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2.見たいの。二人がセックスするところを
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過去の出来事に気まずい思いを抱きつつ、僕と蓮は成見さんに笑顔を作る。
「僕達は特に気にしないから。でも、テーマとしてはやっぱり難しいかもしれないね……」
「うん、ありがとう」
成見さんは少し表情を戻して頷いた。
「まあ、今日は遅いから続きはまた明日にしようぜ」
蓮が話を切り上げるように荷物をまとめにかかる。
「そうしようか、成見さんもそれでいい?」
「うん、何か他にも考えてみるね」
こうしてその日の会議は終了になった。
翌日。
放課後、僕達は再び教室の片隅で会議を始めた。
しかし、成見さんの表情が冴えず言葉も少ない。
「どうしたの? 成見さん」
「え? あ、ごめんなさい。ちょっと考え事してた」
「何か困ってるのか、俺達でよければ話を聞くけど」
成見さんは僕達を交互に見てから、言葉を選びながら話し始める。
「会田君と矢崎君って、仲がいいよね」
「ん? まあそうだね、小学校からずっと一緒だし」
「親友なの?」
「改めてそう言われると気恥ずかしくなるが、俺はそうだと思ってる」
「うん、僕も」
僕達の答えに、成見さんはなぜか少し頬を上気させて言葉を続けた。
「私ね、BL作品を読むのも好きなんだけど……実は書くほうもやってるの」
「え!? 成見さんが?」
「ベータシティっていうネットの小説投稿サイトがあってね、そこでBL作品を発表してるんだ」
「へー、それはスゴいね」
「まだそんなには作品は多くないんだけどね。でも、昨日の夜、私の作品に『リアリティが足りてない』って反応があって、それでちょっと落ち込んじゃった」
「ええっ!? 厳しいね、リアリティってどんなところが?」
「うん、それが……その、エッチなシーンなの」
エッチなシーン……って、当然男子同士のことなんだろうな。
「それは自分でも自覚はしてるの。本当はもっとそういうものを見て研究してみたいんだけど、親がアクセス制限をスマホに設定しているからあまり見れなくて……想像と他の人の作品を参考にしたりはしてるんだけど」
「うーん、そういうことなら協力してあげたいけど、ウチもスマホとパソコンには制限かけられてるからなぁ」
その場に沈黙が続いた後、意を決したように成見さんが口を開く。
「それでね、二人にお願いがあるの。お願い、私に二人がするところを見せてほしいの!」
「…………」
成見さんの唐突なお願いに、僕達は沈黙した。
する?
なにを??
僕と蓮が???
いや、それってもしかして……。
「見たいの、会田君と矢崎がセックスするところを」
あ、やっぱり。
「無理無理無理無理無理無理無理無理ィィ」
僕と蓮は同時に声を上げていた。
「いや、さすがにそれは……」
「うん、いくらなんでも」
しかし成見さんは引かない。
「私、将来はプロの作家になりたいの。だからもっともっと上手く書けるようになりたい。そのためには体験できることは全て体験してみたいの」
「気持ちはわかるけど、なぁ……」
困惑する僕と蓮に、なおも成見さんが食い下がる。
「もちろん、ただ見せて欲しいとは言わないわ。もし見せてくれたなら……その後、私とセックスしてもいいよ」
「セック!?」
僕と蓮は顔を見合わせた。
僕と蓮はまだそういう体験をしていない。
……今のところ、当面その予定もない。
正直、成見さんの申し出は魅力的だ。
しかしそのためには、蓮とセックスしなければならない。
……何この二択。
「成見さん、ちょっと二人だけで話をさせてもらっていいかな」
「うん、わかったわ」
成見さんは席を立つと教室から出て行った。
僕と蓮は顔を突き合わせて声を落とす。
「陸斗、どう思う?」
「いや、すごく惹かれる部分はあるんだけど、その前提が……」
「そうだな、俺もそこは引っかかる部分ではある。だがそれでも、これを逃したときに卒業までに次のチャンスが訪れる保証はない」
「たしかに。……それに、他の人だったらヤダけど、蓮とは中学の時にあんなことしたこともあるし、なんとかやれそうな気もする」
「ああ、俺もそうだ。陸斗じゃなかったらさすがに断る」
僕達の結論は「何があってもこれからも友達でいよう、そして一緒に大人になろう」で固まった。
その時、ちょうど成見さんが教室に戻ってきた。
