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霊術士、夜桜 幸糸
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俺は、自身の腰に差さっている刀に手をかける。
最初に感じたのは二つ。
一つは、久しぶりに持ったなという感想。
俺がヒラバナの型を習得しているのだから、当たり前に刀を握っていた。
だが、しだいに刀を持つことは減って、今となっては”倶露渡”と”運命糸”だけで十分だった。
もう一つは、自身が持っていた刀と持った感覚が違うことからの違和感。
俺が使っていた刀はオーダーメイドで作られたものだったため、透禍の刀と重さや性質が異なっていた。
まぁ、戦うのに支障はないな。
「その姿を見るのも久しいな」
「まさか、また着ることになるとは思わなかったがな」
この恰好は昔の俺が着ていた服装だ。
黒を主張としたスーツは、夜に包まれる魔界では、自身の存在をより薄くしていた。
スーツをカッコイイと思うが、さすがに戦闘の場所で着るような物ではないと思っている。
ならなぜ、この服を着るのか。理由は”倶旅渡”と同じっていうことと、昔の俺がいた場所での決め事だったから。
ちら、と見れば透禍は俺とクラウスの話が何を言っているのか気になっているようだった。
相変わらず、こういった自身が知らないことについて興味津々だな。
「透禍」
「な、なに?」
「これが終わったら、全てを話そう。特別授業の時の疑問の答えを」
「え、本当に!?」
「あぁ」
「もしかしてこれって...」
「うん、死亡フラグだよね...」
俺は透禍とあの時の答えを話そうと約束をする。
今までの俺だったら、話せなかったこと。やっと、前を向けた俺だからこそ話せることを。
その隣ではなにやら不穏な話をしているが...。
「俺の前でそんな話をするとは、かなり自信があるようだな」
「当然」
「”魔装”をした俺に勝つ、か。舐められたものだなっ!」
クラウスは即座にいくつもの魔術を放つ。
火、水、氷、土、その他さまざまな元素を持った攻撃が俺に目掛けて一直線に飛来してくる。
俺が刀を持った理由。
術士は扱う術と武器で一つ。俺が扱う術は”運命”で、武器は”糸”。これは変わらない。
そんな俺が刀を持っても、”運命”と刀の術は発動しない。ただの人間が刀を持っただけ。非術士と同じだ。
だが、精霊の力を顕現させた俺が持つと、それは術士以上、術士が使う力を生み出す精霊が扱う自然現象である”天災”となる。
俺は刀を鞘から抜き、上段に構える。
「”万廻花”」
俺が刀を振るうと、剣先から術が飛ぶ。
術は飛来してくる魔術を全て消し去り、クラウスに当たり、飛び散る。
だが、クラウス自身には一切のダメージが入らずに術は終わる。
「なるほどね。やっぱり前よりは”魔装”の性能も上がったみたいだな」
「当然。そんなものではもうやられんよ」
以前戦った時のよりも”魔装”は強力になっており、以前通った攻撃の一つ、”万廻花”が全く通らなかった。
これは時間がかかるな。
あぁ~、面倒だ。早く帰りたいな~。
「な、なんで。幸糸、どうしてあなたが私の術を使えるのよ!?」
「あ~」
あ~、やっぱり。その質問も来ますよね~。
クラウスがいくつもの元素を扱えるのは、元からの体質と、世界の理を覆す力を持っていたから。
それと同じように、精霊の力を持っている俺は、全ての術を扱うことができる。
術を発動するためには、血筋と意志が必要だ。その理由は精霊に己とその術に適した霊力を貰うため。
血筋は精霊と関わる条件。意志は精霊にどんな力が必要かを提示するための証明。
だから、血筋と意志がなければ術士にはなれない。術を発動するのに必要な霊力を作るのは精霊だから。
