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九話

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「出かける? 二人で?」

 次の日、歴史の授業の前にまたアルフに話しかけられたシェリルは、休みにサイラスと会ってどうだったのかを聞かれ、正直に答えた。
 するとアルフはきょとんとした顔で首を傾げた。

「ええ、多分……二人になるんじゃないかしら」
「うーん……そうか、なるほどなぁ」

 何やら考えこむように唸るアルフに、今度はシェリルが首を傾げる。

「どうかしたの?」
「いや……実は、僕とサイラスって小さい頃に交流があったんだ」
「あら、そうなの。……それは、初めて知ったわ」

 サイラスの交友関係についてそこまで明るくないシェリルだが、これまで定期的に行われていた茶会で、アルフの名を聞いたことはなかった。
 だがエイトケン家とアシュフィールド家はどちらも栄えている家だ。交流があったとしても不思議ではない。
 それに頻繁に会う相手ならともかく、ごくたまにしか会わないのだったら、時間も決められている茶会ですべて話すことはできないだろう。
 シェリルが結論付けたところで、悩むように視線をさまよわせていたアルフの視線がシェリルに定まった。

「本当に小さい頃だから……うーん……君の婚約者にこんなこと言うのもあれかなって思って黙ってたんだけど……なんというか、どうも話、というか考え方が合わなかったんだよね」

 サイラスとアルフは二人共三男で、家を継ぐ可能性が極めて低い。そして同年齢なら、共通点も多いように感じるのだが違うのだろうか。そう考えてシェリルがぱちぱちと瞬きを繰り返していると、アルフは苦笑を浮かべた。

「まあ、なんというか……嫌だと思うことがあったら嫌だってはっきり言ったほうがいいよ」
「……そう。わかったわ」

 嫌だと最後に口にしたのはいつだろうか。もうしばらくの間、シェリルは嫌と言っていない。嫌だと言えば我侭だと言われ、十年も甘やかされてきたからだと溜息をつかれた。
 なんとも表現しがたい曖昧な笑みを浮かべているアルフから視線を外し、シェリルは嫌だと思うことがあっても言えるだろうかと、わずかに顔を伏せる。

「……もしも言いにくかったら僕から言うから、何かあったらいつでも相談して」
「ええ、ありがとう」

 そんなシェリルの態度に何か察したのだろう。気遣うように言うアルフに、シェリルは小さく微笑んだ。
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