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美結のランチ

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「美結、お昼どこで食べる?」

小糸ちゃんはコンビニの袋を手に持って、私の目の前にいる。

お昼は教室で食べてもいいし、学食を使うのも有りだ。

こんな天気のいいときは外で食べても気持ちがいいかも!

「小糸ちゃん、外で食べよ」

「いいね!それなら中庭の花壇の前に行こうか」

「そうだね。行こう」

お弁当を持って中庭へやってきた。
ここは、薔薇棚や薔薇のアーチがあって、色んな種類の薔薇の美しさと、香りを楽しめる。

私達は長椅子に腰掛けてお弁当を広げる。

小糸ちゃんはコンビニのパンを頬張りながら、私のお弁当をしげしげと見つめ呟いた。

「相変わらず、美味しそうなお弁当。自分で作ってるんだよね?」

「そうだよ。食べてみる?」

「わあ!いいの?」

「どうぞ」

多めに作ったから、いくら食べてもらっても構わないのだ。
小糸ちゃんはエビフライを一つ取って口に入れた。

「ん~~!美味し。美結、見た目だけじゃなくて、ホントに美味しいよ」

「そう?ありがとう」

褒められたら悪い気はしないよね。

「美結の旦那さんになる人は幸せだ」

「あははは、旦那さんて気が早いよ。彼氏だっていないのに」

「そうだよ、なんであんたに彼氏ができないの?かわいいのに。理想が高すぎるんじゃない?」

うっ!
理想は柚希先輩だけど。
確かに柚希先輩だと理想は高すぎるとは思う。
ああ、余計なことを言ったらぼろが出る。
この際、私のことはどうでもいい。
何か話題を変えないと。

「ねえ、今朝言ってたニュースって何なの?」

「そうそう、今度はハル先輩のニュースだよ」

「へえ、今日はユズハルネタが多いね」

「うん!あのねー···ああっ!!ネタ元が歩いてくる!!行かなきゃ」

慌てて駆け出した小糸ちゃんの行先には、陽貴先輩の姿が見えた。
噂をしていたら本人が歩いてきたから、真偽の程を確かめに行ったのだ。

伊達に情報屋をしていない。
あのバイタリティーはすごいと思うよ。
ただ、走り出したら止まらない小糸ちゃんは、ここにはきっと戻って来ない。

私はため息をついて、お弁当を味わって食べた。

長椅子から立ち上がり、ふと視線を感じた。

「美結!」

そう呼ばれ、そちらを見ると柚希先輩がいるではないか。
私が手を振ると、先輩は笑顔でこちらにやって来る。

「先輩、一人でいるの珍しいね」

いつもなら陽貴先輩と一緒にいるから不思議に思った。
柚希先輩は私の隣に来て、長椅子に座った。
私も今立ち上がったばかりだけど、再度長椅子に腰掛けた。

「ハルの奴、人を探してたんだけど、情報屋に捕まってね」

···小糸ちゃんのことだね。
私は苦笑いした。

「情報を提供するかわりに、自分の探し人についての情報をくれと交渉してた」

「へぇ、陽貴先輩もやるね」

「なんだか時間がかかりそうだったから、奴を置いてきたんだ。でも、それ正解だった」

ん?
何が正解なの?
私は首を傾げて先輩の顔を見ると、少し頬を赤らめた先輩は、私から視線を外し咳払いをする。

「そうだ!美結、弁当ありがとう。ご馳走さま」

「あ、美味しかった?」

「ああ。すごく旨かったよ」

「良かったー」

実は、この反応を見るまで結構ドキドキだったりする。
喜んで食べてもらえたからには、明日のお弁当も張り切って作りますか!

「そうそう、先輩は何が好き?お弁当に何が入ってたら嬉しい?」

先輩は思案し、答えた。

「美結の作ってくれるものは何でも美味しいからなあ。強いて言えば卵焼き。あれは是非入れて欲しい」

「うん、わかった」

そっか、先輩は卵焼きが好きなんだ。
今日のは結構上手くできたんだよね。

ホクホクと笑顔でいると、『キーンコーン』とお昼休みの終わりを告げるベルが鳴り響いた。

「そろそろお昼休みが終わるね。先輩、戻ろうか?」
「ああ」

先輩が立ち上がり、手を差し伸べてくれる。
私は笑顔でその手を取り、立ち上がった。
そして、そのまま校舎の入口まで歩いた。
ここで先輩とは行き先が別れる。

「美結、後でね」

先輩は私の頭をぽんぽんと撫で、片手を上げて歩いて行った。

ふわぁぁ!
頭を撫でられてしまった。
ドキドキと心臓が踊ってる。

私はまたしても頬を赤く染め、ぽんぽんと撫でられた頭に手を置いた。

ドキドキはいつまでも治まらない。

私、先輩のこと好きでいてもいいのかな?
なにかを期待してしまう自分と、あまり深入りしちゃだめだと思う自分が、せめぎ合っている。
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