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勇気を出して
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「大丈夫ってなんのこと?」
ユズは私のおでこに手を当て、私の目を覗き込んだ。
「熱はないな」
「えっ?」
「今日、早退しただろ?具合が悪いのかと思って心配したんだ」
ああ、そのことか。
心配、してくれたんだ。
嬉しいような、苦しいような、妙な感情が心に渦巻くけれど、ここは落ち着かないと。
やっぱり初めから、しっかりと話さなければならない。
「ユズ、付いてきて。話があるの」
「えっ?」
私は返事も聞かずに、ユズの手を取り歩きだした。
店舗のすぐ近くに、公園がある。
普段は親子連れで賑わう公園だけど、流石にこんなに遅い時間では、人影はない。
私は公園の中ほどにユズを引っ張ってきた。
そして彼に向き合うと、すーはーと大きく深呼吸をした。
よし。私、大丈夫よね。
さあ!勇気を出して、伝えよう。
「ユズ」
「美結、改まってどうした?」
「私、どうしても貴方に伝えたいことがあるの」
ユズは驚いた表情で、背筋を伸ばした。
「なんだろう?言ってみて」
「私、今日のお昼、見ちゃったんだ。貴方が彼女と抱き合ってるところを。私、ユズに彼女がいるなんて全然知らなくて、私が近くにいて迷惑だったのかなって思ったら、悲しくて」
「えっ?!!ちょっと待ってくれ!彼女ってなんのこと?彼女なんていないけど」
「ええっ?あの子が彼女じゃないの?でも、抱き合ってたよね」
「お昼の時間のあの子か。俺、名前も知らないんだ。告白されて勝手に抱きついてきたから、その後本気で説教したんだ。俺は好きな子がいるから、彼女を悲しませたくない。勝手な行動を取るなって」
あの子は彼女じゃない!
そうだったの。私すごい勘違いして、随分苦しんで泣いてしまった。
だけど···
あの子が彼女じゃないにしても、ユズには好きな子がいるんだ···。
ズキンっと胸に鈍い痛みが走る。
ああ、心が悲鳴を上げてる。
やっぱり本人の口から聞くのは衝撃が半端ない。
ズキズキする胸を手で押さえ、涙が出そうになるのを必死でこらえる。
私、ショックに耐えられるのだろうか?
だめだめ。弱気になって落ち込んでる場合じゃないよ。
決めたよね。ちゃんと伝えるって。
美結、ガンバレ!
私は拳を握って、口を開いた。
「ユズ、貴方には好きな人がいるのに、私がこんなことを言ったら困らせるかもしれない。でも、正直に言うね」
「う···ん」
「ユズ、私はずっと前から貴方のことが好きです」
ユズは目を見開き、持っていた鞄をバタッと落とした。
しかし、落としたことにも気付かないほど、驚いた表情で、食い入るように私を見ている。
なんの返事もない。
ユズ、困ってるの···?
ああ、やっぱり迷惑だったんだ···。
言うんじゃなかった···。
私はうつむいて、滲んでくる涙をユズに見られないように隠そうとするけれど。
「ごめんね、迷惑だよね。ユズ、今の忘れていいから」
そう言った途端に、涙が一筋私の頬を伝った。
私は踵を返して、急ぎ足で歩き出す。
「待って!」
ユズは私の手首を掴み、後ろから抱きしめてきた。
私は驚きで、心臓が飛び出てしまうんじゃないかと思った。
「忘れる?そんな事できる訳無いだろ?」
「えっ?!」
「美結に好きですって言ってもらえるなんて、俺は夢でも見てるんだろうか?」
私の耳元で囁やくユズの熱い吐息で、背筋がゾクっとし、私は頭のてっぺんからつま先まで痺れてしまった。
「ユズ···」
ユズは私を強く抱きしめ、私の首筋に口づける。
予期せぬ行動に、私の心臓はうるさいくらいに激しく高鳴り、頬は朱に染まる。
「美結、一目惚れって信じる?」
「一目惚れ?」
ユズは抱擁を解くと私の正面にまわる。
私の頬を伝った涙。
ユズはそれを拭いながら、私の目を真っ直ぐに見つめた。
その瞳は熱をはらみ、美しく輝いている。
私はあまりの綺麗さに惹きつけられて、目が離せなくなった。
「初めて逢ったあの瞬間に、恋に落ちたんだ。美結、愛してる」
あ···。愛してる?!
