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第4話 権利と義務

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 二人の探索者には絶望しか無かった。
 物資不足の為、武器などは持っていない。

 しかし、後ろに背負っている物資を見捨てる訳にもいかない。

 異形に見つかる事は、死を意味した。
 ここから逃げ切るのは、おそらく不可能だ。

 辺りに、異形が居なければ何とかなったかも知れない。
 しかし、ここは異形の町。

 居ない訳が無く、二人の探索者は異形達に囲まれた。
 ここからの脱出は絶望的である。

 探索者達は、自らが犠牲となる覚悟を決めた。
 もともと、いずれは来ると思っていた未来だからだ。

 権利には、義務が付随する。 

 探索者としての権利は、少し多く物資がもらえる。
 という、とても小さな権利だ。

 しかし、どれだけ小さな権利であろうとも義務は発生する。
 地下の皆の為に、命を懸けて物資を集める必要があるのだ。 

 探索者として、名乗り出た以上いずれ訪れる未来だったのかも知れない。 
 
 「おい!!」
 「ここは俺が食い止めるから、お前だけでも先に逃げろ。」
 
 「物資を持って逃げろ!!」

 しかし、探索者達には諦められない理由があった。
 地下には、待ってくれている仲間がいる。

 義務を果たす必要がある。

 ここで、二人とも倒れたら誰がここにある物資を届けられる?

 届けられる人は、誰もいない。
 ここで共倒れになる訳にはいかない。

 もう、地下は限界だ。
 ここにある僅かな物資があっても、何も変わら無いかもしれない。

 だが、諦めて良い理由にはならない。
 
 「先輩!!」
 「あなたが逃げてください。」

 「あなたの方が経験がある。」
 「逃げられる可能性があなたの方が高いはずです。」

 探索者達は、犠牲になる覚悟ができていた。
 そして、信頼があった。

 もし、ここで己が倒れても絶対に届けてくれる。
 
 「先輩?」

 探索者の一人は、背負っていた物資を降ろし後輩の方に渡した。

 「お前の方が若い。」
 「犠牲になるのなら、俺の方がよっぽど良い。」

 「先輩命令だ。」
 「先に行け。」

 「地下の奴らを助けろ。」
 「そして、いつか来る反抗の時を待て。」

 そうして、少し笑い後輩の方を見た。

 「それじゃあ、行ってくるわ。」
 「奴らが、俺を喰っている間にとっとと逃げろよ。」

 「もう、本当に時間が無いんだ。」
 「笑え!!」

 「どんな時でも、笑いを欠かすな。」
 「それが、俺の最後のアドバイスだ。」

 「じゃあな。」
 「行ってこい。」

 そうして、後輩の背を押した。
 
 後輩は、押された勢いで走り出した。
 逃げ出せるかどうかは運命だけが知っている。

 「うおぉぉぉぉ!!!!!!」

 その背後では、先輩が無手で駆けだした。

 これは、ありふれた不幸だ。
 探索者にとっては、よくある事だ。

 一人の探索者が新たなる人類の為に死んだ。
 これだけが、後世に残った彼の偉業である。 
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