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第一章 初めての務め
018 浄玻璃鏡
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気になることではあったが今の瑞貴には優先して考えるべきことがある。
――まずは閻魔大王からのメールの件だな……
ポケットからスマホを取り出して、メールを読み返してみた。内容の確認はしていたが、ただ読んだだけに近く詳細を理解しているわけではない。
『滝川瑞貴殿
明日、午前7時に熱田神宮の本宮前まで来られたし
先んじて浄玻璃鏡の太刀に触れることを忘れぬように
太刀の在処は父が知る』
熱田神宮の本宮前は知っているので場所の問題はない。
問題になるのは『浄玻璃鏡の太刀』だった。メールではルビもないので仕方ないのだが読み方が分からなかった。
閻魔大王についての予備知識がなさ過ぎて単純に『大王』だとしか知らず、地獄の王くらいにしか考えていなかった。
秋月のマンションから少し離れたところで立ち止まりスマホで『閻魔大王』について簡単に調べてみた。
――元々、ヒンドゥー教で冥界の神様か。サンスクリット語のヤマが語源で、仏教にも迎合している神。……って、えっ!?
そこで瑞貴は大黒様を見る。
「閻魔様とシヴァ神って、元は近い存在だったんですか?」
仏教で同一視されているのが地蔵菩薩であることから、あまり位は高くないのかもしれない。最高神であるシヴァの方が神格は当然上だろうと考えてしまう。
「大黒様には逆らえない、とかもあるのかな?」
情報を読み進めると、浄玻璃鏡の単語も目に入ってきた。
生前の行為を記録してある魔鏡で、亡者の審判の時に閻魔王が真実を見抜くために使う物らしいが『太刀』として記載はない。
「『浄玻璃鏡の太刀』って何か知ってますか?」
大黒様からの返事はない。
シヴァ神との関連性を知ったことで急に閻魔様を身近に感じてしまう不思議さ。それもただの誤解でしかないのかもしれない。
「もちろん、大黒様も明日、一緒に行ってくれるんですよね?」
当初は一人で行くことも考えていた瑞貴だが、新たな情報が加わったことで大黒様の同行を望んでいた。
瑞貴の父は、前任者としてアドバイザー的な役割でしかしてくれない。基本的には一部知識の継承で止めて必要以上に瑞貴の行動に介入することは許されていないらしい。
そんな制限を設けずに協力してくれた方が効率的だと考えていたのだが、父からは『やっていけば色々と分かる』と言われてしまった。
「うーん、のんびりやるか」
土曜日ではあるが少しだけ仕事が残っているらしく両親は揃って会社に行ってしまった。遅くはならないが、まだ午前中では戻っているはずもない。
瑞貴は思いっきり伸びをして、わざらしく声に出して気持ちを切り替えることにした。
※※※※※※※※※※
視察の残りは帰り道だけとなり、余計な寄り道はなかった。
のんびり宣言をした瑞貴には拍子抜けと感じることもあったが大黒様の体力も心配ではあったので休むことを優先させた。
閻魔様についての情報も収集したいが思うように進まない作業になる。
宗教的な背景で捉えるか、歴史的な背景で捉えるか。同じ答えに至らないことばかりで、そこに神格が加わってしまうと複雑な解釈になってしまう。
瑞貴としては、視点を変えながら画一的にまとめたいのだが求める答えには届かない。出来る限り第三者的な視点で神様のことを考察したいとは考えているが、学問としての宗教が絡むと難しい。
今回は『浄玻璃鏡』の『太刀』に触れるよう指示を受けている。
『浄玻璃鏡』については記録だけでも存在が示されている。閻魔大王が亡者の善悪を判断するために使った鏡であれば、かなりの稀少アイテムのはずだった。
――それにしても『浄玻璃鏡』とかのアイテム名は誰が考えてるんだろう?
