転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜

万実

文字の大きさ
上 下
83 / 106

探索

しおりを挟む
ツクヨミと悠也さんの後について、私たちも移動する。

花々の咲き誇る大地をしばらく進むと、そこには見上げるほど大きな木が鎮座していた。

ここ、建物の中だよね?って、疑問も浮かぶけど、そんな常識がここ須弥山では通用しない。

まあ、あまり深く考えないでおこう。

その大木の根元にはうろがあり、そこは入口の様になっている。

まず、ツクヨミと悠也さんが、そのうろへと入ってゆく。

私はユキちゃんを抱え、アマテラスの後について進んだ。

木の中へ踏み込むと、そこはかなり大きな空間が広がっていた。
木の中だというのに、陽の光が入り込んでいるように、明るくて暖かだ。

「悠也、あそこに見える木のテーブルは作業台だ。あと、炉は奥の部屋にある。どちらも好きに使っていい」

「分かった」

ツクヨミと悠也さんは奥にある木のテーブルの前まで来ると、リュックの中から手持ちの材料を取り出して広げた。

ツクヨミは武器作製のための道具などを取り出し、悠也さんに説明するんだけど···。

「あの、ツクヨミとアマテラスってどういう関係なの?」

アマテラスの社のことなのに、ツクヨミはとても詳しい。
一体二人はどういう関係なのか、不思議に思い聞いてみた。

ツクヨミは眉間にしわを寄せて、不本意そうに言った。

「アマテラスは俺の姉だ」

「えっ!そうなの?」

うわぁ!驚いた。
通りでツクヨミはここの事に詳しい訳だ。
だけど、あまり似てない二人だよね。

アマテラスは小首をかしげながら、可愛く笑った。

「そうなのよ。ねぇ、可愛くない弟でしょう?」

「ええっ!?···そうね···可愛いって言うより、カッコいいとか?」

なんとかフォローしなくちゃと思って言ったら、ツクヨミは満面の笑みで私の隣にやってきた。

「深月!お前、分かってるじゃないか」

そう言うと、ガシガシと私の頭を撫でた。

アマテラスはそんな私達を見つめて肩をすくめ、テーブルの上にあるアイテムを眺めた。

「あら、いいもの持ってるじゃない」

アマテラスはその中から宝玉をかき集めた。
そういえば、私が倒した妖魔や鬼が宝玉を落としていったんだっけ。
悠也さんが集めてくれていたんだ。

「その宝玉、どうするの?」

アマテラスは手のひらで宝玉を転がしながら言った。

「これを精製して、勾玉を作るの。そして、武器にはめ込むから」

「へぇ」

「どれだけ式神を集めても対応できるようにしておかないとね。さあ、始めるわよ。悠也はツクヨミの指示に従って作業を開始。私は勾玉を精製するわね。しばらく待つことになると思うから、その間深月は式神を集めてきて」

「えっ?!式神を集めるの?」

「そうよ。だけど、深月と小さな白虎だけだと危険ね。帰って来れなくなると困るから、あなたにお供を付けてあげるね」

アマテラスはそう言うと、私の前に跪いて大地に右手をついた。
そこから螺旋状に光りが発し、パァと広がった。

光りの中に、二つの小さな影が現れた。
その影は次第に小さな子どもの姿になった。

「「みつきちゃーん!!」」

「コマケン!!」

なんと、二つの小さな影は狛犬の式神、コマとケンだった。

「「会いたかったー!!」」

二人は私に駆け寄り抱きついてきた。

うう、なんてかわいいんだろう!
久しぶりに二人に会えて、嬉しさのあまりぎゅっと抱きしめた。

「二人とも元気だった?」

「「うん!ぼくたち元気だよ。だけど、みつきちゃんに会えなくて寂しかったー」」

うわぁっ、困った!
かわいすぎて離れられないよ。

「はいはい、そろそろ出かける時間よ。狛犬の二人、こっちに来て」

コマとケンはその声にピクっと反応し、アマテラスの元へ進み出て跪いた。

「コマとケン、これからあなた達がやるべきことを伝えるわね。まずは、深月を守ること。次に式神を手に入れたら無事に戻ってくること。わかったかな?」

「「めがみさま、わかりましたー」」

アマテラスはそんな二人の頭を撫でると、二人の首に何かを掛けた。

「今渡したのは勾玉よ。ピンチになったらこれを使いなさい」

「「はーい!」」

二人はぴょんと飛び跳ねて、また私の元へと帰ってきた。

何をやってもかわいい二人だ。

「それじゃあ、悠也さん。武器の作製お願いします」

既に作業を開始している悠也さんに挨拶をすれば、片手を挙げてにっと笑う。

「ああ!任せとけ」

「ツクヨミ、アマテラス。悠也さんのこと、お願いね」

「おう!」

「彼の事は心配しなくて大丈夫よ!あ、そうそう。深月、たまにとんでもなく強い敵が出るから、気をつけて行きなさいね」

「分かった。気をつけて行ってきます」

ツクヨミとアマテラスに手を振り、私達は社から出て歩き出した。

私はルンルンで、右手にコマ、左手にケンと手を繋ぎ歩く。

最早、ピクニック気分である。

ああ、でもこんなに浮かれてたら駄目だよね。
とんでもなく強い敵が出るって言うし、目的地も何も決まってないのだから。

「さて、どこへ向かおうか?」

式神を集めるっていったって、どこに行けばいいんだろうか?

すると私達の横を歩いていたユキちゃんがトコトコと前へ進みでた。

またしても、付いておいでよと言っているみたいに、ちらりと振り返りながら進んでゆく。

「こっちに行くと強い敵が出るのかな?」

コマケンが急に立ち止まり、鼻をクンクンさせている。

「みつきちゃん、気をつけて!こっちから強そうな匂いがするよ」

へぇ、流石狛犬。
小さな二人だけど、ちゃんと鼻も効くし、勘も鋭いんだね。
みんな頼りになる。

ユキちゃんとコマケンの指し示す方向は、ツクヨミの神殿とは逆の方向。
まだ行ったことのない場所だ。

私達は警戒しながら進んでゆく。

社からゆっくり下って行くと、広い草原のような場所に出た。

今まで立ち込めていた霧は、私達がこの地へ踏み込んだ途端にさあっと晴れて、辺りが見渡せるようになった。

草原の所々に岩場が見える。

その時、急に大気が震え風が駆け抜けた。
『ケーン』という甲高い鳴き声が遠くから聞こえ、なぜかその声を聞いたら鳥肌が立った。

何、今の声?
身体に心に響いてくる。

大気を震わせる鳴き声の方を見れば、そこは空気が淀んでいるように見えた。

私達は顔を見合わせ頷くと、駆け出した。

しばらく走ると、足場がぬかるんできて、ズブズブと足が沈み込み、進む速度も遅くなる。

「足を取られないように気をつけて!」

「「うん!わかったー」」

進むにつれて、空気の淀みは酷くなって、息苦しさを感じる。

私達を先導していたユキちゃんが、ピタリと停止し、空を見上げ全身の毛を逆立てる。

一瞬、空が歪んでいるように見えた。
よくよく目を凝らしてみると、その歪みの先に何かが光って見えるような気がして、私は手を伸ばした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち

鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。 心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。 悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。 辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。 それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。 社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ! 食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて…… 神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...