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#3 因習の定め

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……視界がぼんやりと錆色に覆われている。

やがて、それが寄合処の煤けた天井だと気がついた。
そこに覗きこむようなタケシさんの顔が現れる。

「お、気がついたか? 先生」
「すみません、少し飲みすぎたようです……」

体を起こそうとして、腕が動かないことに気がついた。

あれ? おかしいな……。

仕方なく足を使って立ち上がろうとした時、両方の足首からすねにかけて太い紐のようなものが巻かれているのが目に入った。
動かそうとしても、膝を曲げる以外の動作が全く出来ない。
さらに腕は体の下に後ろ手にされ、手首の部分にも紐が幾重にも巻かれた感触があった。
僕は両手両足を縛られた状態で畳の上に転がっていた。

「ちょっ、いったい何をしてるんですか!? 悪い冗談はやめてくださいっ」

僕の訴えには答えずに、タケシさんが目で合図をするとユウダイさんとアツシさんが僕を両脇から抱えて体を起こさせ、正座をするように畳の上に座らせる。

「タケシさん! いいかげんにしてくださいっ。早くこれを解いてくださいよ」

タケシさんは口の前で指を立てる仕草をした後、僕の目の前に猪口を突き出した。

「先生、騒がないでもらえるか? 解いてもいいが、その前にこれを飲んでくれ」
「な、なんですか、それは?」
「誓って危ないものじゃないぜ。飲んでも死んだりはしない。ただ、これを飲まないとこれから先の話ができないんだ」

僕は目の前の猪口を見た。
中に入っているのは透明な液体で、水かお酒のように見える。
もう一度タケシさんを見ると、有無を言わせない強い意志が感じられた。

「……わかりました。飲みますから、キチンと説明してください」

僕は諦めて口元に寄せられた猪口に口を付け、恐る恐る飲みこむ。
味はただのお酒に思えた。
タケシさんは僕が液体を飲んだのを確認すると、僕の前に胡座をかいて座る。

「この村はな、こんな山奥にあるから広い田んぼは作れないし、それこそ江戸の昔から木材と畑で細々とやってきたんだ。今では過疎で人……特に若いヤツらがどんどんいなくなっているが、その昔は貧しくても子沢山ってことが多くて、そこそこ村にも人はいたらしいんだ」

唐突なタケシさんの話に、僕は頭がついていかずに困惑した。

「まあ、機械がない時代には子供も大事な労働力だったってこともあっただろうけど、そんな子供達が育って大きくなっていくと、どんな事が必要になってくると思う?」

「……結婚、とかですか?」

「普通だったらそうなるんだろう。だが、昔はどの家も貧しいから嫁をとったり出来るのは長男、よくて次男までとかそんな状況だったらしい。そうなると、それより下のあぶれた男達をどうにかしなくてはならない。嫁も持てずにただこき使ってばかりでは不満も溜まるしな」

……いったいタケシさんはなんの話をしているんだろう。

「それで、いつの頃からかあぶれた男同士をにして、そういった不満を丸め込もうとするようになったんだ。このあたりじゃそれを若衆嫁わかしゅよめなんて呼んでたらしい。年長の独り者に年若い者を『嫁』としてつけ、飢えた夫はを抱いて欲求を満足させる。抱かれる嫁も夫に与えられる快楽で満足し、村の安寧と労働力が保たれるってわけだ」

そんなバカなことが……。でも、おかしい……さっきからうまく考えられない。

タケシさんの目が妖しい光を帯びた。

「おや、先生。ずいぶんと切なそうな顔してるが、そろそろ効いてきたかな?」
「さっきの、お酒に……なにを」
「あれはな、祖父じいさんに教えてもらったキノコさ。いわゆる毒キノコというもんだが心配はしなくていい。普通に食ったら死んじまうが、粉にして耳掻き三分の一ほどのかけらを体に入れると、体の奥からジンジンと来るような昂りが沸いてくるそうだ。昔から村の男女が跡継ぎが欲しいとき飲んでいたらしいぜ」
「そ、そんな……あ、熱い」

再びユウダイさんとアツシさんが僕を両脇から抱え、畳に横たえさせた。
タケシさんが足にかけられた紐を解く。
僕の足元に移動してきたユウダイさんとアツシさんは、自由になった両足を抱えて大きく両側に開かせた。

「や、やめてください」

浴衣の前がはだけて、僕の陰部が露わになった。
四人の男の視線がその部分に執拗に注がれる。

「ほら、言った通りだろ? この真っ白い太腿、女みたいだ」
「ああ、余計な毛もないし、尻のところもツルツルだな」
「陰毛はどうする。ない方がそそらないか?」
「お願い、です。そんな風にみないで、ください……」

僕の懇願を男達が笑った。

「そんなこと言ってるがね、先生、自分のアソコ見てみなよ」
「ああ、そんな」

ひどい羞恥に心では拒絶しているはずなのに、僕の股間の肉茎は徐々に硬くなり熱を帯びていた。

「見られて感じるとは、先生も結構な淫乱だな」
「違うんです、これは、これは……」

タケシさんの手のひらが僕の陰嚢に触れ、柔らかな手つきでまさぐる。

「あ、そこはっ」
「別に恥ずかしがらなくていいんだぜ。嫁はいやらしいくらいのほうが燃えるからな」
「嫁って、いったい?……」
「さっき話した通りだよ。先生……いや、もう他人行儀だから名前で呼ぶか。由貴也、お前はこれから俺達の嫁になってもらう。寂れたこの村では、昔とは逆の意味で男があぶれているのさ。嫁を娶れたのはうまくやれたヤツだけだ。年寄りの親がいて、今さらよそに出て行くことも出来ない俺達には、満たしてくれる若衆嫁わかしゅよめが必要なんだ」
「そんなっ、イヤですっ、許してください!」

逃れようともがくが、足が痺れたようになってうまく動かない。

「大丈夫だ、じきによくなる。夫なしでは生きていけなくなるくらいにな。まずは俺達のものになる証として剃毛する」

タケシさんは部屋の隅にあった小箱を持ち出すと、ひげ剃りを手に取った。
僕の硬くなった肉茎を押さえて、陰毛の部分にジェル状のものを垂らす。

「や、やめてください!」
「動くなよ。危ないだろう?」

ひげ剃りが恥丘に当てられ無造作に引かれる。
元々あまり毛深くない僕の股間はあっという間に無毛にされた。

「これでいいだろう」

タケシさんがジェルを拭き取りながら満足気な表情を浮かべる。
そして、無情な宣告が下された。

「始めるぞ。由貴也、これからお前を抱く」

タケシさんが小ぶりのボトルを取り出し、開けた口からトロリとした液体を指に垂らす。

「順番はもうクジで決めてある。最初は俺だ。心配するな、ゆっくり開いてやる」

僕のお尻のすぼまった所に、ぬるりとした指先が触れた。

「ひっ、あ、ああっ」

狭い肉壁を探るようにゆっくりと指先が侵入してくる。

「由貴也、今日が俺達の初夜だ」

タケシさんが浴衣を解いた。

その真ん中には、黒々とした肉茎が天を突くように屹立していた。
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