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手紙

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ユズと二人で夕食を食べ、後片付けをしたら、お風呂に入る。

まだまだ日常のペースは掴めていないけど、楽しいんだ。

やっぱり、ユズと仲良くなれたことが大きいんじゃないかな。

ここが自分の居場所で、信頼できる人が近くにいてくれる。
それって凄く嬉しくて、ホッとする。

この穏やかで幸せな日常が、ずっと続いてくれたらなと思えるようになった。

私は自分の部屋に入り、机に向かっているときに、不意に思い出した。

そういえば私、陽貴先輩から手紙を貰っていたよね。
色々あったのですっかり忘れてた。

ゴソゴソと制服のポケットから手紙を取り出して広げた。

えーと、なになに?


桜井美結様

一目あなたを見たその瞬間に、恋に落ちました。

って、

「えええええーー!」

驚きすぎた私は、思わず叫んでしまった。

なにこれ?!

もしかして、これってラブレターというやつじゃないの?!

しかも、付き合って欲しい、明日のお昼休みに返事を下さいと書いてある。

嘘でしょ?
陽貴先輩が私を好き?!
なんでなんで?

私は一気に顔が赤くなり、動揺してしまった。

一体何が起こっているのか、訳がわからない。

私が手紙を握りしめ部屋の中をウロウロしていると、ユズが血相を変えて入ってきた。

「美結、大きな声を出してどうした?」

あう、まずいな。
こんなの誰にも見せられない。

それに、ユズには絶対に知られたくない。

「あ、なんでもないよ」

うぐ、棒読みのセリフになってしまった。

「なんでもない訳ないだろ?」

胡乱な目で見られた。
どう見たって挙動不審だよね、やっぱり。

「ホントに大丈夫だから。ね」

これは一人でゆっくり考えなくては。
だって、好きな人にラブレターの返事の相談なんて死んでもできないでしょ。

部屋から出てもらおうと、「おやすみー」と言ってユズの背中を押した。
でも、ユズは振り返って少し屈み、目線を私と同じにして言った。

「あのな、美結。何を隠してるか知らないけど、全部吐き出したほうが楽だぞ」

だから無理なんだって。
私は困り果てて、眉尻を下げていると、ユズは私の眉間に指を当てて言った。

「なあ、そんなに悩むとシワができる」

「もう!ユズは」

ホント、人の気も知らないで!
目の前で「あはは」と笑っているし。
そんなユズを見ていたら、悩むのが馬鹿らしくなってきた。

私、やっぱりユズのことが大好きなんだ。
イケメンの陽貴先輩から告白されても、その気持ちは変わらない。

明日はきちんと断ろう。

そう決めたら凄く楽になった。

「あ、やっと笑った。俺、美結が笑っていると嬉しいんだ」

えっ?!

「そ、そうなの?」

今絶対に顔が真っ赤になっていると思う。
最近、ユズの行動や言葉に、やたらと反応してしまう。

意識し過ぎかな?

でもね。
ユズが笑っていると私も凄く嬉しくて、二人でずっと笑っていられたらいいなと思う。

「明日も朝早いし、そろそろ休もうか?」

「そうだね。おやすみ」

「おやすみ」

ユズは私の頭をぽんぽんと撫でて、部屋から出ていった。


次の日の朝。

今日も早起きしてご飯の準備と、お弁当の用意をしよう。
でも今日は、ユズまで早く起きてきて、何かと手伝ってくれるんだ。
凄く助かる。
朝食をテーブルにセッティングしてくれたり、お弁当を詰めてくれたり。
これが結構上手くて、元々が器用なんだね。

「美結、この卵焼き味見していい?」

「うん。いいよ」

ユズはぱあっと笑顔になって、卵焼きの端の部分をつまみ、口に放り込んだ。

「ん、旨い」

そう言ってユズはホクホク笑顔になっている。

「ホントに好きなんだね、卵焼き」

「いや、この卵焼きが特別」

「そうなの?ありがとう」

はは、褒めすぎじゃないだろうか。また照れてしまう。

「あ、もうこんな時間!ユズ、早くご飯食べて学校へ行こう」

「ああ」

私達は朝食を食べ、お弁当をそれぞれの鞄に入れ家を出た。

「ねえ、ユズ。私、今日こそは学校までの道を覚える」

そう。昨日はドキドキしすぎて、道を覚えるどころではなかったのだ。

今日こそは!
と、意気込むんだけど。
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