俺は精霊の力を持っているため、自身で霊力を作れる。ならば、己と術にあった霊力を自身で作ってしまえば、他人の術を使うことだって出来る。
これは、その結果だ。
「その話も帰ったらするさ。今はさっき言ったことをしてろ」
「う、うん」
クラウスを倒すための鍵は透禍だ。
彼女の力がなければ、無限の霊力。全ての術を扱える。負った傷を消せる。などのアドバンテージはクラウスにとって意味をなさない。
「なんだ、小細工に頼らなければ俺に勝てないか?」
「まぁ、そうだな」
「あっさり認めるな」
「確かにお前は強い。だが、勝てない相手ではないってことだよ」
「屁理屈を」
クラウスはまたも魔術を飛ばしてくる。
俺は刀を持ち直し、片手で持ち、全速力と、”運命糸”で体を引っ張ることでクラウスへと迫る。
魔術は適格に俺へと追従し、避けることはできない。刀を右へ左へと振り、魔術を一つ一つ切り落としていく。
クラウスに至近距離まで詰めると、刀を下から上へと切り上げる。
だが、攻撃は通じない。魔術以外の攻撃防御強化。この効果がクラウスへの攻撃を完全に弾き飛ばす。
「ならば!」
俺は折角詰めた距離を離す。
「”天花万象”」
”天花万象”で俺は刀を強化する。
「させん」
「それはこっちもだ!」
クラウスが、俺が刀に霊力を溜めることをさせないように魔術を飛ばす。
だが、その邪魔はさせないと、紅璃と七星がそれを妨害する。
辺りの霊力は活性化していないもの、俺が作った霊力に置き代わっているため、二人も術を使えるようになった。
霊力を作るのは俺だから、実際は俺の割くリソースも持ってかれているが、魔術が飛んでくるよりはマシだ。
「”弓火”」
「”氷下気”」
紅璃は水と氷の魔術を火の矢で撃ち落とす。
七星は火と土の魔術を温度を下げて消し去る。
その間に俺の術は完成する。
「”糸地転々”」
俺は”糸地転々”の中に入り、クラウスの真上に開けた穴から飛び出す。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
ドォンッ!
霊力をありったけ込めた一撃を放つ。
辺りは土煙で覆われる。俺は自身の羽でそれを散り飛ばす。
土煙の中には、右腕が落とされたクラウスが立っていた。
「やはり、その術は強力だな」
「本当なら、放った相手が塵一つ残らないんだがな」
クラウスは瞬時に傷を消し去る。この力がある限り、俺もクラウスも倒すことはできない。
ただ、俺たちの力は完全ではない。この力が消せるのは現実に実体があるものだけ。
人を構成する三つの身体と魂と意識。この内の魂と意識に負わさされた傷はこの力では消せない。
「クラウスのバカ!あほ!まぬけ!」
「...大丈夫か?」
「正常そのものだよ」
意識、つまるところ精神のこと。
俺はクラウスの精神を攻撃してみたのだが、のーだめーじ。
そりゃそうだろうけども。
残るは魂に傷を負わせること。そのためには、透禍の力が必要だ。
だから、そのための時間を作ってあげなければならない。
「はぁ、まぁしょうがないな。...もう少し遊ぼうか」
「...断ったら?」
「遊びじゃなくて、説教になるけど?」
「分かった。なら、遊ぶとするか」
「相変わらずよく分からん奴だな」
「怒られるのは相手が自分よりも格上の時に起こるが、遊び相手は対等だからな」
「そんなとこかよ」
要は、自分が俺よりも下に見られたくないってことか。
なら、そうだな。俺とお前ではなにもかもが鏡のように反対だが、写し鏡のようにまったく同じ存在だ。
そういう意味では、俺たちは対等だろうな。
「ヒラバナ流刀術」
「”魔装”解放」
俺は刀を持つ腕を後ろに下げ、地面と平行に寝かせ、腰を下げる。刀の切っ先はクラウスに伸ばされ。
クラウスは”魔装”から生み出された魔力できた剣を両手で肩に担ぐようにして構える。
カキンッ!
