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二十六話
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朝食を終え、食器が片付けられる。そして同時に、部屋のすみに控えていた侍女や給仕人も部屋から出て行った。
残ったのは私とオーギュストの二人。完全に人払いをしたということは、ほかの誰にも聞かれたくない話をする、ということだろう。
「それで……本日はどうされましたか?」
嫌な話はさっさと済ませるに限る。談笑すら挟まず話を切り出した私に、オーギュストの視線がわずかだが揺れた。
「先日の……結婚についてだが」
予想していたとおりの話に、ため息がこぼれそうになる。
言い渋っているということは、まず間違いなく私には悪い話だろう。
「継続することに決めた」
「……どうしてなのかをお聞きしてもよろしいですか?」
「今さら結婚するのをやめたとなれば、理由を追求されるだろう。元より、この結婚は政略でしかない。君もそれでいいと頷いただろう」
政略であることは理解しているとたしかにうなずいた。
だけど私はオーギュストが描いていた王妃像には合致しないと、先日話してわかったはずだ。それでも継続すると決めたということは――新しい王妃を探すのが面倒になった、ということか。
「だが、子を産めるとなれば話は変わる。そのため、ひとつだけ条件を加えさせてもらう」
「……なんでしょうか」
「他の男と情を交わすことがないようにしてもらいたい。勝手に子を宿されてはかなわんからな」
「なっ……」
言葉を失い目を見開いた私に何を思ったのか、オーギュストの眉間に皺が刻まれた。
「不服か」
はあ、と落とされる深いため息。
私はこの人の妻でいる間、誰かと愛を交わそうと思ったことはなかった。
愛されたいと願ったのは、彼の妻をやめると――人生を終わらせると決めた、あの瞬間だけ。
「……陛下が心配されているようなことは起こらないので、ご安心ください」
夫婦らしいことは何もなくても、二人で過ごす時間すらなくても、ほかの人を愛していても。
誰かになぐさめてもらおうとはしなかった。オーギュストがしているのだから、自分も、とは考えなかった。
「私は、結婚した相手とだけ生涯を共にすると決めております」
だから、私を愛さない彼とだけは結婚したくない。
「お話は以上でしょうか」
「あ、ああ」
「それでは……失礼いたします」
頭を下げて食堂を出る。
結婚の話が立ち消えにならないのなら、一刻も早くなんとかしないと。
思っていたような王妃にならないのに、面倒だからという理由でそのまま話を進めるオーギュストのことだ。私との結婚の準備が終盤まで進んでいたら、レイチェルと愛し合っていても私と結婚するかもしれない。
今さら準備をやり直すのは面倒だし、仕事に差し支えるからという理由で。
残ったのは私とオーギュストの二人。完全に人払いをしたということは、ほかの誰にも聞かれたくない話をする、ということだろう。
「それで……本日はどうされましたか?」
嫌な話はさっさと済ませるに限る。談笑すら挟まず話を切り出した私に、オーギュストの視線がわずかだが揺れた。
「先日の……結婚についてだが」
予想していたとおりの話に、ため息がこぼれそうになる。
言い渋っているということは、まず間違いなく私には悪い話だろう。
「継続することに決めた」
「……どうしてなのかをお聞きしてもよろしいですか?」
「今さら結婚するのをやめたとなれば、理由を追求されるだろう。元より、この結婚は政略でしかない。君もそれでいいと頷いただろう」
政略であることは理解しているとたしかにうなずいた。
だけど私はオーギュストが描いていた王妃像には合致しないと、先日話してわかったはずだ。それでも継続すると決めたということは――新しい王妃を探すのが面倒になった、ということか。
「だが、子を産めるとなれば話は変わる。そのため、ひとつだけ条件を加えさせてもらう」
「……なんでしょうか」
「他の男と情を交わすことがないようにしてもらいたい。勝手に子を宿されてはかなわんからな」
「なっ……」
言葉を失い目を見開いた私に何を思ったのか、オーギュストの眉間に皺が刻まれた。
「不服か」
はあ、と落とされる深いため息。
私はこの人の妻でいる間、誰かと愛を交わそうと思ったことはなかった。
愛されたいと願ったのは、彼の妻をやめると――人生を終わらせると決めた、あの瞬間だけ。
「……陛下が心配されているようなことは起こらないので、ご安心ください」
夫婦らしいことは何もなくても、二人で過ごす時間すらなくても、ほかの人を愛していても。
誰かになぐさめてもらおうとはしなかった。オーギュストがしているのだから、自分も、とは考えなかった。
「私は、結婚した相手とだけ生涯を共にすると決めております」
だから、私を愛さない彼とだけは結婚したくない。
「お話は以上でしょうか」
「あ、ああ」
「それでは……失礼いたします」
頭を下げて食堂を出る。
結婚の話が立ち消えにならないのなら、一刻も早くなんとかしないと。
思っていたような王妃にならないのに、面倒だからという理由でそのまま話を進めるオーギュストのことだ。私との結婚の準備が終盤まで進んでいたら、レイチェルと愛し合っていても私と結婚するかもしれない。
今さら準備をやり直すのは面倒だし、仕事に差し支えるからという理由で。
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