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side ノア
しおりを挟むここ最近、アイツの様子がおかしい
いや俺にとってはこの上なく最高で、邪魔が一切入らず仕事にも集中できている
ただ婚約したあの日からずっとあった俺へのアピールが、突然なくなった
たしか、うちの料理人が張り切っていた結婚1周年の日くらいからだろうか
前日までは普通だった。やれプレゼントだの、手紙だの、お茶会をしてくれないかなど。
まわりくどいことをして俺の拒否権をなくし、それに苛立って激しくアイツの身体を弄んだのがあの夜
廊下で会えば、何分も喋りかけてきていたのが今ではひとことのみになった。食事中も話しかけるなと言っていたのを無視して、今まで一方的に話しかけてきていたのに静かになった。お茶会も頻繁に誘われていたがこの前たまたま見かけた時は1人で行っていた。
俺にとって過ごしやすくなったんだ
初めはそれが心地よかった。なくなって清々していたくらいだからな
そのはずなのに。何故こんなに胸にポッカリと穴が空いたような気持ちになるんだ
何故楽しそうに話しかけてこない、何故お茶会に俺を誘わなくなった、何故、なぜ…。
あんなに煩わしかったはずなのに湧き上がってくる疑問の数々。目が合うと前とは違うぎこちない笑顔で、気まずそうに目を逸らすその意味はなんだ
一ヶ月前までは嬉しそうにしてキラキラと輝いていたはず…
もしかして…。
居ても立っても居られずいつもアイツがお茶会を指定する場所へと向かう
丁度今日もいるみたいでバレないようにだんだん近づいていく
すると何故か楽しそうな笑い声が聞こえた
サッと見える位置まで向かうと若い庭師がいた
は?
あのキラキラした笑顔をその庭師に向けて、楽しそうに2人で話していた
内容までは聞こえてこなかったけれど、突然照れたように赤くなった頬とそれを隠すように咄嗟に肩を叩いたスキンシップに耐えられなかった
『2人で何をしているんだい?』
柔らかな笑みを携えて2人のいる場所へと移動していく
突然の声にびっくりしたような顔をした2人
そしてアイツと、ークロエと目があった瞬間目を逸らされてしまった
そのままでは不味いと思ったのか再びぎこちない笑顔で言葉を紡ぐ
「ノアさん、お仕事お疲れ様です
この庭園の花を見ながらお茶会をしていたのですが、偶然ニコラさんをお見かけしたのでお話をと思い話しかけてしまいました。ごめんなさい。お仕事の邪魔をしてしまって。」
はたしてそれは本当に偶然だったのか?
そういえばここでの茶会を思い出すとたまにここから庭師が見えたかもしれない。それたまたま見た時にも話してるのも見たような…
クロエが俺から心変わりした可能性は?優しそうなこの庭師、ニコラに惚れたとなれば毎回ここで茶会してた理由も想像がつく
さっきの照れた顔だって俺だけに向けられていたはずだと思っていたが、どうやら勘違いだったらしいからありえないことではない
いつからだ?…今はそんなこといいか
『君、クロエと言ったね。俺の妻が迷惑をかけてすまなかった、仕事に戻るように。』
「はい!申し訳ございません。失礼致します。」
何かを察したようにさっさといなくなるクロエ
そんなクロエを目で追って残念そうにしているニコラはどうやら自分の立場がなんなのかわかっていないらしい
『クロエ』
「っ!?…はい」
自分の名前を呼ばれたことになのか、俺の表情がストンと落ちていたからか。はたまたあの庭師への恋心がバレたと思ったのかは定かではないが、覚悟を持ったような目で見つめ返される
その視線を受けたあとスッと目を逸らし後ろに控えていた執事へと撤収するように指示を出し、寝室に誰も入れないようにも伝えた
混乱しているクロエを連れて寝室へと向かう
こいつがどんな立場なのかわからせないといけない
え?とかなに?とか小声でぶつぶつと聞こえてくるのは全部無視をした
使用人には無表情であること、多少乱暴にクロエを引っ張っている事を見られたがまあいい
幸い、ここに古くから仕えているものばかりだ
多少のことでは驚かないだろう
乱暴にといっても俺から逃げられないようにガッチリと腰を引き寄せて、俺の歩幅に合わせる為にクロエが小走りになっているくらいだ
寝室に入ると扉に鍵をかけた
今まで部屋に訪れたりした時も鍵なんてかけた事なかったからクロエは驚いた後、何故か青ざめた
『さて、と。クロエ、(どうしてこうなっているか)わかっているな。』
疑問系でもなく言い切りの形でぶつけると、可哀想なくらいビクついた
「あ、えっと…」
『わからないのかい?』
答えないクロエに追い討ちをかけるように一歩近づいて問いかける
「ぁ、ごめんなさい…」
『それは何に対してかな』
またさらに近づいていく、逃げるようにクロエも同じくらい後ろに下がっていく
「それは…キャッ」
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