ユズが私を!
「噓?!」
「美結」
ユズは私の髪を優しく指で梳き、ふわりと微笑んだ。
ユズはおでこを私のおでこにくっつけて囁いた。
「噓なんてつかない。俺は美結しか見えないんだ」
そしてゆっくりと重なる唇。
それはとても優しいキスで、甘い薫りと目眩のするような快楽が私の中を駆けめぐった。
ゆっくりと離される唇。
私は閉じていた瞳を開くと、間近にユズの瞳が見える。
お互いの視線は絡み合い、どちらからともなく微笑みあった。
信じられない。
ユズの好きな子って、私の事だった。
こんなにも嬉しくて、こんなにも幸せでいいんだろか?
そして、ユズは私を抱きしめて囁いた。
「美結、俺たち付き合おう」
うわぁ!
ということは、ユズが彼氏?!
嬉しすぎて、涙が出そう。
でも、こんなに喜んでばかりでいいんだろうか?
「あっ!!」
「どうした?」
ユズは私を解放し、何事かと見つめる。
私、幸せすぎてすっかり忘れてた。
陽貴先輩のこと。
玉砕覚悟で告白すると伝えたからには、その結果も報告しないと、陽貴先輩は納得しないはず。
お試しで付き合うことになってたんだ。
一度は告白するから付き合えないと言ってある。
けれど、私が振られるの前提だったから、陽貴先輩は待っているんじゃないだろうか?
「ユズ、私から告白したのにごめんなさい。返事は一日待って貰えないかな?」
「美結、どうして?」
「明日、その理由も全て話すからお願い」
ユズは首を傾げて暫く私を見ていた。
そして、フッと息を吐き私の頭を撫でた。
「わかった。一日待つよ」
陽貴先輩にきちんと断って、ケジメを付けよう。
それからユズに返事をしよう。
明日はバイトも休みだからちょうど良かった。
ユズは私のおでこに手を当て、私の目を覗き込んだ。
「熱はないな」
「えっ?」
「今日、早退しただろ?具合が悪いのかと思って心配したんだ」
ああ、そのことか。
心配、してくれたんだ。
嬉しいような、苦しいような、妙な感情が心に渦巻くけれど、ここは落ち着かないと。
やっぱり初めから、しっかりと話さなければならない。
「ユズ、付いてきて。話があるの」
「えっ?」
私は返事も聞かずに、ユズの手を取り歩きだした。
店舗のすぐ近くに、公園がある。
普段は親子連れで賑わう公園だけど、流石にこんなに遅い時間では、人影はない。
私は公園の中ほどにユズを引っ張ってきた。
そして彼に向き合うと、すーはーと大きく深呼吸をした。
よし。私、大丈夫よね。
さあ!勇気を出して、伝えよう。
「ユズ」
「美結、改まってどうした?」
「私、どうしても貴方に伝えたいことがあるの」
ユズは驚いた表情で、背筋を伸ばした。
「なんだろう?言ってみて」
「私、今日のお昼、見ちゃったんだ。貴方が彼女と抱き合ってるところを。私、ユズに彼女がいるなんて全然知らなくて、私が近くにいて迷惑だったのかなって思ったら、悲しくて」
「えっ?!!ちょっと待ってくれ!彼女ってなんのこと?彼女なんていないけど」
「ええっ?あの子が彼女じゃないの?でも、抱き合ってたよね」
「お昼の時間のあの子か。俺、名前も知らないんだ。告白されて勝手に抱きついてきたから、その後本気で説教したんだ。俺は好きな子がいるから、彼女を悲しませたくない。勝手な行動を取るなって」
あの子は彼女じゃない!
