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アンドロイドデビュー
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「このプランで、よろしくお願いします」
藤野高時、二十五歳。ついに、ついに…アンドロイドデビューすることになった。
「はい。お会計で、お客様の予算よりかなり高くなりますが、宜しいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。それで、お願いします」
会計を済ませ、帰りにぶらっとiPadを見て帰った。最近のテクノロジーは進歩し続けている。
俺が住居の扉を開ける。看護師さんが振り向きざまに、「お帰りなさい」と挨拶してくれた。「はい。ただいまです」と挨拶を返して、ベッドに転がった。
真っ白の天井を眺めていると、不意にスマホが振動した。ポケットから取り出して、画面を見る。母からだった。
体の心配や、彼女のこと、大学院ではどうしているか。いつも通りの母のテンションに、フッと笑みがこぼれた。ったく、こっちは体の心配どころか、病院で暮らしてるし。彼女?元気だよ。よく見舞いに来てくれる。大学院なんて、もう行けてもいない。
…母には言っていない、おそらく、もうすぐ終わる「人生」で最大の秘密。
「不治の病、かぁ…」
俺は元々体が弱かったから、小中高は母と一緒に定期検診に来ていた。大学に入ってからは、実家を離れて一人暮らしを始めたため、一人で定期検診に来ていた。この間…半年前の定期検診。不治の病を宣告されたなんて。心配性の母には、多分死んでも言えない秘密になるんだろう。
少し気分の下がってきた俺を励ますかのように、もう一度スマホが揺れた。今度は彼女からの電話だ。
「もしもし。うん…うん。そう。コールドスリープかアンドロイドになるかだった。え?アンドロイドになることにしたよ。みんなと会えず二百年コールドスリープは無理だって。うん、うん…でも、体の内部だけだよ。悪いところだけ、ロボットにするんだ。…うん、母さんにはまだ言ってない。オペ前に会いに行くから。うん。ありがとう。大丈夫…じゃあね」
通話終了のボタンを押して、またベッドに横になった。手術は九時間後の午後七時から。それまで時間がある。
スマホを操作して、母の携帯に電話をかけた。
「もしもし、母さん?今からそっち行っていい?…大学?今日は休み。大事な話があるからさ。…うん。バイバイ」
藤野高時、二十五歳。ついに、ついに…アンドロイドデビューすることになった。
「はい。お会計で、お客様の予算よりかなり高くなりますが、宜しいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。それで、お願いします」
会計を済ませ、帰りにぶらっとiPadを見て帰った。最近のテクノロジーは進歩し続けている。
俺が住居の扉を開ける。看護師さんが振り向きざまに、「お帰りなさい」と挨拶してくれた。「はい。ただいまです」と挨拶を返して、ベッドに転がった。
真っ白の天井を眺めていると、不意にスマホが振動した。ポケットから取り出して、画面を見る。母からだった。
体の心配や、彼女のこと、大学院ではどうしているか。いつも通りの母のテンションに、フッと笑みがこぼれた。ったく、こっちは体の心配どころか、病院で暮らしてるし。彼女?元気だよ。よく見舞いに来てくれる。大学院なんて、もう行けてもいない。
…母には言っていない、おそらく、もうすぐ終わる「人生」で最大の秘密。
「不治の病、かぁ…」
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