俺たちは刃を以てして戦いを続ける。
最初に感じたのは二つ。
一つは、久しぶりに持ったなという感想。
俺がヒラバナの型を習得しているのだから、当たり前に刀を握っていた。
だが、しだいに刀を持つことは減って、今となっては”倶露渡”と”運命糸”だけで十分だった。
もう一つは、自身が持っていた刀と持った感覚が違うことからの違和感。
俺が使っていた刀はオーダーメイドで作られたものだったため、透禍の刀と重さや性質が異なっていた。
まぁ、戦うのに支障はないな。
「その姿を見るのも久しいな」
「まさか、また着ることになるとは思わなかったがな」
この恰好は昔の俺が着ていた服装だ。
黒を主張としたスーツは、夜に包まれる魔界では、自身の存在をより薄くしていた。
スーツをカッコイイと思うが、さすがに戦闘の場所で着るような物ではないと思っている。
ならなぜ、この服を着るのか。理由は”倶旅渡”と同じっていうことと、昔の俺がいた場所での決め事だったから。
ちら、と見れば透禍は俺とクラウスの話が何を言っているのか気になっているようだった。
相変わらず、こういった自身が知らないことについて興味津々だな。
「透禍」
「な、なに?」
「これが終わったら、全てを話そう。特別授業の時の疑問の答えを」
「え、本当に!?」
「あぁ」
「もしかしてこれって...」
「うん、死亡フラグだよね...」
俺は透禍とあの時の答えを話そうと約束をする。
今までの俺だったら、話せなかったこと。やっと、前を向けた俺だからこそ話せることを。
その隣ではなにやら不穏な話をしているが...。
「俺の前でそんな話をするとは、かなり自信があるようだな」
「当然」
「”魔装”をした俺に勝つ、か。舐められたものだなっ!」
クラウスは即座にいくつもの魔術を放つ。
火、水、氷、土、その他さまざまな元素を持った攻撃が俺に目掛けて一直線に飛来してくる。
俺が刀を持った理由。
術士は扱う術と武器で一つ。俺が扱う術は”運命”で、武器は”糸”。これは変わらない。
そんな俺が刀を持っても、”運命”と刀の術は発動しない。ただの人間が刀を持っただけ。非術士と同じだ。
だが、精霊の力を顕現させた俺が持つと、それは術士以上、術士が使う力を生み出す精霊が扱う自然現象である”天災”となる。
俺は刀を鞘から抜き、上段に構える。
「”万廻花”」
俺が刀を振るうと、剣先から術が飛ぶ。
術は飛来してくる魔術を全て消し去り、クラウスに当たり、飛び散る。
だが、クラウス自身には一切のダメージが入らずに術は終わる。
「なるほどね。やっぱり前よりは”魔装”の性能も上がったみたいだな」
「当然。そんなものではもうやられんよ」
以前戦った時のよりも”魔装”は強力になっており、以前通った攻撃の一つ、”万廻花”が全く通らなかった。
これは時間がかかるな。
あぁ~、面倒だ。早く帰りたいな~。
「な、なんで。幸糸、どうしてあなたが私の術を使えるのよ!?」
「あ~」
あ~、やっぱり。その質問も来ますよね~。
クラウスがいくつもの元素を扱えるのは、元からの体質と、世界の理を覆す力を持っていたから。
それと同じように、精霊の力を持っている俺は、全ての術を扱うことができる。
術を発動するためには、血筋と意志が必要だ。その理由は精霊に己とその術に適した霊力を貰うため。
血筋は精霊と関わる条件。意志は精霊にどんな力が必要かを提示するための証明。
だから、血筋と意志がなければ術士にはなれない。術を発動するのに必要な霊力を作るのは精霊だから。
俺は精霊の力を持っているため、自身で霊力を作れる。ならば、己と術にあった霊力を自身で作ってしまえば、他人の術を使うことだって出来る。
これは、その結果だ。
「その話も帰ったらするさ。今はさっき言ったことをしてろ」
「う、うん」
