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うちの運命が決まる時がやってきました

ついにうちの人生がスタートする時や

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校内で生徒のみで行われる卒業式前夜パーティ
卒業生に加えパートナーとして呼ばれれば他学年でも参加できるんよ
そして案の定王太子が連れてきたのは、あのヒロインちゃんやった。ゲーム通りや。

ついにやってきたこの運命の日
期待に胸を躍らせながら今かいまかと待ち侘びる
ヒロインちゃんをエスコートして連れてきた瞬間。うちは確信した。絶対この場で婚約破棄されると
ゲームで何度も見た公爵令嬢の断罪イベント
それが今日、この瞬間この場所でうちに向けて行われる。ほんまに長かった
やっと王太子から解放されるんよ
うちの薔薇色人生がこっからスタートする!!


「みんな、明日は卒業式だ。
その前に聞いてほしいことがある
その前にサラ、こちらへ」
壇上に上がり凛とした声が聞こえる
王太子の声で静まり返った場に、カツカツとひとつの足音だけが響く
それは王太子の横で音が止み
前を見据える強い目をしたヒロインちゃん
流石は隣国の王女様
守られるだけじゃなくて、隣に立ちたいと言う意思からゲームでも真横に立っていた

「皆も知っていると思うがこちらにいるサラはこの1年、数々の嫌がらせを受けていた」
ここでその事実を発表するということは確信を得た証拠があると断言しているも同然だった
「そしてその首謀者というのは私もよく知る人物であるということも。 スザンナ、前へ」
やっとやっとやわ。悪役の散り際は美しさが大事やん
だから、口元には弧を描き目は真っ直ぐに王太子を
そして愛用の扇子を持ち直し優雅にその上魅せつけるように歩いていく
誰もが見惚れる公爵令嬢。だけれど美しい花には毒があるもの、息を飲む音がいくつか聞こえた

ぴたりと立ち止まり恭しく礼をする
無言で見つめられ向こうも喋る気配がない
静寂が続く
何故?うちから許可取って喋れと?
証拠はちゃんと揃えてきてるんやろ??
そっちが喋らん気ぃならしゃーない
最後になるやろうしうちから仕掛けていきましょか。

「発言の許可をいただいてもよろしいでしょうか?」
「許そう」
「殿下は私がその首謀者だとお思いなのでしょうか?」
「そうだ、現に証拠も揃っている」
うんうん、良かったわ
うちの勝ちや、これはもう逃れれん事実
証拠も集めたんやったら破棄してくれるやろ
さっさとこの場で言ってーな

「これがそうだ」
おおー!お見事やん
全部うちが仕掛けたやつやわ
見事なもんやで王太子様とヒロインちゃん?
でもさぁおかしくない?
他の人がやったやつもゲームん時は濡れ衣着せられとったで?それが一つも見当たらんのやけれど
ま、婚約破棄してくれるんやったらそんな些細なことえっか

「この行為は許されざるべき行為だ」
ここはゲームと同じセリフ
そして次に告げられるのは
「だがそれは私への愛が溢れすぎた故の行為であることも分かっている」
は?何言ってんのや

「そしてその前にひとつ聞いてほしいことがある。
今隣に立つサラは、隣国の王女であることがつい先日判明した
この嫌がらせの件については社交会での荒波に呑まれないように指導をしてくれていたのと個人間のやり取りである為咎める必要がない、とも仰っていただけた」
どういうこと?たしかに嫌がらせは全部自分でやったけど。でもここはちゃうやん、ちゃうやろ?え?

「幸いここは学園である
多少いき過ぎた行為ではあったが、若気の至りで抑えられる程度でもある
他にもたくさんの生徒が色々と嫌がらせをしていたようだが、それも咎めないとのことだ
しかし今後このように貴族平民関係なく嫌がらせがあることが判明した場合は、躊躇なく退学とする」

ざわざわとざわめき出すパーティ会場紛れもなく歴史が動いた瞬間でもあった
やけど、うちが思ってた展開はこれとちゃう
非常にまずいんとちゃうか。え?これ夢?
いやや現実とかそんなんありえへんこと言わんとって
どこで狂ったん?
だってゲーム通りそれはもう完璧に悪役キャラとして演じてたやん!
なんならゲームの中の令嬢より酷い事したんやないかと思うくらいに!!

