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告白
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そして午前の授業も終わり、その時間がやって来た。
お昼休みだ。
『キーンコーン』とベルが鳴ったと同時くらいに教室のドアが開いた。
教室の中のざわめきが大きくなり、何事かと私も教室の入口を見て驚愕した。
陽貴先輩が入口におり、教室内を見回していた。
まさか、教室まで迎えに来られるとは思いもしなかったから。
そして、私と目が合うと、爽やかにキリっと微笑んだ。
それを見た教室内の女子達は「キャー」と黄色い悲鳴を上げ、私の心臓はドキっとする。
「美結!行こうか」
その声に更にざわめきが増した。
彼に呼ばれた私は、みんなの視線の的になっている。
視線が痛いなんてもんじゃない。
針のむしろのような気さえする。
「美結、頑張って」
小糸ちゃんに送り出されて、私は頷き、陽貴先輩の待つ教室入口へ向かう。
顔は真っ赤になっているはず。
恥ずかし過ぎて、うつむき加減に歩く。
これから断らなければならないと思うと、心は憂鬱に沈む。
「ついてきてくれる?」
「は、はい」
あう、声がひっくり返っちゃったよ。緊張するー。
私は陽貴先輩の後をとぼとぼと歩いていると、先輩は振り返り、「行くよ」と言って私の手首を掴んだ。
陽貴先輩、足速いんだよね。
っていうか、リーチの差かな。
足が長いから、付いていくのがやっとで、小走りになる。
流石に息が切れてきてもう限界だ。
「陽貴先輩、もうちょっとゆっくり歩いて」
ハアハアと大きく息を吐きながら言うと、先輩は「あっ!」と言って立ち止まった。
「ごめん、美結。気が逸って」
それから、私の歩調に合わせてくれたんだけど。
そういえば、ユズはずっと私の歩調に合わせてくれてた。
さり気なく気遣ってくれてたのを、私は気づいていなかったんだ。
ユズは優しい。
ああ、ユズに会いたいな。
···こんな時に何を思ってるんだ、私は。
暫く歩いて、たどり着いた先は薔薇のアーチのある中庭。人影はまばらだ。
陽貴先輩は手を放し、私に向き合った。
「美結、手紙は読んでくれた?」
「は、はい」
「初めて君を見たときから好きなんだ。付き合ってくれないか?」
き、来た!
私は、ぐっと拳を握って気合を入れると、陽貴先輩を見上げた。
「先輩。私、好きな人がいるんです。だから··」
陽貴先輩は驚いた表情をして、私を見た。そして、私の言葉を遮り言った。
「待って。その好きな人とは付き合ってるのか?」
「いえ、付き合ってはいないけれど」
「付き合ってないのか、それなら···」
少しの逡巡の後、陽貴先輩は私の目をしっかりと見つめた。
「あ、あの」
「美結、チャンスをくれないか?」
「えっ?!」
「俺のこと、何も知らないだろ?だから、少しだけお試しで付き合わないか?それから決めても遅くないと思うんだ」
これは、小糸ちゃんの言う通りだ。
陽貴先輩、諦めないつもりなのかも。
ずるずる行ったら、付き合うことになっちゃう。
「陽貴先輩、ごめんなさい。私、付き合えない」
私は頭を下げてそう言うと踵を返し、足早に歩きだした。
「美結、待ってくれ」
私は走った。陽貴先輩が追ってくるのが分かったから。
一刻も早くここから離れたい。
今は凄くユズに会いたい。
暫く走ると、眼前に人影が見えた。
あ、あの後ろ姿はユズだ。
「ユズ!」
私はそう叫んだ。
あ、ダメ。
今、ユズを呼んではいけなかった。
なぜって、誰かと一緒だったから。
私は立ち止まって、両手で口を押さえた。
ユズの影でよく見えないけれど、女生徒と一緒にいるようだ。
やけに周りが静かだ。
「美結!」
陽貴先輩が追いついて、私の肩に手を掛けた。
でも、私の目はユズに釘付けになっていて、動くことができない。
二人は真剣に話していたかと思うと、彼女がユズに抱きついたのが見えた。
「!!」
私は酷く動揺して、目眩がした。
鈍器で頭を殴られたような、そんな衝撃が走った。
どうしよう、声が出ない。
じわじわと胸が締め付けられて、手に震えが走る。
「美結、どうした?」
陽貴先輩にそう問われ、振り返る。
「泣いてるのか?」
はらはらと頬を滑り落ちる涙を拭うこともせず、私の視線はまた、ユズを追う。
「もしかして、美結の好きな人ってユズか?」
コクリと頷く。
今、一体何が起こっているのか、心が苦しすぎて理解ができない。
陽貴先輩は両手を固く握りしめて、眉を上げた。
「あれがユズの彼女···か?」
陽貴先輩の呟きに、びくっと反応してしまう。
あの人はユズの彼女!
