お飾り王妃は愛されたい

神崎葵

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二十七話

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「オブライエン伯爵家のご令嬢を招待したいのだけれど、任せていいかしら」

 オーギュストとの対談が終わり部屋に戻った私は、侍女がお茶の準備をするのを眺めながら、そう尋ねた。
 一刻も早くなんとかするためには――オーギュストとレイチェルの関係を早める必要がある。彼らが愛し合う一年後まで悠長に待っていられない。
 さっさと愛し合ってもらって、お役ごめんにならないと、私に逃げ道はなくなる。

「かしこまりました。ご希望の日取りはございますか?」
「そうね。早ければ早いほうがいいわ」

 レイチェルと城に度々呼んで、どうにかオーギュストと親密になってもらわないと。
 問題は、オーギュストをどうやって執務室から引っ張り出すか、だ。

「煙でも炊いてみようかしら……」

 ねずみを燻りだすのは煙が一番らしい。

「どうかされましたか?」
「いえ、なんでもないわ。せっかく招くのだから、どう歓迎するかを考えていただけよ」

 とはいえ、オーギュストを焼死させようとしたと勘違いされたら困るので、この案はさすがに使えない。
 まずはレイチェルと親密になり、頻繁に城に呼んでもおかしくない関係を築くのが先決か。そのあとで、オーギュストを引っ張り出す方法を考えるとしよう。

「レイチェル嬢を気に入られたんですか?」

 部屋の隅に控えていたライナスが、手紙の用意をしてくるからと侍女が部屋を出たのを見計らって尋ねてきた。
 なんとも微妙そうな顔をしているのは、この間私とレイチェルが顔を合わせたときにそこまで親密そうではなかったから、かもしれない。

「ええ、そうね。かわいらしい人だと思ったわ。……そうだわ。もしよければ、彼女のことを教えてくれないかしら。どんな些細なこともでいいの。仲良くなるにはどうすればいいかしら」
「俺もそんな詳しいわけではないですが……そうですね……花とか甘いものとか……まあ、そこらの令嬢が好きそうなものは好きだと思いますよ」
「なら庭園でお茶をするのがよさそうね」

 もう少し踏み込んだところまで知りたいが、ライナスはレイチェルとほとんど話したことがないと言っていたから、これ以上は何も知らない可能性が高い。
 根掘り葉掘り聞いて何か裏があるのではと怪しまれるかもしれないから、あとは本人と話して探っていくとしよう。
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