そうだったの。私すごい勘違いして、随分苦しんで泣いてしまった。
だけど···
あの子が彼女じゃないにしても、ユズには好きな子がいるんだ···。
ズキンっと胸に鈍い痛みが走る。
ああ、心が悲鳴を上げてる。
やっぱり本人の口から聞くのは衝撃が半端ない。
ズキズキする胸を手で押さえ、涙が出そうになるのを必死でこらえる。
私、ショックに耐えられるのだろうか?
だめだめ。弱気になって落ち込んでる場合じゃないよ。
決めたよね。ちゃんと伝えるって。
美結、ガンバレ!
私は拳を握って、口を開いた。
「ユズ、貴方には好きな人がいるのに、私がこんなことを言ったら困らせるかもしれない。でも、正直に言うね」
「う···ん」
「ユズ、私はずっと前から貴方のことが好きです」
ユズは目を見開き、持っていた鞄をバタッと落とした。
しかし、落としたことにも気付かないほど、驚いた表情で、食い入るように私を見ている。
なんの返事もない。
ユズ、困ってるの···?
ああ、やっぱり迷惑だったんだ···。
言うんじゃなかった···。
私はうつむいて、滲んでくる涙をユズに見られないように隠そうとするけれど。
「ごめんね、迷惑だよね。ユズ、今の忘れていいから」
そう言った途端に、涙が一筋私の頬を伝った。
私は踵を返して、急ぎ足で歩き出す。
「待って!」
ユズは私の手首を掴み、後ろから抱きしめてきた。
私は驚きで、心臓が飛び出てしまうんじゃないかと思った。
「忘れる?そんな事できる訳無いだろ?」
「えっ?!」
「美結に好きですって言ってもらえるなんて、俺は夢でも見てるんだろうか?」
私の耳元で囁やくユズの熱い吐息で、背筋がゾクっとし、私は頭のてっぺんからつま先まで痺れてしまった。
「ユズ···」
ユズは私を強く抱きしめ、私の首筋に口づける。
予期せぬ行動に、私の心臓はうるさいくらいに激しく高鳴り、頬は朱に染まる。
「美結、一目惚れって信じる?」
「一目惚れ?」
ユズは抱擁を解くと私の正面にまわる。
私の頬を伝った涙。
ユズはそれを拭いながら、私の目を真っ直ぐに見つめた。
その瞳は熱をはらみ、美しく輝いている。
私はあまりの綺麗さに惹きつけられて、目が離せなくなった。
「初めて逢ったあの瞬間に、恋に落ちたんだ。美結、愛してる」
あ···。愛してる?!
ユズが私を!
「噓?!」
「美結」
ユズは私の髪を優しく指で梳き、ふわりと微笑んだ。
ユズはおでこを私のおでこにくっつけて囁いた。
「噓なんてつかない。俺は美結しか見えないんだ」
そしてゆっくりと重なる唇。
それはとても優しいキスで、甘い薫りと目眩のするような快楽が私の中を駆けめぐった。
ゆっくりと離される唇。
私は閉じていた瞳を開くと、間近にユズの瞳が見える。
お互いの視線は絡み合い、どちらからともなく微笑みあった。
信じられない。
ユズの好きな子って、私の事だった。
こんなにも嬉しくて、こんなにも幸せでいいんだろか?
そして、ユズは私を抱きしめて囁いた。
「美結、俺たち付き合おう」
うわぁ!
ということは、ユズが彼氏?!
嬉しすぎて、涙が出そう。
でも、こんなに喜んでばかりでいいんだろうか?
「あっ!!」
「どうした?」
ユズは私を解放し、何事かと見つめる。
私、幸せすぎてすっかり忘れてた。
陽貴先輩のこと。
玉砕覚悟で告白すると伝えたからには、その結果も報告しないと、陽貴先輩は納得しないはず。
お試しで付き合うことになってたんだ。
一度は告白するから付き合えないと言ってある。
けれど、私が振られるの前提だったから、陽貴先輩は待っているんじゃないだろうか?
「ユズ、私から告白したのにごめんなさい。返事は一日待って貰えないかな?」
「美結、どうして?」
「明日、その理由も全て話すからお願い」
ユズは首を傾げて暫く私を見ていた。
そして、フッと息を吐き私の頭を撫でた。
「わかった。一日待つよ」
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明日はバイトも休みだからちょうど良かった。
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