レンタルサービス

yumemidori

文字の大きさ
上 下
14 / 38
レンタル2

レンタルストーカー

しおりを挟む



沈んでいた意識が戻ってきた時初めに思ったのは、"素敵な夢が終わってしまった"ということだった
俺の願望と欲望が一緒くたになった最高の夢
この目を開けたらまだあの素敵な夢の中とかだったらいいのに
そんなバカなことを思いながら目を開けた、はずだった

「あ、よかったー。目が覚めたんですね?とりあえず水どうぞ」
言われるがままにペットボトルを受け取り口をつける
余程喉が渇いていたのか一気に半分ほどまでなくなってしまった
え?てか、ええ?
「まだ混乱してますよね、ごめんなさい。オレここまでするつもりなかったんですが、って言い訳ですね。本当に申し訳ございませんでした、重ねて不躾なお願いではありますがどうか店には報告しないでいただけるとありがたいのですが…」
『えっと、店?』
なんでまだこのイケメンがいるのかとか、夢が醒めてないのかとか色々考えたいことはあったがこの人が必死に話しているのを見てそれは一旦置いておくことにした

「?はい、ご利用いただいたレンタルサービスのお店のことです。そこにご報告されると都合が悪くてですね…」
『レンタル、サービス…』
鈴宮すずみや様、どうかお願いできませんでしょうか」
『…あの、俺鈴宮ではないです。』
「え!?そんなはずは」
『あ、ちょっと待ってください!確認だけさせてもらいたいのですが』
慌てて離れていきそうになる相手の腕を掴み引き止めて混乱している頭に浮かんだ質問を投げかけた

『夢、じゃないんですか?』
「えっと、はい。先ほどのことは夢じゃありませんね」
『うそ。えっ?じゃあ貴方は?』
「レンタルサービス派遣のストーカー部門を担当しております、神宮寺じんぐうじと申します」
『神宮寺さん』
「はい、こちらも確認してよろしいでしょうか」
『はい』
正直まだ何も消化しきれていないが自分の話を聞いてもらったので相手の話も受け入れた
「貴方のお名前を教えてもらっても?」
東雲しののめです』
「東雲様。あの、少しだけ端末を確認しても」
『ええ、どうぞ』

そう言ってすぐそばの机の上に置いてあった端末を手に取る
あ、っと思った
その携帯の中には俺のあられもない姿が収められた写真があるはずだ
たちまちブワッと赤くなる俺の顔。多分耳まで真っ赤だろう
両手で顔を覆いチラッと隙間からご主人様改め、神宮寺さんを見た
俺とは正反対に徐々に悪くなっていく顔色
流石に只事ではないと思い痛む腰を持ち上げベッドから降りて駆け寄ろうとしたはずだった
散々いじめ抜かれた行為によりダメージを受けていた腰と脚に力が上手く入らず自宅でありながら無様に転けてしまった

「東雲さま!?」
その音に気づき逆に駆け寄らせてしまう大失態
恥ずかしさやらなんやらで治っていた顔色が再び真っ赤になってしまう
『えと、俺は大丈夫デス。神宮寺さんこそ何かありましたか?』
その問いかけに先ほどよりも顔色が悪くなってしまった
ベッドへと戻され口を開いた神宮寺さんから告げられた内容はこうだった

今の時代、レンタルサービスでストーカーというものが借りれるらしい
そのレンタルで予約が入っていたのが今日だったと。
その内容はお客様の要望によって変更できるらしく今日のもそうだったらしい
しかしこのレンタルサービスでは本番は禁止されていて、それが発覚した時点で即処分が下されてクビになること。その上契約違反で多額の賠償金を支払わなければならないといった厳しいものだった
それでいつもはこういった衝動的な行動を起こすことがキャストとしてありえないと思っていたらしいが、俺の行動がそのトリガーを引いてしまった
結果的に行為に及んでしまった為謝罪をしたということだった
けれどそのお客様が違ったうえにどうやら今日ではなく来週に別のキャストへと変更になっていて最初に登録されていた住所もちがったことまで教えてもらった
その変更の連絡がギリギリになって発覚しその連絡が入った頃には俺のアパートの前についていたこと
普段は連絡内容の確認を連絡画面でするがスクショされた画面で見ていて気づかなかったことにより偶然が重なっておきてしまったらしい


そしてプレイ内容というのもよろしくなかった
いや、俺にとっては最高だったけれど。
本当は守秘義務があり他人に漏らしてはいけないのだけれど俺は被害者だということで話してくれた
普段こういったプレイは双方挨拶した後に入るものらしい
ただそのお客様の強い希望でそういった挨拶は無しで扉を開けたその瞬間から始まって欲しいとの要望が書かれていた
それからの出来事は起こった通り
りんという名前も指定されていて鈴宮の鈴から来ているのかなという推測がたてられていた

『神宮寺さん、やっぱり俺にも勘違いを加速させた原因があります。玄関の件もそうだし、名前は偶然だけど気づかなかったわけだし。』
「いや、そんなことは」
『そんなことあるんです!それであの。…今回の件はお互い水に流しませんか?このままじゃ埒があかないですし、神宮寺さんはお仕事とは全く別で支障ありませんよね?プライベートとしてだったら問題ないでしょう?それに俺も…その気持ち良かった、ですし。』
最後の方は恥ずかしくて俯いて声が届いていたかもわからない
少しの沈黙が一生だと思えるくらい長く感じた
恥ずかしすぎて言わなきゃ良かったと後悔すらしていたその時唇に触れた熱に驚いた
見開いた目に飛び込んできたのは神宮寺さんの熱のこもった瞳だ

その熱に溶かされるようにだんだんと深くなっていく口づけ
『あッ、まって』
「今のオレはプライベートでいいんでしょう?
それに仕事でないのならばもう我慢をしなくて済む
凛さんもそれを望んでいるでしょう?」
先ほどとは違う大人の色気を纏った神宮寺さんが傍まで迫ってきていた




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ひとりぼっちの180日

あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。 何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。 篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。 二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。 いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。 ▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。 ▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。 ▷ 攻めはスポーツマン。 ▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。 ▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

帰宅

papiko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

ヤンデレ蠱毒

まいど
BL
王道学園の生徒会が全員ヤンデレ。四面楚歌ならぬ四面ヤンデレの今頼れるのは幼馴染しかいない!幼馴染は普通に見えるが…………?

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

処理中です...