クラウスを倒すための鍵は透禍だ。
彼女の力がなければ、無限の霊力。全ての術を扱える。負った傷を消せる。などのアドバンテージはクラウスにとって意味をなさない。
「なんだ、小細工に頼らなければ俺に勝てないか?」
「まぁ、そうだな」
「あっさり認めるな」
「確かにお前は強い。だが、勝てない相手ではないってことだよ」
「屁理屈を」
クラウスはまたも魔術を飛ばしてくる。
俺は刀を持ち直し、片手で持ち、全速力と、”運命糸”で体を引っ張ることでクラウスへと迫る。
魔術は適格に俺へと追従し、避けることはできない。刀を右へ左へと振り、魔術を一つ一つ切り落としていく。
クラウスに至近距離まで詰めると、刀を下から上へと切り上げる。
だが、攻撃は通じない。魔術以外の攻撃防御強化。この効果がクラウスへの攻撃を完全に弾き飛ばす。
「ならば!」
俺は折角詰めた距離を離す。
「”天花万象”」
”天花万象”で俺は刀を強化する。
「させん」
「それはこっちもだ!」
クラウスが、俺が刀に霊力を溜めることをさせないように魔術を飛ばす。
だが、その邪魔はさせないと、紅璃と七星がそれを妨害する。
辺りの霊力は活性化していないもの、俺が作った霊力に置き代わっているため、二人も術を使えるようになった。
霊力を作るのは俺だから、実際は俺の割くリソースも持ってかれているが、魔術が飛んでくるよりはマシだ。
「”弓火”」
「”氷下気”」
紅璃は水と氷の魔術を火の矢で撃ち落とす。
七星は火と土の魔術を温度を下げて消し去る。
その間に俺の術は完成する。
「”糸地転々”」
俺は”糸地転々”の中に入り、クラウスの真上に開けた穴から飛び出す。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
ドォンッ!
霊力をありったけ込めた一撃を放つ。
辺りは土煙で覆われる。俺は自身の羽でそれを散り飛ばす。
土煙の中には、右腕が落とされたクラウスが立っていた。
「やはり、その術は強力だな」
「本当なら、放った相手が塵一つ残らないんだがな」
クラウスは瞬時に傷を消し去る。この力がある限り、俺もクラウスも倒すことはできない。
ただ、俺たちの力は完全ではない。この力が消せるのは現実に実体があるものだけ。
人を構成する三つの身体と魂と意識。この内の魂と意識に負わさされた傷はこの力では消せない。
「クラウスのバカ!あほ!まぬけ!」
「...大丈夫か?」
「正常そのものだよ」
意識、つまるところ精神のこと。
俺はクラウスの精神を攻撃してみたのだが、のーだめーじ。
そりゃそうだろうけども。
残るは魂に傷を負わせること。そのためには、透禍の力が必要だ。
だから、そのための時間を作ってあげなければならない。
「はぁ、まぁしょうがないな。...もう少し遊ぼうか」
「...断ったら?」
「遊びじゃなくて、説教になるけど?」
「分かった。なら、遊ぶとするか」
「相変わらずよく分からん奴だな」
「怒られるのは相手が自分よりも格上の時に起こるが、遊び相手は対等だからな」
「そんなとこかよ」
要は、自分が俺よりも下に見られたくないってことか。
なら、そうだな。俺とお前ではなにもかもが鏡のように反対だが、写し鏡のようにまったく同じ存在だ。
そういう意味では、俺たちは対等だろうな。
「ヒラバナ流刀術」
「”魔装”解放」
俺は刀を持つ腕を後ろに下げ、地面と平行に寝かせ、腰を下げる。刀の切っ先はクラウスに伸ばされ。
クラウスは”魔装”から生み出された魔力できた剣を両手で肩に担ぐようにして構える。
カキンッ!
俺たちは刃を以てして戦いを続ける。
0
「罪の花と運命の糸」をお手にとって頂き、ありがとうございます。
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