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青銀色のリング
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私とアレクはしばらくの間お互いを見つめて、微笑みあった。
アレクは何かを思い出したように私を開放し、自分の首に手を回しながら囁く。
「ティア、君にこれを」
アレクは自分の首にかけていたペンダントを外し、私の手のひらに載せた。
青銀色に輝くリングがペンダントトップになっており、そのリングには紋章のようなものが刻み込まれている。
こんな色の金属は見たことがなく、そして所々に宝石がはめ込まれ美しく、とても高価なものに見える。
「アレク、これは?」
「ティアに持っていてほしいんだ」
「これ、とても高価なものみたいだけど、いいの?」
アレクは拳を握り、とても真剣な眼差しで言った。
「これを僕と思って持っていてくれる?」
これを受け取ってもいいの?
この紋章ってアレクの家のものじゃないのかな?
いつも首にかけているのをみると、とても大切にしていたリングであることは想像できるけど。
今アレクは【媚薬】の効果で、通常では考えられない行動を取っている可能性がある。
もし、そのために後々後悔するようなことがあってはいけない。
「アレク、一つ聞いていいかな」
「うん、なに?」
「このリングはあなたのとても大切なもののように思うんだけど」
「そうだよ」
やっぱりね。
これは受け取ってはダメなやつだ。
「あのね、私はこのリングをありがとうと簡単に受け取ることはできないの」
「ティア、なぜ?」
アレクはとても悲しい表情をして私を見るけれど、本心はそんな顔の彼は見たくない。
でも、これだけはしっかりと伝えておかなければならない。
「アレク、それを私に渡したらあなたはきっと後悔する」
「そんな事、あるわけがない。僕が君に持っていて欲しいと望んでいるんだ。絶対に後悔なんかしない」
ああ、頑なになってしまった。
なんとか思いとどまらせるにはどうしたらいいんだろう?
······
そうだ、これならば何とかなるかもしれない。
私は自分の首にかけていたペンダントを外し、アレクに差し出した。
「アレク、これを見て」
アレクは手を広げ、私のペンダントを受け取ると、目を凝らしてそれを観察している。
「これは、アクアマリンのティアドロップ?」
「そう。私の生まれたときから大切に持っている涙型の宝石のペンダント。提案なんだけど、アレクのリングとこのティアドロップを一時交換するのはどうかな?」
「それはどういう事?」
「お昼の十二時まで、その時まで交換しよう。その時間になっても、アレクの気持ちが変わらなければそのまま私はアレクのリングを貰う。気が変わっていたら、お互いのペンダントを交換してもとに戻すの。どうかな?」
お昼の十二時には確実に【媚薬】の効果は切れている。
その時であれば、アレクは正常な判断ができるはずだ。
「ティア、なぜ君がそんな提案をするのかわからないけど、君がそうしたいのなら従うよ」
良かった。
これでアレクの負担にならずに済む。
私は安堵の吐息をついた。
「でもね、覚えておいて。僕はこのリングを君に持っていて欲しい。たとえ槍が降ろうが、太陽が西から昇ろうが、その気持ちは変わらない。絶対に」
とても強気な言葉を紡ぐアレクに少し驚いた。
先のことがどうなるかなんてわからないけど、本当にそうならいいなと思うよ。
「ところでこのティアドロップ、十二時過ぎたら僕が貰っても大丈夫なの?」
「もちろん。それが私だと思って大切にしてくれるならね」
アレクはふわっと笑い「当たり前だろ!」と言って、とても大事そうにティアドロップのペンダントを自分の首にかけた。
私はなんだかくすぐったく感じ、慌てて目を逸らして自分もアレクのペンダントを首にかけた。
アレクは何かを思い出したように私を開放し、自分の首に手を回しながら囁く。
「ティア、君にこれを」
アレクは自分の首にかけていたペンダントを外し、私の手のひらに載せた。
青銀色に輝くリングがペンダントトップになっており、そのリングには紋章のようなものが刻み込まれている。
こんな色の金属は見たことがなく、そして所々に宝石がはめ込まれ美しく、とても高価なものに見える。
「アレク、これは?」
「ティアに持っていてほしいんだ」
「これ、とても高価なものみたいだけど、いいの?」
アレクは拳を握り、とても真剣な眼差しで言った。
「これを僕と思って持っていてくれる?」
これを受け取ってもいいの?
この紋章ってアレクの家のものじゃないのかな?
いつも首にかけているのをみると、とても大切にしていたリングであることは想像できるけど。
今アレクは【媚薬】の効果で、通常では考えられない行動を取っている可能性がある。
もし、そのために後々後悔するようなことがあってはいけない。
「アレク、一つ聞いていいかな」
「うん、なに?」
「このリングはあなたのとても大切なもののように思うんだけど」
「そうだよ」
やっぱりね。
これは受け取ってはダメなやつだ。
「あのね、私はこのリングをありがとうと簡単に受け取ることはできないの」
「ティア、なぜ?」
アレクはとても悲しい表情をして私を見るけれど、本心はそんな顔の彼は見たくない。
でも、これだけはしっかりと伝えておかなければならない。
「アレク、それを私に渡したらあなたはきっと後悔する」
「そんな事、あるわけがない。僕が君に持っていて欲しいと望んでいるんだ。絶対に後悔なんかしない」
ああ、頑なになってしまった。
なんとか思いとどまらせるにはどうしたらいいんだろう?
······
そうだ、これならば何とかなるかもしれない。
私は自分の首にかけていたペンダントを外し、アレクに差し出した。
「アレク、これを見て」
アレクは手を広げ、私のペンダントを受け取ると、目を凝らしてそれを観察している。
「これは、アクアマリンのティアドロップ?」
「そう。私の生まれたときから大切に持っている涙型の宝石のペンダント。提案なんだけど、アレクのリングとこのティアドロップを一時交換するのはどうかな?」
「それはどういう事?」
「お昼の十二時まで、その時まで交換しよう。その時間になっても、アレクの気持ちが変わらなければそのまま私はアレクのリングを貰う。気が変わっていたら、お互いのペンダントを交換してもとに戻すの。どうかな?」
お昼の十二時には確実に【媚薬】の効果は切れている。
その時であれば、アレクは正常な判断ができるはずだ。
「ティア、なぜ君がそんな提案をするのかわからないけど、君がそうしたいのなら従うよ」
良かった。
これでアレクの負担にならずに済む。
私は安堵の吐息をついた。
「でもね、覚えておいて。僕はこのリングを君に持っていて欲しい。たとえ槍が降ろうが、太陽が西から昇ろうが、その気持ちは変わらない。絶対に」
とても強気な言葉を紡ぐアレクに少し驚いた。
先のことがどうなるかなんてわからないけど、本当にそうならいいなと思うよ。
「ところでこのティアドロップ、十二時過ぎたら僕が貰っても大丈夫なの?」
「もちろん。それが私だと思って大切にしてくれるならね」
アレクはふわっと笑い「当たり前だろ!」と言って、とても大事そうにティアドロップのペンダントを自分の首にかけた。
私はなんだかくすぐったく感じ、慌てて目を逸らして自分もアレクのペンダントを首にかけた。
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