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味見する?
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「ああ。私、このメニューを家で作ろうと思って、味を覚えていたの。作るのを想像したら楽しくなっちゃった」
「えっ!これ、作れるの?」
「多分、作れるよ」
しばらく先輩は目を丸くして、私のプレートと自分のプレートを交互に見ていた。
そして、自分のプレートを指さした。
「これも、味見する?」
「え、いいの?」
「いいよ、もちろん」
先輩はそう言うと、おもむろに自分のプレートから、カツレツやらキッシュやらを切り分け、私のプレートへと、どんどん入れ始めた。
私は目が点になってその作業を見ていたんだけど、あわわわ、一体どれだけ入れるつもりよ。
「せ、先輩、もうお皿がいっぱい。これ以上入らないよ」
そう。私のお皿はどう見ても許容量を超えている。
先輩は「あっ···」と呟き、少しの間思案したあと、また料理を切り分けた。
そして、フォークに刺して私の口元へと運んだ。
「せ、先輩?」
「はい、どうぞ」
うわああ!
これは俗にいう「はい、あ~ん」ではないか!?
私、「はい、あ~ん」は恋人同士が、もっと甘いシチュエーションでするもんだと想像してた。
でも、これは味見のためのただの試食。
ちっとも甘くはない。
と、自分に言い聞かせる。
だって、ドキドキするでしょ?
そして、ものすごく恥ずかしい。
いいのかな?
断ろうか?でもでも···
と、自問自答しつつ先輩を見ると、なんで食べないの?って表情で、少し首を傾げて微笑んでいる。
あう、先輩。そんな素敵な笑顔で見つめないで下さい。
···わかりました。
これも美味しいご飯を作るためだ。
私は少しだけ涙目になって口を開いた。
今、口に入ったのはエビフライ。
ん~、美味しい。
タルタルソースがたっぷりかかっていて、衣はサクサクで海老はフワフワ。
つい、にんまりとお料理を噛み締めていれば、くすくすと笑う声が聞こえてきた。
「どう、美味しく作れそう?」
は、そうだった。
味見味見!
海老はしっかりと下処理がなされている。
衣は生パン粉を使っている。衣の付き具合も丁度良くて、タルタルソースがよく絡む。
タルタルソースはきゅうりのピクルスと、玉ねぎ、さらにらっきょう漬けのみじん切りが少し入ってアクセントになっている。
うん、これがいい味を出しているんだ。
「大丈夫、作れるよ」
「本当?俺、ここのタルタルソースが好きなんだ。これを再現できたら凄く嬉しい」
「頑張って作ってみるね」
そう言うと、先輩はとても嬉しそうに頷いて、またしてもフォークを差し出した。
「はい、次はこれ」
「ええっ!」
はい、あ~んはまだ続くの?!
うわああ···
もう、やけだ。
こうなったら諦めて食べるしかない。
私は目を瞑って口を開いた。
ん、今度はキッシュ···って、先輩!これ、さっき私のプレートに入れてたよね?
そう思って、私はもぐもぐしながら自分のプレートを指差すけれど。
「まあ、食べなよ」と、相変わらずにこやかに料理を切り分けている。
先輩は自分で食べずに、私に食べさせることを優先しているように見えるのは、気のせいだろうか?
こんなことを何度か繰り返し、ほぼ自分の中でレシピを完成させた。
けれど私は、はい、あ~んですっかりお腹がいっぱいになってしまった。
それでも先輩は私の口元にフォークを運ぶ。
「先輩、もうお腹いっぱい。これ以上食べられないよ」
「あ、残念」
「ええっ?!」
一体何が残念だというのか。
しかも満足げに笑っているんだけど。
そして、私のプレートに残った料理は、全て先輩に食べてもらった。
食後に飲んだコーヒーは、私好みの甘さでとても美味しかった。
お子様飲み物と言われても気にしないのだ。
ところで、先輩は本当にコーヒーが好きらしい。
マンデリンをブラックで飲んで、物凄く感激していた。
これは、お土産に購入して帰ろう!
「先輩、私ここのコーヒー気に入ったんだ。買ってくるから少し待っててね」
「ああ、わかった」
私は一人、席を立った。
カフェのカウンターの並びに、沢山の種類のコーヒーが陳列されている。
大きな瓶に焙煎されたコーヒー豆が入っており、ここで挽いてもらうこともできるし、家にミルがあれば豆のまま購入する事もできる。
気になるコーヒーがあれば、試飲することもできるそうだ。
苦いのが苦手な私は、コーヒーの試飲はもちろん遠慮したい。
先輩が喜んで飲んでいたマンデリンなら間違いないと思い、注文することにした。
それとプラスして、店員さんお勧めのシリウス·ブレンドを購入。
豆を挽いて袋詰めをし、綺麗にラッピングをしてもらった。
そして会計を済ませようとカウンターへ向かう。
ランチとコーヒー豆の代金を一緒に支払う旨を申し出ると店員さんが言った。
「お客様、ランチのお代はお連れ様から頂いております。コーヒー豆の代金のみ頂戴致します」
「えっ!本当ですか?」
「はい」
うわ、大変。
お世話になりっぱなしの私が支払おうと思っていたのに、先輩に支払わせてしまった!
