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二人きり
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なんですか、この放置は。
しかも先輩と仲良くって、どう考えたって無理な話なのに。
母が出掛ける間際に、この家の鍵と生活費を渡してくれた。
だけど呆然としすぎた私は、どうして良いのか分からずにそれをぎゅっと握りしめた。
ああ、ちっとも頭がまとまらない。
この知らない街でどうやって暮らして行けばよいのか。
学校までの道だってわからないんだよ。
食品のお店がどこにあるかだとか、この家の周辺のことも全然わからない。
そして、この家には頼れる人が誰も居ない。
あ、そういえば私追い出されるかもしれないんだ。
今は母もいないし、この状態で追い出されたら、私どうしたらいいの?
行くところなんて、どこにもないんだよ。
いつ、そのことを言い出されるのかわからない。
怖い。
なるべくなら先輩と関わらないように、私は大人しくしているより方法がない。
その時、はたと思い出した。
母のために用意した花束のことを。
すっかり渡すタイミングを逃してしまい、結局私の手元にある可哀想な花束。
これ、生けてあげないと枯れてしまう。
ああ、先輩と話さなきゃならない···。私はため息をついて顔を上げた。
「あの、この花を生けたいんです。花瓶を貸してもらえませんか?」
「花瓶?」
そう言って、先輩は思案しながらあちこち探し回り、やっと花瓶を見つけて渡してくれた。
なにか言われるのではとビクビクしていたけれど、特に何を言われるでもなく、私は胸をなでおろす。
「ありがとうございます」
お礼を言って花瓶を受け取り、どうにかお花を生けることができた。
ピンクのバラやガーベラ、カスミソウなどでまとめられた花はとても綺麗で、私の心を温めてくれる気がした。
「あの、この花瓶、どこに置いたらいいでしょうか?」
「···ここはどう?」
花瓶は玄関脇の広いスペースに置かれた。
良かった。花たちも嬉しそうだ。
「······」
意外と優しかった柚希先輩の態度。
でもそんな先輩を見ていたら、私がこの家に入る前に言っていた言葉が不意に頭をかすめた。
『追い出す、俺が絶対に追い出してやる』
このセリフをいつ言われるのかと思うと、私の胸は締め付けられる。
恐怖が膨れ上がり、この場にいること自体が困難なことに思えてしまった。
「君と話がしたいんだけど、いいかな?」
うわっ!先輩が話し始めた。やばいよ···。聞きなくない。
ああ、これ以上ここにいるのは無理だ。
「ごめんなさい。私、飲み物を買いにコンビニへ行ってきます」
「えっ···」
私は慌てて話を遮り、逃げるように急いで一人外へと飛び出した。
コンビニって、この近くにあるのかな?
そんなこともわからずに、当てずっぽうに歩いてきてしまった。
暗闇の中、街頭の灯りを頼りに歩くけれど、コンビニらしきお店は見当たらない。
ここは住宅街で、ひたすら民家ばかりが続いている。
どこまで歩けばいいのだろうか?
ここはどこなんだろう···。
しかも先輩と仲良くって、どう考えたって無理な話なのに。
母が出掛ける間際に、この家の鍵と生活費を渡してくれた。
だけど呆然としすぎた私は、どうして良いのか分からずにそれをぎゅっと握りしめた。
ああ、ちっとも頭がまとまらない。
この知らない街でどうやって暮らして行けばよいのか。
学校までの道だってわからないんだよ。
食品のお店がどこにあるかだとか、この家の周辺のことも全然わからない。
そして、この家には頼れる人が誰も居ない。
あ、そういえば私追い出されるかもしれないんだ。
今は母もいないし、この状態で追い出されたら、私どうしたらいいの?
行くところなんて、どこにもないんだよ。
いつ、そのことを言い出されるのかわからない。
怖い。
なるべくなら先輩と関わらないように、私は大人しくしているより方法がない。
その時、はたと思い出した。
母のために用意した花束のことを。
すっかり渡すタイミングを逃してしまい、結局私の手元にある可哀想な花束。
これ、生けてあげないと枯れてしまう。
ああ、先輩と話さなきゃならない···。私はため息をついて顔を上げた。
「あの、この花を生けたいんです。花瓶を貸してもらえませんか?」
「花瓶?」
そう言って、先輩は思案しながらあちこち探し回り、やっと花瓶を見つけて渡してくれた。
なにか言われるのではとビクビクしていたけれど、特に何を言われるでもなく、私は胸をなでおろす。
「ありがとうございます」
お礼を言って花瓶を受け取り、どうにかお花を生けることができた。
ピンクのバラやガーベラ、カスミソウなどでまとめられた花はとても綺麗で、私の心を温めてくれる気がした。
「あの、この花瓶、どこに置いたらいいでしょうか?」
「···ここはどう?」
花瓶は玄関脇の広いスペースに置かれた。
良かった。花たちも嬉しそうだ。
「······」
意外と優しかった柚希先輩の態度。
でもそんな先輩を見ていたら、私がこの家に入る前に言っていた言葉が不意に頭をかすめた。
『追い出す、俺が絶対に追い出してやる』
このセリフをいつ言われるのかと思うと、私の胸は締め付けられる。
恐怖が膨れ上がり、この場にいること自体が困難なことに思えてしまった。
「君と話がしたいんだけど、いいかな?」
うわっ!先輩が話し始めた。やばいよ···。聞きなくない。
ああ、これ以上ここにいるのは無理だ。
「ごめんなさい。私、飲み物を買いにコンビニへ行ってきます」
「えっ···」
私は慌てて話を遮り、逃げるように急いで一人外へと飛び出した。
コンビニって、この近くにあるのかな?
そんなこともわからずに、当てずっぽうに歩いてきてしまった。
暗闇の中、街頭の灯りを頼りに歩くけれど、コンビニらしきお店は見当たらない。
ここは住宅街で、ひたすら民家ばかりが続いている。
どこまで歩けばいいのだろうか?
ここはどこなんだろう···。
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