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みつきちゃんはぼくたちが守る!

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「「みつきちゃん!!」」

お酒の匂いが回り、具合が悪くなった私の元に、コマケンが駆け寄った。

ユキちゃんが私の頬をぺろっと舐める。

うう、お酒を飲んだわけでもないのに気持ちが悪くて頭がズキズキする。
相当強いお酒だったらしく、完璧に二日酔いの症状だ。

こんなんじゃ、動けないよ。

もう、何なのあの土偶は!

「どうだこの酒の味は。美味だろう?最高級のこの酒は祝い酒にぴったりだと思うが気に入ったか?」

そう言って土偶は、自慢げに酒を入れた瓢箪ひょうたんをぷらぷらと振ってみせた。

うう···。気に入るわけ無いでしょ?!
お酒の味なんて全くわからないし。

具合いの悪さは増すばかりだし、なんて事してくれるの?!

「さあ、来いよ。祝言を挙げる」

土偶は私に近寄り、手を取ろうとした。

「「みつきちゃんに近寄るなー」」

コマケンが私の前に立ちふさがった。
小さいのに両手を大きく広げ守ってくれている。

こんな小さな子達に守られるなんて?!

本当は私がみんなを守らなきゃならないのに、気持ちが悪くて立ち上がる事さえ出来ない。

涙目になりながら見ると、コマケンの二人は錫杖を土偶に向けてブンと振り下ろした。

土偶は慌てて後退するも、額に青筋を立て腕をブンブンと振った。

「こら!危ないじゃないか。子供がそんな武器を振り回すんじゃ無い。そこを退け」

土偶はぐいぐいと二人の間に割って入ろうとするが、コマケンは錫杖をクロスさせ、土偶の進行を妨げた。

「「どかない!おじさんはどっか行け」」

睨み合う土偶とコマケンは、どちらも一歩も引かない。

「おじさん?!こらお前達、俺はおじさんじゃなくてお兄さんだ。さあ、いい子だからお兄さんの言うことを聞くように。今すぐ道を開けなさい」

「「イヤだよ開けないもん!おじさんはあっち行けー」」

「ぐぬぬー」

土偶はドスンドスンと地団駄を踏み、コマケンをキッと睨みつけた。

「こうなったら腕ずくだ!俺は子供だからって手加減なんかしないからな。お前達、覚悟しろ」

そう言うと、土偶は上空へと浮かび上がり両手を前に突き出した。

その手からは小砂利がパラパラと出てきて、土偶の周りに円を描いて浮かんだ。

土偶が攻撃対象を指し示すと、その小砂利はコマケンの上に降り注がれた。

ザザーッと降り注ぐ小砂利に、コマケンは錫杖を振って対応する。
この小砂利自体には大した攻撃力はない。
しかし、小砂利なだけに細かすぎて対応しきれない。
二人の足元から徐々に小砂利に埋め尽くされて行き、次第に身動きが取れなくなってしまった。

「「うごけないよー」」

悲痛な叫びを上げるコマケンに、私は動揺する。

「コマ!ケン!」

土偶はほくそ笑み、コマケンの横を通り抜け私の前まで来ると言った。

「邪魔な子供たちは、もう終わりだ。しばらくすれば生き埋めになる。お前は諦めて、俺のもとに来るんだ」

土偶は無理やり私の腕を掴み、引きずるように立ち上がらせた。

「イヤ!」

「「みつきちゃん!!」」

ああっ、これって凄いピンチなのかも。
気持ち悪すぎて、抵抗できないのが辛い。

「うにゃ!」

ユキちゃんが大地を蹴って、土偶へと襲いかかった。

「猫よ!お前の攻撃は既に見切っている」

土偶はクルッと回転すると、ユキちゃんの攻撃を避けた。
更に追撃も避け、その勢いでユキちゃんの腹を思いっきり蹴り上げた。

「ぎゃんっ!」

「ユキちゃん!」

ユキちゃんは空へと飛ばされ、私の視界から消えてしまった。

心臓がドクッと鳴り、胸が締め付けられる。

ユキちゃんが強いことは良くわかっている。
防御で相手の攻撃を軽減できているとは思うけど、あれだけ飛ばされたんだ。
無傷というわけには行かない。

今すぐにでも後を追いたいけれど、先にこの場をなんとかしないと。

土偶は弱いと思っていたけど、そうとも言えないようだ。

土偶の攻撃により、コマケンは胸の辺りまで小砂利に埋まっている。

小砂利の攻撃なんて、地味でぱっとしないように思ったのに、実のところじわじわと効いてくる恐ろしい術だった。

あの小さな子達が生き埋めになったらと思うと、居ても立っても居られない。


もう気持ち悪いとか、言っている場合じゃない。

しっかりしろ、私!

この状況を打開するために、どうしなければならないのか、考えなくちゃ。

まずは、コマケンを救出する。

そして、ユキちゃんを探しに行こう。

私は目を見開いて拳に力を入れた。

コマケンとユキちゃん、待ってて。今助けるからね。

私は何度か息を吐くと、集中して武器を右手に握った。
私の動きに気づいた土偶は、肩をすくめてため息をついた。

「そんな物騒なもの、花嫁には必要ないだろ?」

そう言うと土偶は、私の右手に手刀を叩き込んだ。
その痛みで集中が途切れた私の手からは、武器が掻き消えた。

私は後ろ手に縛られ、身動きが取れない。

「花嫁よ、誓いの盃を取れ。って、手が使えないんだったな。よしよし、俺が口移しで酒を飲ませてやろう」

土偶はニヤリと笑い、一口酒を飲み込むと私に迫ってきた。

うわぁっ!!
止めてーー。
なんで土偶とキスをしなくちゃならないの!

冷や汗を流しながらジリジリと後ずさる私に、にじり寄る土偶。

土偶が私をドンと押し倒した瞬間、強い光が辺りに放射される。

土偶はその光に耐えきれず、目を瞑って叫んだ。

「なんだこの光は?」

光は更に強くなり、辺りに満ちる。

「「みつきちゃんに触るな!」」

力強い声が響いた。

「コマ!ケン!」

気がつけば、二人は小砂利の山から脱出しており、私と土偶の前まで歩いてきた。

二人の手には、勾玉がしっかりと握られている。

あれは確か、ピンチになったら使うようにと、アマテラスから渡されたもの。

その勾玉が強烈な光りを発している。

後ずさる土偶に、コマケンは勾玉を突き付けた。

「「みつきちゃんをいじめたな!ぼくたちが悪いおじさんをやっつける」」

土偶はうっすらと目を開き、子供に負けじと立ち上がった。

「おじさんじゃない!お兄さんだと言ってるだろうが」

コマケンは勾玉を握りしめた。

勾玉の光が弾けて私の身体を包みこんだ。

凄い力を感じる。
コマケンの潜在能力を勾玉が大幅に引き上げてる。

そうだ!
これに私の力をプラスしたら、どうなるんだろう?
そんな事を考えたら、ワクワクしてきた。

思い立ったが吉日ってことで、早速試してみよう。

私は目を瞑ってコマケンの光を感じる。
光は私の中を駆け巡り、私の力と融合する。

それは黄金色に輝き、強さを増した。

何倍にも膨れ上がった力は、再び二人へと流れてゆく。

コマケンは、勾玉を高く掲げた。
光を受け取った二人は、その姿を大きく変貌させた。

「あっ?!」

驚きで思わず声が漏れた。

なぜならば小さな二人は、金色に輝く大きな戦士になっていたのだから。
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