私は慌ててコーヒー豆の代金の支払いを済ませ、振り向くと、いつの間にか私の後ろに先輩が来ていた。
「先輩!ここの支払いは私がするよ。そのつもりで誘ったんだからね」
「美結、そういうのは気にしなくていいから」
「えっ!これ、作れるの?」
「多分、作れるよ」
しばらく先輩は目を丸くして、私のプレートと自分のプレートを交互に見ていた。
そして、自分のプレートを指さした。
「これも、味見する?」
「え、いいの?」
「いいよ、もちろん」
先輩はそう言うと、おもむろに自分のプレートから、カツレツやらキッシュやらを切り分け、私のプレートへと、どんどん入れ始めた。
私は目が点になってその作業を見ていたんだけど、あわわわ、一体どれだけ入れるつもりよ。
「せ、先輩、もうお皿がいっぱい。これ以上入らないよ」
そう。私のお皿はどう見ても許容量を超えている。
先輩は「あっ···」と呟き、少しの間思案したあと、また料理を切り分けた。
そして、フォークに刺して私の口元へと運んだ。
「せ、先輩?」
「はい、どうぞ」
うわああ!
これは俗にいう「はい、あ~ん」ではないか!?
私、「はい、あ~ん」は恋人同士が、もっと甘いシチュエーションでするもんだと想像してた。
でも、これは味見のためのただの試食。
ちっとも甘くはない。
と、自分に言い聞かせる。
だって、ドキドキするでしょ?
そして、ものすごく恥ずかしい。
いいのかな?
断ろうか?でもでも···
と、自問自答しつつ先輩を見ると、なんで食べないの?って表情で、少し首を傾げて微笑んでいる。
あう、先輩。そんな素敵な笑顔で見つめないで下さい。
···わかりました。
これも美味しいご飯を作るためだ。
私は少しだけ涙目になって口を開いた。
今、口に入ったのはエビフライ。
ん~、美味しい。
タルタルソースがたっぷりかかっていて、衣はサクサクで海老はフワフワ。
つい、にんまりとお料理を噛み締めていれば、くすくすと笑う声が聞こえてきた。
「どう、美味しく作れそう?」
は、そうだった。
味見味見!
海老はしっかりと下処理がなされている。
衣は生パン粉を使っている。衣の付き具合も丁度良くて、タルタルソースがよく絡む。
タルタルソースはきゅうりのピクルスと、玉ねぎ、さらにらっきょう漬けのみじん切りが少し入ってアクセントになっている。
うん、これがいい味を出しているんだ。
「大丈夫、作れるよ」
「本当?俺、ここのタルタルソースが好きなんだ。これを再現できたら凄く嬉しい」
「頑張って作ってみるね」
そう言うと、先輩はとても嬉しそうに頷いて、またしてもフォークを差し出した。
「はい、次はこれ」
「ええっ!」
はい、あ~んはまだ続くの?!
うわああ···
もう、やけだ。
こうなったら諦めて食べるしかない。
私は目を瞑って口を開いた。
ん、今度はキッシュ···って、先輩!これ、さっき私のプレートに入れてたよね?
そう思って、私はもぐもぐしながら自分のプレートを指差すけれど。
「まあ、食べなよ」と、相変わらずにこやかに料理を切り分けている。
先輩は自分で食べずに、私に食べさせることを優先しているように見えるのは、気のせいだろうか?
こんなことを何度か繰り返し、ほぼ自分の中でレシピを完成させた。
けれど私は、はい、あ~んですっかりお腹がいっぱいになってしまった。
それでも先輩は私の口元にフォークを運ぶ。
「先輩、もうお腹いっぱい。これ以上食べられないよ」
「あ、残念」
「ええっ?!」
一体何が残念だというのか。
しかも満足げに笑っているんだけど。
そして、私のプレートに残った料理は、全て先輩に食べてもらった。
食後に飲んだコーヒーは、私好みの甘さでとても美味しかった。
お子様飲み物と言われても気にしないのだ。
ところで、先輩は本当にコーヒーが好きらしい。
マンデリンをブラックで飲んで、物凄く感激していた。
これは、お土産に購入して帰ろう!
「先輩、私ここのコーヒー気に入ったんだ。買ってくるから少し待っててね」
「ああ、わかった」
私は一人、席を立った。
カフェのカウンターの並びに、沢山の種類のコーヒーが陳列されている。
大きな瓶に焙煎されたコーヒー豆が入っており、ここで挽いてもらうこともできるし、家にミルがあれば豆のまま購入する事もできる。
気になるコーヒーがあれば、試飲することもできるそうだ。
苦いのが苦手な私は、コーヒーの試飲はもちろん遠慮したい。
先輩が喜んで飲んでいたマンデリンなら間違いないと思い、注文することにした。
それとプラスして、店員さんお勧めのシリウス·ブレンドを購入。
豆を挽いて袋詰めをし、綺麗にラッピングをしてもらった。
そして会計を済ませようとカウンターへ向かう。
ランチとコーヒー豆の代金を一緒に支払う旨を申し出ると店員さんが言った。
「お客様、ランチのお代はお連れ様から頂いております。コーヒー豆の代金のみ頂戴致します」
「えっ!本当ですか?」
「はい」
うわ、大変。
お世話になりっぱなしの私が支払おうと思っていたのに、先輩に支払わせてしまった!
私は慌ててコーヒー豆の代金の支払いを済ませ、振り向くと、いつの間にか私の後ろに先輩が来ていた。
「先輩!ここの支払いは私がするよ。そのつもりで誘ったんだからね」
「美結、そういうのは気にしなくていいから」
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