても何処かに光はあるはずです」
「今回、俺の闇になるものがあるとすれば、それは何なんでしょうか?」
「……自称霊能者、向井義昭」
やはり鬼は全てを承知していたようだ。この言葉を聞いた瑞貴は疫病神の解放日を2月3日に決めた。
鬼が霊能者の名前まで教えたとなれば、瑞貴はこの男を避けて通ることは出来ない。そして、この自称霊能者を瑞貴にとっての闇だと表現していた。
「また、協力してもらえますか?」
「何なりとお申し付けください。瑞貴殿には借りもありますので」
「いや、今回はあずささんに夕食をご馳走になったお礼です。……お互い、ご馳走になってるだけじゃ心苦しいでしょ?」
「フフッ、承知しました。……それで、どんな協力をお望みなのですか?」
瑞貴が立ち止まると鬼も同じように止まって少し振り返る。
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