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ケジメをつけなきゃ
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しっかり話せば、陽貴先輩はきっと分かってくれると思うから。
それからユズと私は微笑み合い、手を繋いで帰路についた。
夕食をいただいて、私は今部屋にいる。
明日のことを陽貴先輩に伝えなければならない。
電話をしようかと思ったけど、メールで送る事にした。
根掘り葉掘り聞かれそうだからね。
『明日の放課後、時間を下さい』とメールをすれば、すぐに返信が来た。
『わかった。楽しみにしてる』
うわ!マズい、楽しみにされても困る。
私は陽貴先輩とのお付き合いを、断らなければならないのだから。
でも、お互いの為に、正直に話さなければならない。
はぁっと小さくため息をついて、ベッドに入った。
そして、翌日の放課後。
私が帰り支度をしていると、案の定、陽貴先輩は教室まで迎えに来た。
「美結!」
笑顔でやって来た陽貴先輩を見ると、どうにも苦しくてため息が漏れる。
私達は中庭の薔薇のアーチの前までやってきた。
「それで美結、どうだった?」
「陽貴先輩、私、正直に言うね」
私の雰囲気を感じ取ったのか、陽貴先輩は姿勢を正し、表情を固くした。
「美結、言わなくていい」
「ええっ?!どうして?」
「君の顔を見れば分かる。告白、上手く行ったんだろ?」
「なんで分かるの?」
「それは···」
陽貴先輩は目を瞑りうつむいた。
そして、はぁっと吐息を洩らし、私の頭を撫でた。
「美結、好きな子の気持ちぐらい分かる」
「陽貴先輩···ごめんなさい」
私はとても悲しくて、申し訳なくて、ただ謝ることしかできなかった。
「美結···」
陽貴先輩は私の頬に手を添えたかと思うと、ギュッと抱きしめてきた。
「せ、先輩?!」
陽貴先輩は無言のまま、抱きしめる腕に力を込めた。
「ごめん、どうしても割り切れない。このままどこかに連れ去ってしまいたいくらいに、君のことが好きなのに······」
「······」
私は陽貴先輩を傷つけた。
自分の弱さから、陽貴先輩を頼ってしまった。
私は陽貴先輩の胸で泣いてはいけなかったんだ。
余計な期待を持たせたことは、傷をより深くするだけだった。
それでも、このままではお互いのためにならないのは明白だ。
「陽貴先輩。お願い、もう離して」
私の言葉に、ぴくっと反応した陽貴先輩は、本当にゆっくりと私を解放した。
「美結、俺に少しだけ時間をくれないか?そしたら、吹っ切れると思うんだ」
それで陽貴先輩の気が済み、納得出来るのなら、少しだけ付き合おう。
傷つけた、せめてもの償いをしよう。
そう思って、私は返事をした。
「······少しだけなら」
「美結、ありがとう」
陽貴先輩はあからさまにホッとして、私の手を取ると歩きだした。
何処へ行くのだろうか?
学校から出て、結構歩いてきた。
駅前の大きな通り沿いはカップルが多くて、私はなんだかそわそわしてしまう。
陽貴先輩は大通りから逸れて、細い路地裏へ入ってゆく。
一体、どこへ行くつもりなんだろう?
不安が胸をかすめ、私は辺りをキョロキョロと見回した。
薄暗くて、人通りも無いところだ。
なんだか嫌な予感がする。
陽貴先輩は立ち止まった。
「美結」
私の名前を呼び、陽貴先輩は私の顔をじっと見つめる。
「先輩?」
私の呼びかけに、陽貴先輩は答えず、ジリジリと距離を詰めてくる。
私は急に怖くなって、後ずさった。
トンと背中が路地の壁に当たる。
これ、なんかまずいことになってる!
