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8’
しおりを挟む「は?」
自然にこぼれ落ちた言葉に震えた使用人達の中で
優雅に佇み何も読めない従者の彼だけはいつも通りだった
“クラシコフ様が今朝隣国へ向かわれました”
今目の前で平然としているこいつはそう言ったんだよな?
一瞬時が止まったように感じたが
俺の聞き間違えか?
「すまないがもう一度言ってくれないか?」
「ですからあなたの婚約者様のクラシコフ様が早朝に隣国へと向かわれましたことをご報告致します」
思わずそいつに掴みかかりに行くがかわされた
は?サーシャが隣国へ?
俺が邪魔で婚約解消してくれなかったから
実力行使の国外逃亡で駆け落ちって訳か
「アイツと一緒なのか」
「ええ、報告ではそう上がってきています」
やはり一緒なのか
サーシャ、そこまでして俺と結婚したくなかったわけか
そんなにするほどアイツが好きなんだな
それならもっと囲い込んでいればよかったのか?
こんなことになるなら監禁して閉じ込めてずっと側に置いておけば良かった
俺しか頼れないように依存させて俺しか見えないように見せないように
もっともっと、、
「何時に出た」
「朝の5時です」
「今は何時だ」
「11時ですね、6時間経っています」
慌ただしく準備をしその間にもついてくるその従者
「隣国までは3日はかかります
馬車で向かっているとのことなので馬を走らせれば途中で追いつくかと馬車は後から走らせますのでまずはこちらをどうぞ」
あ゛?
随分と用意周到すぎないか?
こうなることを見越してたのに何故今の今まで報告しなかった?
ギッとその従者を睨むが本人は涼しい顔だ
どうせこの後もついてくるのだろう
今この場で問いただしても時間の無駄でしかない
「足引っ張るんじゃないぞ」
「ええ、心得ています」
馬を走らせて暫くするとやっと冷静になってきた
改めて今日の一連の流れを整理していると誰かの策略の上で動かされている気もしなくはない
無駄に長かった朝食
そこで語られる両親の会話が普段と比べ俺に話題がふられることが多かった
それ故に長引かせざるを得なかった
その後の急遽入った仕事、そしてあのタイミングでの従者の報告、図ったようなサーシャを追いかけるための準備、決定的証拠である隣を走るこいつ
「おい、何か知っているんだろう」
「いえ、私は何も」
「はぁ、誰もいないからいいんじゃないか?
...そうだろう?レオン」
「あちゃー、完璧だと思ってたんだけどばれちゃたかー」
「常田はどうした」
「ちゃあんとお屋敷で働いてるよん」
「ならいいが、、いつからだ」
「報告の時だね⭐︎」
「そうか」
これ以上こいつと喋っても口を割らないのは長年の付き合いから雰囲気でわかる
あえて話してもいいが今は無駄口を働いてる暇はない
こいつが出てくるということは誰かが絡んでいることは間違いない
姉かそれとも両親かサーシャの親かもしれない
はたまた別の誰かなのか?
だが目的が分からない
とりあえずわかるのは俺がサーシャを連れ戻すことに専念してもいいということだけだ
連れ戻したら今度はもう逃げられないように
しっかりと........
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