転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜

万実

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大会5

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「わーーー」

会場に大歓声が響いた。

その歓声に「キャーー」とか、「伶さまー」の黄色い声援が重なる。

大きなメインモニターに映し出されたのは、赤星事務所所長の伶さんと、式神のヒミコだ。
既に対戦相手の式神は、全てがカードに戻っており、伶さんの勝利は確定している。

どこに行っても、伶さんの人気は物凄い。
アイドル並である。

今のところ、勝ち上がり二回戦進出が決まっているのは、真尋、伶さん、私だ。
あと残るは拓斗さんなんだけど、Aブロックから歩いて来るのがちょうど見えたので、様子を聞きに行くことにした。

「拓斗さん、試合はどうだった?」

「もちろん、勝った」

そう言って、腰に手を当てフッフッフと笑い、ドヤ顔をしている。
まあとにかく、みんな勝ったので良しとしましょう。

「深月、お前また目立ってたな」

「それってメインモニターに大映しになってたことを言ってんの?」

「そう。今までは陰陽師の間では有名になってたが、一般の人達にも知れ渡ったな」

ええっ?なにそれ。

「ちょっと拓斗さん。陰陽師の間で有名ってどういう事?」

「大会までの間に、何度対外試合をしたと思ってるんだ?しかも負け無しじゃないか。噂になって当然だろう」

「ああ、そういう事か。なるほど」

それで有名になってる訳か。
拓斗さんに注目を集めてるって言われた意味がようやくわかったよ。

「深月、後ろにお客さんだ」

「えっ?」

拓斗さんに言われ、振り返るとそこには可愛らしい双子の女の子が、瞳をキラキラと輝かせて私を見上げていた。

「「ミツキお姉ちゃん!会いたかったー」」

二人はそう言うと、私に飛びついてきた。

うわぁ!

水無月桜子ちゃんと水無月薫子ちゃんだ。
カワイイ。
二人とも妖精の格好をしている。
桜子ちゃんが桜色、薫子ちゃんは水色のワンピースで背中には羽根まであり、凝った作りになっている。

二人を受けとめ、あまりの可愛さにギュッと抱きしめた。

「桜子ちゃんと薫子ちゃん!元気だった?」

「「うん!」」

「二人とも、試合はどうだった?」

私の一言を聞いた二人は、急にしょんぼりと項垂れた。

「「······それが私達、負けちゃったの」」

「ええっ?!」

二人とも、小さいけれどとても強いのに。
よっぽどの相手なのかな?

「ねえ、あなた達を負かしたのはどんな人なの?」

「えーとね、二月のお姉ちゃん」
「そう、ちょっと怖いの」

二月のお姉ちゃん?
そしてちょっと怖いのか。
和風月名で二月といえば如月。須弥山で会った如月彩香なのかも。

「二月のお姉ちゃんというのは、もしかして如月彩香という人かな?」

「そうだよ」

やっぱりそうなのか。
そしたら私がやるしかないよね。

「よし。では私があなた達の分まで頑張るから、応援よろしくね」

「「うん!!」」

私が二人に「それじゃあまた後でね」と言って手を振ると、「「あっ!!」」と叫んだ二人に呼び止められた。

「どうしたの?」

「あのね、写真をとって欲しいの」

「いいけど、あなた達二人の写真?」

「ううん、そのイケメンの男の子の式神と一緒に撮りたいの。いいかな?」

ハヤトくんと写真を撮りたいのか。
ふふ。
思わずニンマリしてしまう。

「いいよ。ハヤトくん、こっち来て」

ハヤトくんは桜子ちゃんと薫子ちゃんの姿を見て、ため息を吐き、私の横へ並んだ。
そして胡乱な目で見上げながら「ミツキ、変な事考えてないよね」と言う。

「うん、考えてないよ。可愛い双子にサービスしてきてね」

「はいはい、行ってくるよ」

ハヤトくんは若干ゲンナリしながら呟いた。

そして双子の間に入ったら、私は渡されたスマホで写真の撮影を始める。

ああ、なんて可愛いんだろう。
可愛い妖精に挟まれたハヤトくんは、小さな王子様のようで、とても絵になる。
あまりの可愛さに、私もその写真が欲しくなり、自分のスマホで撮影してしまった。

大満足の桜子ちゃんと薫子ちゃんは「「ミツキお姉ちゃん、式神のハヤトくん、ありがとうー!また後でねー」」と言って手を振りながら去っていった。

さてと、そろそろ私もDブロックへ戻って、第二戦に備えよう。

Dブロック受付で第二戦の詳細を聞いてみた。

第二戦は、三人一組で戦う。
五人が三人に変わっただけで、後のルールは初戦と同じだ。

私の対戦相手は誰かな?
スマホで確認してみると、山城聖子、根岸剛とある。
どんな人たちなんだろう?
五人一組の激戦を勝ち抜いてきたんだから、強いんだろうな。

辺りを見回すと、私のすぐ後ろに人影があった。
びっくりした。
こんなに近くに人がいるなんて思わなかったから。

彼は背が低めで分厚い黒縁眼鏡をかけており、ドラキュラの格好をしている。
こちらを見ては、ニヤニヤと笑う姿が薄気味悪い陰キャくんだ。
うわ、このタイプは苦手。

そう思って見ていると、眼鏡の陰キャくんを誰かが突き飛ばした。

「ちょいと、邪魔だよ!そんな所にボーっと突っ立ってるんじゃないよ。おどき」

かな切り声を上げて捲し立てるのは、白髪を後ろに結いた老女だ。
見た感じは七十歳は超えている。
白い着物姿で迫力がある。

陰キャくんは「ちっ!山城のババァ」と言い、舌打ちをしたけれど、白髪の老女の勢いに押されすごすごと道を開けた。

陰キャくんの言葉から、この白髪の老女が山城聖子さんであることが分かった。

山城さんはせっかちらしく、Dブロック受付へと詰め寄り、受付テーブルをバンバンと叩いて叫んだ。

「役者が揃ったからには、さっさと始めるよ」

「いや、まだお時間ではありませんから···」

「うるさいね。私が決めたからには始めるんだよ」

「えっ?えっ?」

あたふたする受付担当者の言葉を無視して、山城さんはカードをひゅっと投げた。

「式神·山姥やまんば

目の前に現れたのは白髪の老婆の式神。
右手に出刃包丁を持ち、白い着物姿である。
ヒッヒッヒと笑い、こちらをじっと見ている。

最早、どちらが式神かわからないほど、二人は似すぎていて怖い。

山姥はゆっくりと舞台へ上がっていく。

「根岸、式神をお出し。早くするんだよ」

根岸と呼ばれた陰キャくんは、喚く山城さんにたじたじとなりながらカードを投げた。

「式神·旧鼠きゅうそ

現れたのは、体長一メートル近くある大きなネズミの式神だ。
真っ赤な目がギラギラと光り、獲物を探っているようだ。

旧鼠はピギーっと鳴きながら舞台へと上がった。

動物の式神でも、これはちっとも可愛くない!

「祭雅、次は私が行く」

そう言って志願してきたのは、ヤトだ。

「ヤト、何か策があるの?」

「策?いや、そんなものはない。誰が来ようと負ける気がしない」

あらあら、凄い自信だね。
それじゃあ次はヤトに暴れてきてもらいましょうか!

「いいよ、ヤト。次は君が行ってきて!」

ヤトは赤い目を細めほくそ笑むと、舞台へと駆け上がった。
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