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レンタル5
side アニマルキャスト
しおりを挟む獣人は獣人同士でなんて考えはもうとうの昔に消え去りこの多様化の時代に生まれた俺は、表向きはアニマル系のレンタルサービス、本質は獣人の為の結婚相談所のようなところで働いている
10数年続いてる会社でそこそこでかい規模でやっているが人間側には表向きのサービス内容しか流れていない
こんなに続いてるのに何故バレていないかというとオーナーがかなりのやり手であることはもちろん、オーナーの番になった人間がどうやら鍵を握っているらしい
獣人特有の独占欲でオーナーが匿って大事に隠してるからその人に会ったこともないし詳しいことは知らないが、深く突っ込まないほうが身のためだと思う
獣人の大体は15.6くらいになれば番を持ち、相手のことを匿おうとする奴が多い
しかしこの広い世界で中々自分だけのたった1人を見つけるのは中々に難しいことも確かだったりする
ちなみに多様化が進んでいるからと言って獣人に好意的ではない層だって少なからずいる
いじめだったり暴力を振るわれたり、虐げられたりとさまざまなケースで事件になったりもしていた
だからどうせなら動物好きの奴らが集まるようにしてその中からじっくり探せばいいということだった
基本はアニマルレンタルとして家に行って仕事をこなし、自分が選んだやつを番にすると決めたら獣人姿や人姿でその人に素性を明かして結ばれる
その後はしっかり囲い込まれて逃げる隙も与えられず情報も漏れることがない
元来動物好きなのもあって獣人にも寛容だしむしろ秘密を明かせば俺らが悲惨な目に遭うことも理解してくれるため会社として存続できているのも大きい
で例に漏れず俺も15の時から働いて早3年
仕事は結構舞い込んでくるものの番にしたいと思うやつが一向に現れる気配がない
早いやつでは1ヶ月で辞めていったやつもいるしかなり長い年数のやつも結構いる
俺が一緒の年に入った奴らはもう後5人しか残っていない
働いてばっかりいるから金は溜まる一方だ
しかもこの仕事だけじゃなくネットにたまにあげてる獣姿での動画にはたくさんの投げ銭がありそちらの金額もえぐいほどになっていた
あとはこれで番が見つかればいいんだけど。
今日も仕事で会社に向かえばかなり上機嫌の同期が肩に腕をまわして早速絡んできた
「よぉ~、コウさんじゃねーか」
『ウザい手を退けろ』
「やーっと俺に番ができるかもなのにか?」
『はぁ。お前のいつものやつだろーが』
「そんなことはない!聞いて驚け?人姿での相手からのアプローチだ!!」
ドヤ顔で言ってきただけあって確かにいつものそれとは違うようだ
いつもなら獣姿を好きだと言われただけで番ができるとはしゃいでいたし、人姿なら進歩だろう
『続けてみろ』
「さっすがコウ!話がわかるやつだな!!