私、こんな所に付いてきちゃいけなかった。
逃げなきゃ。
一刻も早くこの場から逃れようと一歩踏み出すと、すかさず陽貴先輩は壁に手をどんとついた。
「先輩、どうして?」
陽貴先輩は潤んだ瞳で私を見つめ、顔を近づけてくる。
「美結、君が好きなんだ。ユズには女がいるじゃないか、あんな奴は止めておけ」
「陽貴先輩、それは誤解だから」
陽貴先輩は私の言うことを全く聞いていない。
「ユズのことは忘れてもらうから」
そう言って、私の顎に手を添え上を向かせた。
「先輩、いや」
どうしよう、逃げられない。
あれ程小糸ちゃんに言われたのに。
陽貴先輩は諦めないかもって。
その言葉をもっとしっかり胸にとめておくんだった。
軽率な自分の行動が、こんな結果を招いた後悔で、涙が溢れてくる。
ユズ···。
だめだ。
ユズに頼ってばかりではいけない。それに、弱気になって陽貴先輩に流されてもいけない。
私がなんとかしなきゃ。
陽貴先輩の唇が私の唇にふれる間際、私は両手で陽希先輩の口を塞ぎ、キスされるのを防いだ。
「それ以上したら、私、陽貴先輩を嫌いになる」
「えっ?!」
私の言葉に、ビクッと反応した陽貴先輩は、両手を上げて後ずさった。
私はジリジリと陽貴先輩から離れ、走り出した。
「美結、待って」
「追いかけてきたらもっと嫌いになるから」
そう叫ぶと、私は大急ぎでその場を離れた。
呆然とした陽貴先輩はまだ私を追ってこない。
今のうちに逃げなきゃ!
とにかく、私はこの場から一刻も早く離れないとならない。
どこをどのように走ってきたのか、まるでわからない。
息を切らし、肺が痛くなるほどひたすら走った。
ゼイゼイと息を吐きつつ、ようやく落ち着きを取り戻した私は、立ち止まりぐるっと辺りを見回した。
何度も何度も目を凝らしてみるけれど、やっぱりここは見たことのない場所だ。
はあっとため息が漏れる。
言わずとしれた迷子である。
流石に陽貴先輩の気配はない。
それはいいんだけど、また私は帰れなくなってしまった。
日も落ちて、辺りはすっかり暗くなり、不安が胸をよぎる。
それからユズと私は微笑み合い、手を繋いで帰路についた。
夕食をいただいて、私は今部屋にいる。
明日のことを陽貴先輩に伝えなければならない。
電話をしようかと思ったけど、メールで送る事にした。
根掘り葉掘り聞かれそうだからね。
『明日の放課後、時間を下さい』とメールをすれば、すぐに返信が来た。
『わかった。楽しみにしてる』
うわ!マズい、楽しみにされても困る。
私は陽貴先輩とのお付き合いを、断らなければならないのだから。
でも、お互いの為に、正直に話さなければならない。
はぁっと小さくため息をついて、ベッドに入った。
そして、翌日の放課後。
私が帰り支度をしていると、案の定、陽貴先輩は教室まで迎えに来た。
「美結!」
笑顔でやって来た陽貴先輩を見ると、どうにも苦しくてため息が漏れる。
私達は中庭の薔薇のアーチの前までやってきた。
「それで美結、どうだった?」
「陽貴先輩、私、正直に言うね」
私の雰囲気を感じ取ったのか、陽貴先輩は姿勢を正し、表情を固くした。
「美結、言わなくていい」
「ええっ?!どうして?」
「君の顔を見れば分かる。告白、上手く行ったんだろ?」
「なんで分かるの?」
「それは···」
陽貴先輩は目を瞑りうつむいた。
そして、はぁっと吐息を洩らし、私の頭を撫でた。
「美結、好きな子の気持ちぐらい分かる」
「陽貴先輩···ごめんなさい」
私はとても悲しくて、申し訳なくて、ただ謝ることしかできなかった。
「美結···」
陽貴先輩は私の頬に手を添えたかと思うと、ギュッと抱きしめてきた。
「せ、先輩?!」
陽貴先輩は無言のまま、抱きしめる腕に力を込めた。
「ごめん、どうしても割り切れない。このままどこかに連れ去ってしまいたいくらいに、君のことが好きなのに······」
「······」
私は陽貴先輩を傷つけた。
自分の弱さから、陽貴先輩を頼ってしまった。
私は陽貴先輩の胸で泣いてはいけなかったんだ。
余計な期待を持たせたことは、傷をより深くするだけだった。
それでも、このままではお互いのためにならないのは明白だ。
「陽貴先輩。お願い、もう離して」
私の言葉に、ぴくっと反応した陽貴先輩は、本当にゆっくりと私を解放した。
「美結、俺に少しだけ時間をくれないか?そしたら、吹っ切れると思うんだ」
それで陽貴先輩の気が済み、納得出来るのなら、少しだけ付き合おう。
傷つけた、せめてもの償いをしよう。
そう思って、私は返事をした。
「······少しだけなら」
「美結、ありがとう」
陽貴先輩はあからさまにホッとして、私の手を取ると歩きだした。
何処へ行くのだろうか?
