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レンタル2
レンタルストーカー
しおりを挟む沈んでいた意識が戻ってきた時初めに思ったのは、"素敵な夢が終わってしまった"ということだった
俺の願望と欲望が一緒くたになった最高の夢
この目を開けたらまだあの素敵な夢の中とかだったらいいのに
そんなバカなことを思いながら目を開けた、はずだった
「あ、よかったー。目が覚めたんですね?とりあえず水どうぞ」
言われるがままにペットボトルを受け取り口をつける
余程喉が渇いていたのか一気に半分ほどまでなくなってしまった
え?てか、ええ?
「まだ混乱してますよね、ごめんなさい。オレここまでするつもりなかったんですが、って言い訳ですね。本当に申し訳ございませんでした、重ねて不躾なお願いではありますがどうか店には報告しないでいただけるとありがたいのですが…」
『えっと、店?』
なんでまだこのイケメンがいるのかとか、夢が醒めてないのかとか色々考えたいことはあったがこの人が必死に話しているのを見てそれは一旦置いておくことにした
「?はい、ご利用いただいたレンタルサービスのお店のことです。そこにご報告されると都合が悪くてですね…」
『レンタル、サービス…』
「鈴宮様、どうかお願いできませんでしょうか」
『…あの、俺鈴宮ではないです。』
「え!?そんなはずは」
『あ、ちょっと待ってください!確認だけさせてもらいたいのですが』
慌てて離れていきそうになる相手の腕を掴み引き止めて混乱している頭に浮かんだ質問を投げかけた
『夢、じゃないんですか?』
「えっと、はい。先ほどのことは夢じゃありませんね」
『うそ。えっ?じゃあ貴方は?』
「レンタルサービス派遣のストーカー部門を担当しております、神宮寺と申します」
『神宮寺さん』
「はい、こちらも確認してよろしいでしょうか」
『はい』
正直まだ何も消化しきれていないが自分の話を聞いてもらったので相手の話も受け入れた
「貴方のお名前を教えてもらっても?」
『東雲です』
「東雲様。あの、少しだけ端末を確認しても」
『ええ、どうぞ』
そう言ってすぐそばの机の上に置いてあった端末を手に取る
あ、っと思った
その携帯の中には俺のあられもない姿が収められた写真があるはずだ
たちまちブワッと赤くなる俺の顔。多分耳まで真っ赤だろう
両手で顔を覆いチラッと隙間からご主人様改め、神宮寺さんを見た
俺とは正反対に徐々に悪くなっていく顔色
流石に只事ではないと思い痛む腰を持ち上げベッドから降りて駆け寄ろうとしたはずだった
散々いじめ抜かれた行為によりダメージを受けていた腰と脚に力が上手く入らず自宅でありながら無様に転けてしまった
「東雲さま!?」
その音に気づき逆に駆け寄らせてしまう大失態
恥ずかしさやらなんやらで治っていた顔色が再び真っ赤になってしまう
『えと、俺は大丈夫デス。神宮寺さんこそ何かありましたか?』
その問いかけに先ほどよりも顔色が悪くなってしまった
ベッドへと戻され口を開いた神宮寺さんから告げられた内容はこうだった
今の時代、レンタルサービスでストーカーというものが借りれるらしい
そのレンタルで予約が入っていたのが今日だったと。
その内容はお客様の要望によって変更できるらしく今日のもそうだったらしい
しかしこのレンタルサービスでは本番は禁止されていて、それが発覚した時点で即処分が下されてクビになること。その上契約違反で多額の賠償金を支払わなければならないといった厳しいものだった
それでいつもはこういった衝動的な行動を起こすことがキャストとしてありえないと思っていたらしいが、俺の行動がそのトリガーを引いてしまった
結果的に行為に及んでしまった為謝罪をしたということだった
けれどそのお客様が違ったうえにどうやら今日ではなく来週に別のキャストへと変更になっていて最初に登録されていた住所もちがったことまで教えてもらった
その変更の連絡がギリギリになって発覚しその連絡が入った頃には俺のアパートの前についていたこと
普段は連絡内容の確認を連絡画面でするがスクショされた画面で見ていて気づかなかったことにより偶然が重なっておきてしまったらしい
そしてプレイ内容というのもよろしくなかった
いや、俺にとっては最高だったけれど。
本当は守秘義務があり他人に漏らしてはいけないのだけれど俺は被害者だということで話してくれた
普段こういったプレイは双方挨拶した後に入るものらしい
ただそのお客様の強い希望でそういった挨拶は無しで扉を開けたその瞬間から始まって欲しいとの要望が書かれていた
それからの出来事は起こった通り
りんという名前も指定されていて鈴宮の鈴から来ているのかなという推測がたてられていた
『神宮寺さん、やっぱり俺にも勘違いを加速させた原因があります。玄関の件もそうだし、名前は偶然だけど気づかなかったわけだし。』
「いや、そんなことは」
『そんなことあるんです!それであの。…今回の件はお互い水に流しませんか?このままじゃ埒があかないですし、神宮寺さんはお仕事とは全く別で支障ありませんよね?プライベートとしてだったら問題ないでしょう?それに俺も…その気持ち良かった、ですし。』
最後の方は恥ずかしくて俯いて声が届いていたかもわからない
少しの沈黙が一生だと思えるくらい長く感じた
恥ずかしすぎて言わなきゃ良かったと後悔すらしていたその時唇に触れた熱に驚いた
見開いた目に飛び込んできたのは神宮寺さんの熱のこもった瞳だ
その熱に溶かされるようにだんだんと深くなっていく口づけ
『あッ、まって』
「今のオレはプライベートでいいんでしょう?
それに仕事でないのならばもう我慢をしなくて済む
凛さんもそれを望んでいるでしょう?」
先ほどとは違う大人の色気を纏った神宮寺さんが傍まで迫ってきていた
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