ああ、そんな言葉は聞きたくなかったし、そんな事実を知りたくもなかった。
でも、考えなくてはならない。
ユズに彼女がいたなんて知らなかった。
私は馬鹿だ。
何を浮かれていたんだろう。
手を繋がれたから?
ご飯を美味しいと言ってもらえたから?
抱きしめられたから?
彼に優しい言葉をかけてもらって、のぼせ上がっていた。
でも、彼女がいるとわかった今、これ以上彼に迷惑をかけることは出来ない。
ユズにはユズの生活があるんだから。
道も覚えて、何もかも一人でやっていかなきゃならない。
そう自分に言い聞かせるけれど。
ああ、でも力が出ない。
私、これからどうしたらいいの?
「美結、もう泣くな」
陽貴先輩は私の両肩に手を置き、真剣な眼差しで囁いた。
「俺が忘れさせてやるから」
そう言って、私を強く抱きしめた。
私は抵抗することもせず、陽貴先輩の胸で、はらはらと涙を流すことしかできなかった。
お昼休みだ。
『キーンコーン』とベルが鳴ったと同時くらいに教室のドアが開いた。
教室の中のざわめきが大きくなり、何事かと私も教室の入口を見て驚愕した。
陽貴先輩が入口におり、教室内を見回していた。
まさか、教室まで迎えに来られるとは思いもしなかったから。
そして、私と目が合うと、爽やかにキリっと微笑んだ。
それを見た教室内の女子達は「キャー」と黄色い悲鳴を上げ、私の心臓はドキっとする。
「美結!行こうか」
その声に更にざわめきが増した。
彼に呼ばれた私は、みんなの視線の的になっている。
視線が痛いなんてもんじゃない。
針のむしろのような気さえする。
「美結、頑張って」
小糸ちゃんに送り出されて、私は頷き、陽貴先輩の待つ教室入口へ向かう。
顔は真っ赤になっているはず。
恥ずかし過ぎて、うつむき加減に歩く。
これから断らなければならないと思うと、心は憂鬱に沈む。
「ついてきてくれる?」
「は、はい」
あう、声がひっくり返っちゃったよ。緊張するー。
私は陽貴先輩の後をとぼとぼと歩いていると、先輩は振り返り、「行くよ」と言って私の手首を掴んだ。
陽貴先輩、足速いんだよね。
っていうか、リーチの差かな。
足が長いから、付いていくのがやっとで、小走りになる。
流石に息が切れてきてもう限界だ。
「陽貴先輩、もうちょっとゆっくり歩いて」
ハアハアと大きく息を吐きながら言うと、先輩は「あっ!」と言って立ち止まった。
「ごめん、美結。気が逸って」
それから、私の歩調に合わせてくれたんだけど。
そういえば、ユズはずっと私の歩調に合わせてくれてた。
さり気なく気遣ってくれてたのを、私は気づいていなかったんだ。
ユズは優しい。
ああ、ユズに会いたいな。
···こんな時に何を思ってるんだ、私は。
暫く歩いて、たどり着いた先は薔薇のアーチのある中庭。人影はまばらだ。
陽貴先輩は手を放し、私に向き合った。
「美結、手紙は読んでくれた?」
「は、はい」
「初めて君を見たときから好きなんだ。付き合ってくれないか?」
き、来た!
