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三十話
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「一度立てた誓いを後になって覆すことはできません。よく考えて……ご家族とも相談してください」
たとえ良縁に恵まれなかったとしても、一度破談になった娘の騎士にするぐらいならアシュフィールド家の騎士にすればいいと考えるかもしれない。
現当主だけではなく、次期当主であるサイラスの兄の意見も汲んだうえで進退を決めるべきだろう。
そう思って口にした言葉に、サイラスの視線が悩むように泳ぐ。
「……それで構わないとなったら、剣を受け取ってくれるか?」
だがすぐに視線がシェリルの定まった。真剣な面もちに、今度はシェリルが困惑する。
騎士になることを認めるはずがない。だがもしもアシュフィールド家の人々が納得したら――その可能性を、シェリルは考えていなかった。
「それは……」
サイラスが騎士となってシェリルに仕える図がどうしても想像できない。
月に一度、近況報告をするだけの仲になっていたとはいえ、それでも何年も婚約者として接した相手だ。
自身の夫にするのと、自身の部下にするのとでは話が違いすぎる。それならまだ赤の他人になるほうがいくらでも想像できる。関わりがなくなるだけなのだから。
「……今は、お答えできません」
サイラスがシェリルに仕えることになった場合に周囲に与える影響。アシュフィールド家との縁がどうなるのか。そして、父と母がどんな反応を示すのか。
考えなければならないことは多い。
破談にした相手に仕えるなんて話をこれまで聞いたことがなかったのだからなおさら。
「そうか……わかった」
そう言って、サイラスは頷き立ち上がった。
真っ直ぐに見つめてくる青い瞳に、シェリルは苦手意識を抱きながらもふと湧いた疑問を口にする。
「そういえばサイラス様。恋愛結婚どうのというお話はよろしいのですか?」
「いや、それは、その」
とたんにしどろもどろになるサイラスにシェリルは首を傾げた。
たとえ良縁に恵まれなかったとしても、一度破談になった娘の騎士にするぐらいならアシュフィールド家の騎士にすればいいと考えるかもしれない。
現当主だけではなく、次期当主であるサイラスの兄の意見も汲んだうえで進退を決めるべきだろう。
そう思って口にした言葉に、サイラスの視線が悩むように泳ぐ。
「……それで構わないとなったら、剣を受け取ってくれるか?」
だがすぐに視線がシェリルの定まった。真剣な面もちに、今度はシェリルが困惑する。
騎士になることを認めるはずがない。だがもしもアシュフィールド家の人々が納得したら――その可能性を、シェリルは考えていなかった。
「それは……」
サイラスが騎士となってシェリルに仕える図がどうしても想像できない。
月に一度、近況報告をするだけの仲になっていたとはいえ、それでも何年も婚約者として接した相手だ。
自身の夫にするのと、自身の部下にするのとでは話が違いすぎる。それならまだ赤の他人になるほうがいくらでも想像できる。関わりがなくなるだけなのだから。
「……今は、お答えできません」
サイラスがシェリルに仕えることになった場合に周囲に与える影響。アシュフィールド家との縁がどうなるのか。そして、父と母がどんな反応を示すのか。
考えなければならないことは多い。
破談にした相手に仕えるなんて話をこれまで聞いたことがなかったのだからなおさら。
「そうか……わかった」
そう言って、サイラスは頷き立ち上がった。
真っ直ぐに見つめてくる青い瞳に、シェリルは苦手意識を抱きながらもふと湧いた疑問を口にする。
「そういえばサイラス様。恋愛結婚どうのというお話はよろしいのですか?」
「いや、それは、その」
とたんにしどろもどろになるサイラスにシェリルは首を傾げた。
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