【R18】銅像で妄想をドーゾ

#2 女将を呼べ

男は日頃の激務で疲れた身体を癒すべく、山あいの小さな温泉宿を訪れていた。

そこは年季の入った建物と垢抜けない内装の安宿だったが、泉質のいい温泉と地のものを活かした料理が楽しめると評判の宿だった。

ひとしきり温泉の湯を堪能した後、男は汗のかいた全身を石鹸の泡で包み込んだ。
それを一気に流し落とそうとシャワーの蛇口ハンドルに手を伸ばす。
だが、ハンドルは何の手応えもなく、カラカラと回るのみだった。
男が宙を仰ぎ見る。

悲しげな男の声が浴室内にこだました。


【解説】
この像は世界遺産でもある三保の松原（静岡県静岡市）の、駐車場から松林へ入る入口付近にあった。
過去形なのは、2010年頃には確かにあったのだが、2019年頃の現地の画像を見ると該当する場所にこの像は見当たらないからだ。
情報を探してみると、どうやら場所を移されたらしい。
作品名は失念していたが、他の画像で確認すると「白龍」という文字が読める。
この像は、天女に羽衣を返した漁師が空に帰る天女を見送っている場面なのだが……だめだった。一目見た瞬間にもうこの状況しか思い浮かばなかった。
いや、だってさ、なんでその手つきなの？
しかも呆然とした表情に加えて裸だし。
もう腰の羽衣の一部もタオルにしか見えないわ。

白龍を見かけた方は女将さんに伝えてあげてほしい。
きっと今もお湯が出なくて困っているはずだから……。