学校から出て、結構歩いてきた。
駅前の大きな通り沿いはカップルが多くて、私はなんだかそわそわしてしまう。
陽貴先輩は大通りから逸れて、細い路地裏へ入ってゆく。
一体、どこへ行くつもりなんだろう?
不安が胸をかすめ、私は辺りをキョロキョロと見回した。
薄暗くて、人通りも無いところだ。
なんだか嫌な予感がする。
陽貴先輩は立ち止まった。
「美結」
私の名前を呼び、陽貴先輩は私の顔をじっと見つめる。
「先輩?」
私の呼びかけに、陽貴先輩は答えず、ジリジリと距離を詰めてくる。
私は急に怖くなって、後ずさった。
トンと背中が路地の壁に当たる。
これ、なんかまずいことになってる!
私、こんな所に付いてきちゃいけなかった。
逃げなきゃ。
一刻も早くこの場から逃れようと一歩踏み出すと、すかさず陽貴先輩は壁に手をどんとついた。
「先輩、どうして?」
陽貴先輩は潤んだ瞳で私を見つめ、顔を近づけてくる。
「美結、君が好きなんだ。ユズには女がいるじゃないか、あんな奴は止めておけ」
「陽貴先輩、それは誤解だから」
陽貴先輩は私の言うことを全く聞いていない。
「ユズのことは忘れてもらうから」
そう言って、私の顎に手を添え上を向かせた。
「先輩、いや」
どうしよう、逃げられない。
あれ程小糸ちゃんに言われたのに。
陽貴先輩は諦めないかもって。
その言葉をもっとしっかり胸にとめておくんだった。
軽率な自分の行動が、こんな結果を招いた後悔で、涙が溢れてくる。
ユズ···。
だめだ。
ユズに頼ってばかりではいけない。それに、弱気になって陽貴先輩に流されてもいけない。
私がなんとかしなきゃ。
陽貴先輩の唇が私の唇にふれる間際、私は両手で陽希先輩の口を塞ぎ、キスされるのを防いだ。
「それ以上したら、私、陽貴先輩を嫌いになる」
「えっ?!」
私の言葉に、ビクッと反応した陽貴先輩は、両手を上げて後ずさった。
私はジリジリと陽貴先輩から離れ、走り出した。
「美結、待って」
「追いかけてきたらもっと嫌いになるから」
そう叫ぶと、私は大急ぎでその場を離れた。
呆然とした陽貴先輩はまだ私を追ってこない。
今のうちに逃げなきゃ!
とにかく、私はこの場から一刻も早く離れないとならない。
どこをどのように走ってきたのか、まるでわからない。
息を切らし、肺が痛くなるほどひたすら走った。
ゼイゼイと息を吐きつつ、ようやく落ち着きを取り戻した私は、立ち止まりぐるっと辺りを見回した。
何度も何度も目を凝らしてみるけれど、やっぱりここは見たことのない場所だ。
はあっとため息が漏れる。
言わずとしれた迷子である。
流石に陽貴先輩の気配はない。
それはいいんだけど、また私は帰れなくなってしまった。
日も落ちて、辺りはすっかり暗くなり、不安が胸をよぎる。
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