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再会は突然に

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今日もいつもと変わらない穏やかな日常
隣にはすぴーという効果音が似合う俺の愛しの我が子が眠っている

うん、今日もいい日だ

微笑ましく思ってそのぷにぷにと柔らかいほっぺにツンツンとしてみる。とくすぐったかったのかムっと一瞬険しい顔をする
もっと触っていたいが自分の都合だけで我が子の安眠を邪魔するわけにはいかないので、程々にして朝食の準備に向かう為キッチンへと向かった
さて何にしようか
元々朝は食べない派だったが子どもができたらそうとは言っていられない
俺が食べないことによって真似すると言い出されると十分な栄養が取れなくなってしまう
今日もいつものようにボーっとしている頭が少しでも冴えるようにと、窓から目の前に広がる海を眺めていたら突然チャイムがなった
そのまま何も考えずに廊下を歩いて行き玄関の扉を開ける
この時少しでも考えてたら、疑問に思って踏みとどまれば未来は変わっていたのかもしれない
こんなに朝早く訪ねてくる人はいない、と。宅急便だとしてももう少しあとの時間だし、近所の人でも同じく。
そして家族もましてや友人すら訪ねてくることはない
だってこの場所へ越してきたことは、誰にも伝えていないのだから。

『はーい、どちら、さ、ッ、、ぁ』
そう誰にも知られているはずがない。
なかったはずなんだ
完全に眠気は吹き飛んだ。それが逆に俺がまだ夢の中にいるのかもしれないと思うような、そんな存在がそこにはあった
だってこいつは

「久しぶりだね、ちーちゃん」
俺が逃げ出したいと思った元凶。
もとい10年という俺の恋心を終わらせたくて俺のハジメテを捧げた男

『ぅ、あ。な、んで』
一瞬にして頭が真っ白になり困惑していく
そんな俺の様子を見守りつつ色んな感情が混ざったような表情をしたそいつが口を開こうとした時

「ぱーぁぱ?」
唐突にかけられた声の方へと顔を向けると眠さを隠そうとせず、右手はグーで目を擦り左手はパジャマの裾を掴んでぺちぺちヨタヨタ歩いてくる我が子の姿があった
そんな姿も可愛いねと一瞬、現実逃避をする

「ちーちゃん、」
その呼び名に あ、と思った時には遅かった
「はぁい!…ん?だぁれぇ?」
それは俺がいつも我が子に呼ぶあだ名で、俺がこいつに呼ばれていた名前。未練がましく呼ばれていた名前で我が子を呼んでいたなんてことが知られてしまった瞬間だった
目が合っているはずなのにピントが全然合わない
愛しい我が子が元気いっぱいのお返事で答えてコテッと首を傾げる。そして俺の目の前の人物にぱぁぁあっと、顔を明るくさせたのがわかった

「きゃー!!かぁこいねぇ!」
キャッキャと楽しそうにはしゃぐ我が子
「ふふ、お名前は?」
こっちまで来て走って来て、俺のズボンを掴んだ我が子の目線までソイツはしゃがみ込みたずねる
「ちーちゃんねぇ、ちとしぇってなあえなの」
「!!ッ、ちとせちゃんって言うんだ」
一瞬だけこちらに向けられる視線
「うん!ぱぁぱもちーちゃんとおしょろいなんだよ、おにぃしゃはー?」
「俺はね、はるとってお名前だよ。言えるかな?」
「はぅとー?」
「そう、そうだね。よく言えました!えらいね」
「えらい?きゃー」
嬉しそうにくふくふと笑いながらグイグイと引っ張られたズボンによって、ハッとして我が子を抱き上げる
そして不意に合うその男の目からは、絶対に逃れられないと確信した




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