現存している遺物でもなく名前だけの存在になるはずだが、明確に記載されていることを瑞貴は毎回不思議に感じていた。
――まずは閻魔大王からのメールの件だな……
ポケットからスマホを取り出して、メールを読み返してみた。内容の確認はしていたが、ただ読んだだけに近く詳細を理解しているわけではない。
『滝川瑞貴殿
明日、午前7時に熱田神宮の本宮前まで来られたし
先んじて浄玻璃鏡の太刀に触れることを忘れぬように
太刀の在処は父が知る』
熱田神宮の本宮前は知っているので場所の問題はない。
問題になるのは『浄玻璃鏡の太刀』だった。メールではルビもないので仕方ないのだが読み方が分からなかった。
閻魔大王についての予備知識がなさ過ぎて単純に『大王』だとしか知らず、地獄の王くらいにしか考えていなかった。
秋月のマンションから少し離れたところで立ち止まりスマホで『閻魔大王』について簡単に調べてみた。
――元々、ヒンドゥー教で冥界の神様か。サンスクリット語のヤマが語源で、仏教にも迎合している神。……って、えっ!?
そこで瑞貴は大黒様を見る。
「閻魔様とシヴァ神って、元は近い存在だったんですか?」
仏教で同一視されているのが地蔵菩薩であることから、あまり位は高くないのかもしれない。最高神であるシヴァの方が神格は当然上だろうと考えてしまう。
「大黒様には逆らえない、とかもあるのかな?」
情報を読み進めると、浄玻璃鏡の単語も目に入ってきた。
生前の行為を記録してある魔鏡で、亡者の審判の時に閻魔王が真実を見抜くために使う物らしいが『太刀』として記載はない。
「『浄玻璃鏡の太刀』って何か知ってますか?」
大黒様からの返事はない。
シヴァ神との関連性を知ったことで急に閻魔様を身近に感じてしまう不思議さ。それもただの誤解でしかないのかもしれない。
「もちろん、大黒様も明日、一緒に行ってくれるんですよね?」
当初は一人で行くことも考えていた瑞貴だが、新たな情報が加わったことで大黒様の同行を望んでいた。
瑞貴の父は、前任者としてアドバイザー的な役割でしかしてくれない。基本的には一部知識の継承で止めて必要以上に瑞貴の行動に介入することは許されていないらしい。
そんな制限を設けずに協力してくれた方が効率的だと考えていたのだが、父からは『やっていけば色々と分かる』と言われてしまった。
「うーん、のんびりやるか」
土曜日ではあるが少しだけ仕事が残っているらしく両親は揃って会社に行ってしまった。遅くはならないが、まだ午前中では戻っているはずもない。
瑞貴は思いっきり伸びをして、わざらしく声に出して気持ちを切り替えることにした。
※※※※※※※※※※
視察の残りは帰り道だけとなり、余計な寄り道はなかった。
のんびり宣言をした瑞貴には拍子抜けと感じることもあったが大黒様の体力も心配ではあったので休むことを優先させた。
閻魔様についての情報も収集したいが思うように進まない作業になる。
宗教的な背景で捉えるか、歴史的な背景で捉えるか。同じ答えに至らないことばかりで、そこに神格が加わってしまうと複雑な解釈になってしまう。
瑞貴としては、視点を変えながら画一的にまとめたいのだが求める答えには届かない。出来る限り第三者的な視点で神様のことを考察したいとは考えているが、学問としての宗教が絡むと難しい。
今回は『浄玻璃鏡』の『太刀』に触れるよう指示を受けている。
『浄玻璃鏡』については記録だけでも存在が示されている。閻魔大王が亡者の善悪を判断するために使った鏡であれば、かなりの稀少アイテムのはずだった。
――それにしても『浄玻璃鏡』とかのアイテム名は誰が考えてるんだろう?
現存している遺物でもなく名前だけの存在になるはずだが、明確に記載されていることを瑞貴は毎回不思議に感じていた。
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