私は、ぐっと拳を握って気合を入れると、陽貴先輩を見上げた。
「先輩。私、好きな人がいるんです。だから··」
陽貴先輩は驚いた表情をして、私を見た。そして、私の言葉を遮り言った。
「待って。その好きな人とは付き合ってるのか?」
「いえ、付き合ってはいないけれど」
「付き合ってないのか、それなら···」
少しの逡巡の後、陽貴先輩は私の目をしっかりと見つめた。
「あ、あの」
「美結、チャンスをくれないか?」
「えっ?!」
「俺のこと、何も知らないだろ?だから、少しだけお試しで付き合わないか?それから決めても遅くないと思うんだ」
これは、小糸ちゃんの言う通りだ。
陽貴先輩、諦めないつもりなのかも。
ずるずる行ったら、付き合うことになっちゃう。
「陽貴先輩、ごめんなさい。私、付き合えない」
私は頭を下げてそう言うと踵を返し、足早に歩きだした。
「美結、待ってくれ」
私は走った。陽貴先輩が追ってくるのが分かったから。
一刻も早くここから離れたい。
今は凄くユズに会いたい。
暫く走ると、眼前に人影が見えた。
あ、あの後ろ姿はユズだ。
「ユズ!」
私はそう叫んだ。
あ、ダメ。
今、ユズを呼んではいけなかった。
なぜって、誰かと一緒だったから。
私は立ち止まって、両手で口を押さえた。
ユズの影でよく見えないけれど、女生徒と一緒にいるようだ。
やけに周りが静かだ。
「美結!」
陽貴先輩が追いついて、私の肩に手を掛けた。
でも、私の目はユズに釘付けになっていて、動くことができない。
二人は真剣に話していたかと思うと、彼女がユズに抱きついたのが見えた。
「!!」
私は酷く動揺して、目眩がした。
鈍器で頭を殴られたような、そんな衝撃が走った。
どうしよう、声が出ない。
じわじわと胸が締め付けられて、手に震えが走る。
「美結、どうした?」
陽貴先輩にそう問われ、振り返る。
「泣いてるのか?」
はらはらと頬を滑り落ちる涙を拭うこともせず、私の視線はまた、ユズを追う。
「もしかして、美結の好きな人ってユズか?」
コクリと頷く。
今、一体何が起こっているのか、心が苦しすぎて理解ができない。
陽貴先輩は両手を固く握りしめて、眉を上げた。
「あれがユズの彼女···か?」
陽貴先輩の呟きに、びくっと反応してしまう。
あの人はユズの彼女!
ああ、そんな言葉は聞きたくなかったし、そんな事実を知りたくもなかった。
でも、考えなくてはならない。
ユズに彼女がいたなんて知らなかった。
私は馬鹿だ。
何を浮かれていたんだろう。
手を繋がれたから?
ご飯を美味しいと言ってもらえたから?
抱きしめられたから?
彼に優しい言葉をかけてもらって、のぼせ上がっていた。
でも、彼女がいるとわかった今、これ以上彼に迷惑をかけることは出来ない。
ユズにはユズの生活があるんだから。
道も覚えて、何もかも一人でやっていかなきゃならない。
そう自分に言い聞かせるけれど。
ああ、でも力が出ない。
私、これからどうしたらいいの?
「美結、もう泣くな」
陽貴先輩は私の両肩に手を置き、真剣な眼差しで囁いた。
「俺が忘れさせてやるから」
そう言って、私を強く抱きしめた。
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