14 / 25
柚希のランチ
しおりを挟む
お昼休みのベルが鳴り、俺は美結の作ってくれた弁当を抱えて立ち上がった。
「ユズ、学食行くんだろ?早く行こーぜ」
「ああ」
今、俺に声をかけてきたのは、親友の大友陽貴。
昨日は、失恋したから死ぬとか大騒ぎしていた割に、今日はケロッとして立ち直っている。
何かあったようだ。
詳しい話を昼にすると言っていた。
まあ、元気になって何よりだとは思うけど、立ち直るのが異様に早くないか?
「ハル、先に席取ってる」
「は?お前今日学食買わんの?」
「ああ」
そう言って俺は手に持った弁当を掲げて見せた。
「へえ、珍しいな。お前が弁当持ってくるなんて初めてじゃないか?」
「そうだな」
俺は席に座り弁当の包みを開いた。
エビフライ、卵焼き、ミートボール、彩りのサラダ、ほうれん草のソテー、根菜のきんぴら、おにぎり。
色とりどりでボリュームもあり、どれも美味しそうだ。
一口、卵焼きを食べる。
予想以上に美味しくて、思わず笑みが溢れる。
「お、エビフライじゃん」
「あ、こら!」
「何これ、すげー旨いんだけど」
陽貴が勝手にエビフライを食べて、感心している。
まあ、旨いのは当たり前だ。なにせ美結が作ったんだから。
陽貴は定食のトレーをテーブルに置くと、俺の前の席に座り、弁当について突っ込んできた。
「これ、誰が作った?絶対にお前の親父じゃないよな」
「まあ、親父じゃないし、俺でもない」
親父は料理好きだが、下手の横好きで腕前は底辺を彷徨っている。
その腕前をよく知る陽貴だから、間違えるはずもない。
「まさか、彼女じゃないよな」
彼女···
そう言われて俺は思わず口籠った。
これはどう説明したら良いものか?
「あの子が彼女だったらいいんだけど」
小さく呟けば、陽貴は驚いた顔をしてまじまじと俺の顔を覗き込んだ。
「おい、まじかよ!」
俺はふうっとため息をついて言った。
「なあ、一目惚れって信じる?」
陽貴は「ぐはっ!」と言って胸を押さえて一瞬のけ反り、目を見開いた。
「お前の口からそんなセリフが出てくるとは!天と地がひっくり返るんじゃなかろうか。今まで誰と付き合ったって、長続きしなかったお前が!一目惚れ?!」
「······」
ああ、やっぱりこんな反応されるよな。
確かに言われた通りだけど。
「誰なんだよ、言ってみろ」
俺は首を横に振った。
「まだ、どうなるかもわからないんだ。それは彼女に直接言ってから報告する」
「何だよそれは」
陽貴はチッと舌打ちをし、不機嫌な顔をした。
そんな顔をしたところで、俺は喋らないからな。
「それより、今日は報告があるんだろ?」
朝から言いたくてウズウズしてるのが丸わかりだったからな。
陽貴は待ってましたとばかりに、前に乗りだした。
「俺が失恋したのは必然だった」
「何だよ、それは」
あれだけ死にたいとか騒いでおいて、必然とは何事なのか?
それに振り回された俺って···。
「まあ、聞けよ。昨日な、ばあちゃんが怪我してさ、女の子が助けてくれたんだ」
「······」
「その子がめちゃ可愛くて、ひと目見て恋に落ちたわけ」
「えっ!お前も一目惚れ?」
陽貴はコクコクと頷いた。
まさか、陽貴まで一目惚れするとは思わなかった。その相手とは、どんな人物なんだろう?
「でも、どこの誰かわからないんだよな。聞いても答えなかったし」
陽貴は腕を組んで考え込んでいるけど、どこの誰か分からなくて良いんだろうか?
「で、今後はどうするんだ?」
「なあ、必然って言っただろ?絶対に近くにいると思うんだよ」
「それって勘?」
「そう!俺の勘は当たるんだよなあ」
ハハハっと高笑いしている陽貴は置いといて、俺は食事を続けることにする。
せっかく美結が作ってくれた料理を、堪能しないでどうする。
そんな俺を横目に、陽貴は定食をあっという間に平らげ、すっくと立ち上がった。
「ユズ、俺はこれからあの子を探しに行く」
「あの子をって、ここでか?」
「そうだ。早く食えよ、置いてくぞ」
何だそれ。どうあっても俺を連れて行く気か!