それでさ、昨日朝から駅前でティッシュ配りしてたんだけどーー」
こいつの話は長いから割愛するとこういうことだった
ティッシュ配りをしていた時に手を握り締められて言われたお礼が可愛かった。
以上
俺に会いに来てくれると浮かれているが果たして本当にそうなのか、聞いてた感じも微妙だ
言った瞬間のキョトン顔も可愛いと言っていたがそれただ単に意味を理解してなかった説ないか?そもそもお前人姿だったのならただの変人だよ
動物好きで受け取ったであろうティッシュなのに動物じゃなくて飼育員っぽいやつに会いに来る変人なんているはずない。がそんなことこいつに伝えなくてもいいだろう
どうせ来週には違うやつの話題が聞けるんだろう
『良かったな』
「だろ!?絶対あれは俺に会いに来てくれる!楽しみだ!やっと俺に番が!!!」
相変わらずうるさくておめでたいやつだ
悪いやつではないがどうにも惚れっぽいところが玉に瑕である
さてと今日も未来の番を囲い込むための資金調達でもやっていきますか
また別の運命とやらに出会ったと騒ぎ出しそんな日の話などとうに忘れたある日、事務所に新たな客がやってくるとオーナーに告げられた
値段もそこそこなため新規客の年齢層はそこまで低くない
しかし今回の客はどうやら俺と歳が近かったので声がかかったと聞かされた
同期の奴らはその日すでに別の予約が入っていたらしく声をかけられたメンバーは俺の他に10人ほどだった
相性診断と称した一方的なお見合いの顔合わせを行う人数は、たまたま事務所に居合わせるやつもいるから実質25人ほどだろう
パーテーションで区切られている一部の壁は客側からしたら不自然な鏡が付いている
所詮マジックミラーなるものでそこから容姿だったりを確認してそこに置いてる端末で操作して簡単なアンケートに答えてから集計されてオーナーから仕事になるか番候補になるかを割り振られる
見合いの順番は一応年功序列ということで大概俺は最後らへんになることが多い
多分、歳を重ねてきた分この中だけでも1秒でも早く出会わせて幸せになってもらいたいという願いがこもったオーナーの配慮だと思う
やってきた新規の客はちんまりしているらしい
身長もだが顔が幼く本当に成人してるのか疑うくらいの童顔でころころ動く表情が可愛いと今日1番年上だった狼獣人に聞かされた
なんか孫を見ている気分になったとでれでれしつつ、仕事として割り振られるならアリかなと言っていた
なるほど、俺より年上なのに子供っぽいのか
期待していたがどうだろうなぁ
戻ってきたやつは大概同じようなことを言い誰も見合いとしては考えていない様子だった
さて、と。そろそろ拝みにいきますか
バックヤードから事務所に向かう扉を開けた瞬間微かに好みのいい香りがした
その匂いの元を辿ろうとあたりを見渡すが検討もつかない
とりあえず客を見てから探しても遅くないだろうと思いその場に近づいていくにつれて、その匂いが近くなってきた
もしかしてと思いその足が自然とパーテーションの表側へと近づいた
そのいい匂いと同時にたくさんの獣人や動物たちの匂いもして早く俺のに書き換えないといけないと脳が警告を鳴らす
オーナーの向かいで身振り手振りを交えて明るい声で楽しそうな声色の男の背に手を伸ばそうとしたその時、後ろから誰かに羽交い締めされずるずると引きずられる
相当暴れたし俺だって体格は小さくない方なのに力の差は歴然で、そのまま番の顔を見ることなくバックヤードまで逆戻りだった
「もう少しで色々パァになるとこだったな?コウ」
『あれは俺のだ、ジンさん』
「ハッその反応はそうだろうなぁ威嚇するな
ちゃんと手筈を整えてやるから今は我慢しろ」
そう言って去っていったジンさん
その後ろ姿を見ながら考える
嗅いだこともない好みすぎる香り、楽しそうな嬉しそうな声色をしてオーナーに話をする姿も全て惹きつけられて後数歩のところで届かなかったこの腕にその存在を閉じ込められたらどれだけ幸せだろうか
『チッくそが』
俺が知らない自分だけの唯一を他の奴が知ってるというのは苛立つものでその記憶ごと消せないか考えてしまう
ついでに色んなものの匂いを纏わり付かせてる番にも苛立ってしまったのは仕方ないと思う
確かにあの場面で近づくのは悪手だったが本能には逆らえなかった
無意識に引き寄せられ止められなかった
ジンさんに止められてなかったら何をしていたかはわからない。もしかしたらいきなり背後から抱き込んでうなじあたりを思いっきり噛んで怖がられたかもしれない
そう考えると止めてもらえて良かった
初対面から番に怖がられて会えなくなってしまったらそれこそ本末転倒だ
それならばしっかりと作戦を練って落とし込めばいい
幸い相手は引き取り希望の一泊2日レンタルのはず
その期間にたっぷり仕込んで俺を迎えるように仕向けてしまえばいい。あとは契約と称した人姿で向かった時に丸め込んで番にしてしまえば何ら問題はない
怒られる前提でオーナーから話を全部聞いて作戦を立てないと。
この後オーナーにはこってり絞られお祝いされた
上手く懐に入って落としてこいよ、とも。
その夜はしっかりと作戦を立てあまりよく眠ることができなかった
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