「答えは決まった?」
僕達は妙にすっきりとした表情で答える。
「成見さんの作品が良くなるなら、喜んで」
「僕達は特に気にしないから。でも、テーマとしてはやっぱり難しいかもしれないね……」
「うん、ありがとう」
成見さんは少し表情を戻して頷いた。
「まあ、今日は遅いから続きはまた明日にしようぜ」
蓮が話を切り上げるように荷物をまとめにかかる。
「そうしようか、成見さんもそれでいい?」
「うん、何か他にも考えてみるね」
こうしてその日の会議は終了になった。
翌日。
放課後、僕達は再び教室の片隅で会議を始めた。
しかし、成見さんの表情が冴えず言葉も少ない。
「どうしたの? 成見さん」
「え? あ、ごめんなさい。ちょっと考え事してた」
「何か困ってるのか、俺達でよければ話を聞くけど」
成見さんは僕達を交互に見てから、言葉を選びながら話し始める。
「会田君と矢崎君って、仲がいいよね」
「ん? まあそうだね、小学校からずっと一緒だし」
「親友なの?」
「改めてそう言われると気恥ずかしくなるが、俺はそうだと思ってる」
「うん、僕も」
僕達の答えに、成見さんはなぜか少し頬を上気させて言葉を続けた。
「私ね、BL作品を読むのも好きなんだけど……実は書くほうもやってるの」
「え!? 成見さんが?」
「ベータシティっていうネットの小説投稿サイトがあってね、そこでBL作品を発表してるんだ」
「へー、それはスゴいね」
「まだそんなには作品は多くないんだけどね。でも、昨日の夜、私の作品に『リアリティが足りてない』って反応があって、それでちょっと落ち込んじゃった」
「ええっ!? 厳しいね、リアリティってどんなところが?」
「うん、それが……その、エッチなシーンなの」
エッチなシーン……って、当然男子同士のことなんだろうな。
「それは自分でも自覚はしてるの。本当はもっとそういうものを見て研究してみたいんだけど、親がアクセス制限をスマホに設定しているからあまり見れなくて……想像と他の人の作品を参考にしたりはしてるんだけど」
「うーん、そういうことなら協力してあげたいけど、ウチもスマホとパソコンには制限かけられてるからなぁ」
その場に沈黙が続いた後、意を決したように成見さんが口を開く。
「それでね、二人にお願いがあるの。お願い、私に二人がするところを見せてほしいの!」
「…………」
成見さんの唐突なお願いに、僕達は沈黙した。
する?
なにを??
僕と蓮が???
いや、それってもしかして……。
「見たいの、会田君と矢崎がセックスするところを」
あ、やっぱり。
「無理無理無理無理無理無理無理無理ィィ」
僕と蓮は同時に声を上げていた。
「いや、さすがにそれは……」
「うん、いくらなんでも」
しかし成見さんは引かない。
「私、将来はプロの作家になりたいの。だからもっともっと上手く書けるようになりたい。そのためには体験できることは全て体験してみたいの」
「気持ちはわかるけど、なぁ……」
困惑する僕と蓮に、なおも成見さんが食い下がる。
「もちろん、ただ見せて欲しいとは言わないわ。もし見せてくれたなら……その後、私とセックスしてもいいよ」
「セック!?」
僕と蓮は顔を見合わせた。
僕と蓮はまだそういう体験をしていない。
……今のところ、当面その予定もない。
正直、成見さんの申し出は魅力的だ。
しかしそのためには、蓮とセックスしなければならない。
……何この二択。
「成見さん、ちょっと二人だけで話をさせてもらっていいかな」
「うん、わかったわ」
成見さんは席を立つと教室から出て行った。
僕と蓮は顔を突き合わせて声を落とす。
「陸斗、どう思う?」
「いや、すごく惹かれる部分はあるんだけど、その前提が……」
「そうだな、俺もそこは引っかかる部分ではある。だがそれでも、これを逃したときに卒業までに次のチャンスが訪れる保証はない」
「たしかに。……それに、他の人だったらヤダけど、蓮とは中学の時にあんなことしたこともあるし、なんとかやれそうな気もする」
「ああ、俺もそうだ。陸斗じゃなかったらさすがに断る」
僕達の結論は「何があってもこれからも友達でいよう、そして一緒に大人になろう」で固まった。
その時、ちょうど成見さんが教室に戻ってきた。
「答えは決まった?」
僕達は妙にすっきりとした表情で答える。
「成見さんの作品が良くなるなら、喜んで」
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