しかも何?!
うちがあんたへの愛故にヒロインちゃんに嫌がらせしたって?建前上はそうやけど事実は全くちゃうからな
しかも何やその顔。安心してくれていいみたいなドヤ顔すんなよ
自分はうちの愛を受け止める懐の深さがあるよ的な

やかましいわ!!!
しかも公衆の面前でそれ告げる意味あった?
いや、あったんかもしれやんけど何なん
え?自意識過剰とちゃうか
ふと感じた視線に目を向けるとあのヒロインちゃんが、満面の笑みでみたことのないくらい綺麗な顔で笑ってた

負けた。瞬間的にでもはっきりとそう敗北を自覚する
完膚なきまでにヒロインちゃんに負けた
うちの人生かけた計画がバレていた?
背中に嫌な汗が流れる
その後のことはあまり覚えてない
王太子に支えられながら控室に行った気もする
気づいた時には早朝で自分のベッドやった
昨日の出来事が夢であってほしい
うちの薔薇色人生がスタートする筈やったんや

カチャリ
唐突に開く扉の小さな音
こんな時間に開くのはおかしいとは思ったがアンナだと思い窓の方を向いていた
ベッド近くで止まる足音
不思議に思いそちらへと振り向く
思わずあげそうになった声は目の前の相手の掌に消えてった

「姉様、声をあげてはダメだよ」
カーテンから漏れる少ない光しかなかったけれどノアの瞳はどろりと濁って欲情しているように見えた
「そうそ、ちゃんと黙っててね
いつもこんな時間に起きないのに、起きる姉様が悪いんだよ?それにこれは1番最初に姉様が僕にしたことだからね?ちゃんと見てて」
大声を出して助けを呼んでもいいがこの天使は普段可愛がられている為、まさか姉を襲ってるとか思わん
精々弟が甘えて姉のベッドに潜り込んだくらいや

これは非常にまずい
緊急事態どころではすまん
過去に一度だけノアがうちの部屋に潜り込んでうちの着替えを手に取って、自身のを慰めているところを見たことがあった
これは脅しに使えるとその場で嫌がるノアの羞恥心を煽りに煽って、その行為を眺めてた
その効果はバツグンでそれ以降近寄って来んくなっていっつも威嚇してくる猫みたいにうちのこと毛嫌いしたんやと思ってたから、むしろ好都合すぎて何も気にしやんかってんやけど
さっきいつもこの時間に起きひんとか言ってたよな。てことはうちが気づいてないだけで今目の前で行われてるこの行為が??

うわ、過去の自分がノアの新しい扉開いたんか
これは厄介やぞ。ていうかゲームよりもあかんスイッチいれてもうてたやん
こうなってしまったんは間違いなくうちのせいや
王太子に続いてノアまでとは恐るべしやわ
これはだんだん雲行き怪しくなってきてないか?
うちの将来いけてる?

あの後満足したようで照れながらうちのほっぺにキス落として静かに帰っていったノア
ほんまにやばいで。あの天使ノアを脅してたはずが逆に脅されるとか緊急事態以外何もんでもない
それと帰り際にノアから投げかけられた言葉が、さっきからぐるぐるとまわって消えてくれない




纏まらん思考のまんまでの学園の卒業パーティ当日
警戒していたマキシムは至極普通やった
やっぱりマキシムなんよな。このほんわか感落ち着くわぁ
うんうん、あんただけがまともでうちは安心する
王宮にそのまま呼ばれて結婚式の日取りが決まった。
半年後なんやってー
なんでそんなに早いんやろな?
うちにはよう分かりません。てか分かりたくもない!!普通は1年くらいかけて行う準備やったやん
それが早く結婚したいという王太子の意思で(あの出来事でうちの意思やとも思われてるらしい)早まったんやと聞いた

今までしてきた演技により表情を崩すことはなかったけどここまでくるともう流石に諦めざるを得ない
うちの薔薇色人生計画が見事に崩れていく
神様はなんて残酷なんやろう


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