「ちょっと待てよ。お前探すって言ったって、相手のこと何もわからないんじゃないのか?」
陽貴は首を横に振り言う。
「いや。ばあちゃん情報だとあの子は高校生ってことだ。だから、ここの生徒かもしれないだろ?」
なるほどね。
そういう事なら、失恋を乗り越え前向きに行動する陽貴に、付き合うとしますか。
俺は急いで弁当を食べきり、待ちきれずに先に出た陽貴の後を追った。
「ユズ、学食行くんだろ?早く行こーぜ」
「ああ」
今、俺に声をかけてきたのは、親友の大友陽貴。
昨日は、失恋したから死ぬとか大騒ぎしていた割に、今日はケロッとして立ち直っている。
何かあったようだ。
詳しい話を昼にすると言っていた。
まあ、元気になって何よりだとは思うけど、立ち直るのが異様に早くないか?
「ハル、先に席取ってる」
「は?お前今日学食買わんの?」
「ああ」
そう言って俺は手に持った弁当を掲げて見せた。
「へえ、珍しいな。お前が弁当持ってくるなんて初めてじゃないか?」
「そうだな」
俺は席に座り弁当の包みを開いた。
エビフライ、卵焼き、ミートボール、彩りのサラダ、ほうれん草のソテー、根菜のきんぴら、おにぎり。
色とりどりでボリュームもあり、どれも美味しそうだ。
一口、卵焼きを食べる。
予想以上に美味しくて、思わず笑みが溢れる。
「お、エビフライじゃん」
「あ、こら!」
「何これ、すげー旨いんだけど」
陽貴が勝手にエビフライを食べて、感心している。
まあ、旨いのは当たり前だ。なにせ美結が作ったんだから。
陽貴は定食のトレーをテーブルに置くと、俺の前の席に座り、弁当について突っ込んできた。
「これ、誰が作った?絶対にお前の親父じゃないよな」
「まあ、親父じゃないし、俺でもない」
親父は料理好きだが、下手の横好きで腕前は底辺を彷徨っている。
その腕前をよく知る陽貴だから、間違えるはずもない。
「まさか、彼女じゃないよな」
彼女···
そう言われて俺は思わず口籠った。
これはどう説明したら良いものか?
「あの子が彼女だったらいいんだけど」
小さく呟けば、陽貴は驚いた顔をしてまじまじと俺の顔を覗き込んだ。
「おい、まじかよ!」
俺はふうっとため息をついて言った。
「なあ、一目惚れって信じる?」
陽貴は「ぐはっ!」と言って胸を押さえて一瞬のけ反り、目を見開いた。
「お前の口からそんなセリフが出てくるとは!天と地がひっくり返るんじゃなかろうか。今まで誰と付き合ったって、長続きしなかったお前が!一目惚れ?!」
「······」
ああ、やっぱりこんな反応されるよな。
確かに言われた通りだけど。
「誰なんだよ、言ってみろ」
俺は首を横に振った。
「まだ、どうなるかもわからないんだ。それは彼女に直接言ってから報告する」
「何だよそれは」
陽貴はチッと舌打ちをし、不機嫌な顔をした。
そんな顔をしたところで、俺は喋らないからな。
「それより、今日は報告があるんだろ?」
朝から言いたくてウズウズしてるのが丸わかりだったからな。
陽貴は待ってましたとばかりに、前に乗りだした。
「俺が失恋したのは必然だった」
「何だよ、それは」
あれだけ死にたいとか騒いでおいて、必然とは何事なのか?
それに振り回された俺って···。
「まあ、聞けよ。昨日な、ばあちゃんが怪我してさ、女の子が助けてくれたんだ」
「······」
「その子がめちゃ可愛くて、ひと目見て恋に落ちたわけ」
「えっ!お前も一目惚れ?」
陽貴はコクコクと頷いた。
まさか、陽貴まで一目惚れするとは思わなかった。その相手とは、どんな人物なんだろう?
「でも、どこの誰かわからないんだよな。聞いても答えなかったし」
陽貴は腕を組んで考え込んでいるけど、どこの誰か分からなくて良いんだろうか?
「で、今後はどうするんだ?」
「なあ、必然って言っただろ?絶対に近くにいると思うんだよ」
「それって勘?」
「そう!俺の勘は当たるんだよなあ」
ハハハっと高笑いしている陽貴は置いといて、俺は食事を続けることにする。
せっかく美結が作ってくれた料理を、堪能しないでどうする。
そんな俺を横目に、陽貴は定食をあっという間に平らげ、すっくと立ち上がった。
「ユズ、俺はこれからあの子を探しに行く」
「あの子をって、ここでか?」
「そうだ。早く食えよ、置いてくぞ」
何だそれ。どうあっても俺を連れて行く気か!
「ちょっと待てよ。お前探すって言ったって、相手のこと何もわからないんじゃないのか?」
陽貴は首を横に振り言う。
「いや。ばあちゃん情報だとあの子は高校生ってことだ。だから、ここの生徒かもしれないだろ?」
なるほどね。
そういう事なら、失恋を乗り越え前向きに行動する陽貴に、付き合うとしますか。
俺は急いで弁当を食べきり、待ちきれずに先に出た陽貴の後を追った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる