魔王、勇者を倒しちゃったんだけど、その後転生した先で好きになっちゃいました。

kinoko-kino

文字の大きさ
上 下
14 / 16

第14話 馬とかけっこう上手に乗れる魔王

しおりを挟む
「エイリス様、馬に乗るのが上手なんですね」
と、隣でオーエンが少し意外そうな顔で言った。
「これでも、戦場で何があるかわからないから、何でも訓練していたのよ」

エイリスは、馬も汚いと言って乗馬はしなかったようだが、この体は実はかなり運動神経がいい。
私が転生してから少し練習したらすぐにコツをつかんで乗れるようになった。

「…ところで…、どこへ行くのですか?」
と、オーエンは言った。

私は、詳しく話をしないままオーエンを連れてきたのだ。
時間もなかったし、その中で話をしたことで、もし誰かに聞かれていたら…と、少し不安だったからだ。
レイモンド家から3時間ほど馬で走った。

だいたい40キロくらいは走ったかな?
そろそろ休憩をしながら、話をしようか…。

私は、オーエンの問いかけに少し迷いながらも、彼に真実を伝える決意をした。
馬をゆっくりと止め、近くの木陰に馬を繋いだ。
私は深呼吸をして、オーエンの方を向いた。
「ここで少し休憩しましょう」
オーエンは頷き、私の隣に座った。静かな森の中、夜の静けさが私たちを包み込んでいた。
「オーエン、今から話すことは絶対に誰にも話してはだめ。あなたを信じて話すわね」
私の言葉に、オーエンは真剣な表情で耳を傾けた。

「実は、私たちが探しているのは『フェニックスの涙』という魔王の神器よ」
オーエンの目が驚きに見開かれた。
「魔王の神器…?それは一体…?」
私は、フェニックスの涙がどれだけ重要であるか、そしてそれがどれだけ危険なものであるかを説明した。
「フェニックスの涙は、死者を蘇らせる力を持つ神器なの。その力が人間の手に渡れば、さらなる争いの火種になるわ。だから、私はそれを探し出し、守らなければならないの」
オーエンは私の話を真剣に聞きながら、静かに頷いた。

「それで、エイリス様はその場所を知っているのですか?」

知っているんだけど…。

知っているのはおかしいので誤魔化す。

「…確かな場所はわからないけれど、お母様が夢の中で私にヒントを与えてくれたの。草原の中にある砂漠。…地図を見て、その場所を特定してみたの。…確実ではないけれど、行ってみる価値があるかもって…」
オーエンは再び頷いたが、
「エイリス様って、不思議な人ですね。治療魔法を使えるだけで特殊なのに…、いろんな力を持ってる…。魂と交信できるなんて、それはネクロマンサーの力に似てますね」
オーエンが私をじっと見つめてくるので、なぜだかドキドキしてしまう。

魂と交信は嘘だけどな。

「治療魔法が使えるから、防御魔法を使えるのは珍しいことではないけど、…エイリス様、他の属性の魔法も使えますよね?」
と、オーエンが珍しく私に質問しまくる。
「え、ええ。少しは。力は弱いけれどね…」
私は、少し居心地が悪くなりながらも答えたが、
「それって、どんなにすごいことかわかっていますか?レイモンド伯爵も気づいてないみたいだから言わなかったけど、この世界にそんなことできる人、他にいないと思いますよ」

え?
そうなの!?
人間にも魔法が使える者がけっこういるから、色んな属性を使える人間もいると思っていた。
たくさん本を読み漁ったが、魔法の属性に書かれているだけで、そんなことは書いていなかった…。
…そうか。
あるわけないから書いていないのか…。

「…他の魔法はあまり威力がないから、使えないと思っていたけど、そんなに特殊な事だとは思わなかった…。オーエンはどうして気が付いたの?他の誰も気づいていないと思うけど…」
オーエンはため息をついて、
「他の人に、知られないようにしてくださいね。もし知られたら、多分皇室に連れて行かれて調べられますよ。私は炎の属性だから、エイリス様がこの間誘拐された時に使った、火の魔法の痕跡に気が付いたんです」
と言った。
「私は魔力の性能がいいようなのでわかるようです。だから他の人にはバレていません。いまのところ」

属性同士でそんなこともわかるのか!!
オーエンすごいな…!!
それにしても、そんなに特殊な力だと色々な方面から注目されそうで、確かにバレると不自由しそうだ。

「ありがとう。オーエン。私、知らない事多くて。また何かあったら教えてね」
私は、横にいるオーエンを見つめて微笑んだ。
オーエンは、静かに頷いて向こうを向いてしまった。
私はふとオーエンの頭をなでたくなって、手を伸ばした。

パシッ。

ふいにオーエンに手首を掴まれ、私はびっくりしてしまった。

「…あっ…。すみません!!何か落ちてきたのかと思って…」
と、オーエンはすぐに手を放して謝ったが、
「…って、何をしようとしてたんです…?」
少し拗ねたような顔で言って、私を見る。

「私、オーエンの頭をなでるのが好きなの!」
私は、手を掴まれたことが少し恥ずかしくなって、それを隠すために怒ったように言った。
「好きって…」
オーエンは顔を赤くして、はぁ…と深くため息をついてから、私の方に姿勢を低くしてくれた。

なでていいってことだな!!

「ふふっ。オーエンって、猫みたいね」
と、私が思わず言うと、
「…はい?」
不服そうなオーエン。
「…もうそろそろ、いいですか?」
10分くらい頭をなでていると、オーエンはさすがに苦情を漏らした。
「オーエンって、ちょっと猫っ毛で、小さい時からふわふわが変わらないね。癒される」
私が満足気に言うと、
「私もやってみてもいいですか…?エイリス様の頭なでてみたいです」
唐突に、オーエンにそう言われて固まる私。

え…?
その展開は予想してない…!!
それは、少しドキドキしてしまうし、絶対恥ずかしい!!

私が思考停止していると、
「ジョーダンです!」
オーエンは笑って立ち上がった。
「わ、私は触る専門だからね!」
と言うと、オーエンは、はいはいと言いながら、食事の支度を始めた。
アリアをカゴに入れたままだと思い出し、解放してやると、気持ちよさそうに飛び回っていた。
オーエンは手際よく、小川から水を汲み、山にある薬草を採ってスープを作ってくれた。
調味料も持ってきているようで、何やら味付けもしてくれている。

私はそんなオーエンを見ているだけで、幸せな気持ちになった。
オーエンが作ってくれたスープを飲みながら、私もずっと思っていた事をオーエンに言った。

「オーエン。オーエンは私の事を不思議な人って言ったけど、私はあなたの方が不思議。…奴隷だったのに、貴族みたいだなって思う事があるの」
私の言葉を聞いて、一瞬オーエンの動きが止まったが、
「…何言ってるんですか。私は生粋の奴隷ですよ」
と言った。

生粋の奴隷って、なんか変な言葉だな。
オーエンって、話す言葉が貴族っぽいと思う事が、以前からあった。
それに、武術の身のこなしが、他の奴隷とはまったく違っていたのだ。
そして、もう一つ。
人と関わるのがうまい。
無口だし、話し上手なわけでもないのに、レイモンド家の使用人、騎士団の人間、そして、レイモンド伯爵にまですぐに気に入られた。
戦争中も、自分よりも身分が下の者への指示の出し方などを見ていても、今まで迫害を受けてきた者のそれではないのだ。

兵士達は、自分よりも若いオーエンに付き従っていた。
それが当たり前だというように。

もしかすると、元は貴族だったりしたのかな。
この戦乱の中では、そういう事も珍しくないのかもしれない。
「ま、話したくないならいいけど…。でも、いつか話したくなったり、苦しくなったら…、私を頼ってね」
私はそれだけ言って、もうそれ以上何も言わなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

処理中です...