初恋の先輩が私の義兄になりました。

私の気持ちです

「いやいや、ダメだよ。私、先輩にさんざん迷惑をかけて助けてもらったから。そのお礼はさせてほしい」

先輩は、眉根を寄せて首を振った。

「その気持ちだけ貰っておくよ。これくらいさせてもらわないと、俺の気が済まないから」

「え、でも···」

どうしよう、先輩はどうあっても受け取らないようだ。
しょうがない、今はこれしか思いつかないし。
私は手元にあるプレゼントを目の前に差し出して言った。

「それならこれだけでも受け取って！私の気持ちです」

私は包装してもらったコーヒー豆を、先輩に手渡した。

「これ、俺のために？」

「そうだよ。コーヒーは好きなんだよね？」

「ああ、好きだよ。なんだか、凄く嬉しい」

うわ！
喜んでる。
先輩の少しはにかんだ笑顔を見ていたら、私まで嬉しくなってしまって「えへへ」と笑みが溢れる。

カフェ·シリウスを後にした私達は、日用品のお店に戻り、必要な物を買った。
食材のお店もすぐ近くにあった。これだけ近ければ道も覚えやすいというものだ。
今日からのご飯の準備などで必要になる食材を、多めに買い求めた。
二店舗での買い物は結構な量になってしまった。

「荷物は俺が持つから」

「でもこんなにたくさんあるんだよ。私も持たないと先輩だけが大変になっちゃう」

先輩はかぶりを振ってきっぱりと言った。

「俺は大丈夫だから、美結は道を覚える方に集中して」

そうだった。
私の目的は道をしっかり覚えること。
帰り道は行くときとまた違う。
メモりながらしっかり覚えないと、一人で来ることができない。

「先輩、ごめんなさい。荷物、お願いね」

「うん。任せといて」

申し訳ないなと思いつつも、たくさんの荷物は先輩に持ってもらい、私は道を教えてもらって、メモを取りながら家路についた。

頭はいっぱいいっぱいだけど、なんとか生活できそうで、ホッとする。

家に帰り着いてからも、先輩は私の引っ越しの片付けやら、細々した家事など積極的に手伝ってくれた。

私がこの家に来たばかりの時の事を思えば、先輩はとても良くしてくれる。

本当に感謝しかない。

私に何が返せるのだろうか。
うーん、料理ぐらいしか思いつかないよね、今のところ。
私にできることを頑張ってやっていくしかないな。

そして、あっという間に翌日の朝。

今朝は先輩に学校までの道を教えてもらうのだ。

そんなことで、少し緊張しているのもあって早めに目が覚めてしまった。

朝食と、お弁当を作るには丁度良かったけどね。

今朝のメニューは、ハムエッグとサラダ、チーズトーストにコンソメスープ。
あと、先輩にはコーヒー。
朝のコーヒは目が覚めるんだって。