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あの、そろそろ部屋に………え? 戻ってはダメなんですか?
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「あぁ、空になってしまったな」
「では、わたくしはそろそろ」
ユスファリムの膝の上で、しばらくの時間を過ごした。
お互いの幼い頃の話や、どんな本を好んで読むか、曲は何が好きかなど、本当に他愛のないお互いの事を話すうちに、実はもう2回ほどティーポットが空になっている。
その度に、オルビアがユスファリムの膝から降りようとするが、ゆるりと腹部に回された腕に阻まれる。
そうしているうちに、月は空の真上を少し過ぎた頃になった。
「ですが、明日の公務もありますし」
「大丈夫。そんなもの適当にやり過ごせる」
「で、でも、もしかしたらアルベルトが帰ってきているかも」
「それも大丈夫。門を越えたらすぐに門番が鳥を飛ばしてくれる。知らせはまだだから、もう少しゆっくりできる」
「し、しかし」
「いやか? 俺とこうしているのは」
何ともズルい言い方をするのか。と、オルビアは言葉に詰まった。
そして、困ったことに嫌ではないのだから、更に返事にも困る。
膝の上に横抱きにされ、甲斐甲斐しくあれこれしてもらい、時たま思い出したように小鳥の様な口付けを交わす。
それがどれもこれも嫌でないから、困る。オルビアは本当に困っていたのだ。
こうも簡単に絆されてしまう、単純な自分自身に一番困っている。
「ほら、答えて」
「んっ、くすぐったい、です」
「くすぐったい……だけか?」
耳に唇が触れてしまいそうな程の距離で、ダイレクトに流れ込むユスファリムの吐息と囁き声に、ゾクゾクと背筋がむず痒くなる。
時折混じる小さな水音に、ピクリと腰が反応するのをオルビア自身は気付かない。そして、それがどういうことかも知らない。
「やっ、ふぁりぃ…んぅ、ふふふ、ふぁ」
「オルビアは、耳が弱いようだな」
「んぁ、な、にぃ……んぅ、ゃっぁ、ぞ、くぞくして」
囁き声に混じって、ユスファリムは耳にキスを落とす。
それも、時折舌で撫でるような行為まで織り交ぜるものだから、オルビアはビクビクと反応しながら、ふにゃりと体の力を抜いてユスファリムにもたれ掛かった。
熱くなり始めた体を抱いて、ユスファリムは薄いワンピースの上から体を優しく撫でた。
「ゃ、いけませんっ! 私はっ」
「約束する。オルビア、君が本当に俺と生きる未来を願ってくれるときまで、君の純潔を破らないと───だから、触れさせてくれ」
緩い抵抗も虚しく、がぶりと噛み付くような深い口付けを交わされ、ワンピースの前のリボンがシュルリと解かれる。
交差して、止めてあったリボンの前を緩められ、他人の体温が直に触れる。ビリビリと痛いような心地いいような、そんな痺れが生まれる。
「あぁ、想像より柔らかい」
「そう、ぞう? ん、ゃ」
「君に会ってから何度となく想像した。華奢な体つきをしているのに、男を惑わすこの胸はどれ程柔らかいのか、その先はどんな色を──あぁ、なんと美味しそうな色か。食べ頃の熟れた桃色をしている」
ユスファリムの指先が、オルビアのまだ柔らかく形を成していない乳首を撫で、クルリクルリと乳輪を擽る。
それに合わせて、背筋がむず痒くビクビクと反応して肩が震えた。
「今度は濃くなってきた。オルビアのここは、気持ち良くなると色を変えて教えてくれる、従順なのだな」
「ゃ、んっは、んぅ……い、けませ、ファリー」
「大丈夫。君はただ感じるままにいればいいよ。俺が勝手にしていることだから、君は何も悪くない。ほら、段々と固くなってきた。───オルビア、食わせてくれ」
ユスファリムはそう言うと、胸のすぐ近くに口を開けて静止した。
熱く湿った吐息が乳首に触れるが、それ以上は何もない。もう、すっかり色付き立ち上がったオルビアは、急に無くなった刺激に戸惑い震えた。
「さぁ、君が望む通り。俺に君を食わせてくれ。そうしたら、ただただ、君を気持ち良くしてやる」
なんと高慢な口説き文句か。
普段のオルビアなら、男からこんな自分勝手で上からな発言をさせはしないし、許しもしないだろう。
王族の誇り高い金の百合は、誰よりも強くそれでいて女の頂点でなければいけなかった。男相手でも、見せていい隙などない。常に気を張り、手玉に取られないよう、夫たちの後方支援に念を入れ、侮らせてはいけなかった。
その点で言えば、オルビアの母は完璧だ。政務であろうと、公務であろうと、彼女は常に王の隣にいた。これは歴代の王妃としては異例だった。女が政治の席にいるなど、非常識だと初めはつま弾きにされたが、それを正当化する為に、『王が王妃を片時も離さないのだから仕方ない』という筋書きを用意させた。
まぁ、強ち間違いでもないのだが、それだけでもない。幼い頃からの才覚だろう。王妃には、人を見極めるのに長けていた。相手が自分に何を求めているのか、その人物が何を画策しているのか。詳細には分からなくとも、何となく察する。それが、王と幼少を共に過ごした右腕である宰相が、自信をもって選び、王へ紹介した妹だった。
王の揚げ足を取ろうとするものを黙って見極め、強かに上品に引き摺り下ろす。想像以上の力を発揮する王妃は、夫に対しての全てをオルビアにも伝授している最中だ。
母は言った。
『従ってもいいと思う男に出会ったならば、それは運命です。すべてをさらけ出し、従い、相手が望み、欲する女になれば良いのです。でも、ただ従順なだけが女の美徳でもない。簡単にあげてしまっては駄目よ。相手が一国を担う男なら特に、ね』
アルベルトと婚約したときには、母の言っている意味が理解できなかった。
従えと言うわりに、焦らせとも言う。あべこべな教えをオルビアは理解できないまま、ここまできた。だが、今なら分かる。
望めば、大抵のものは手に入れられる男が、生涯を共にする女だけは望もうとも簡単には手に出来ない。その手の中にすでにある筈なのに、コロリと転がる彼女をどうやっても手放せなくなるまで、骨抜きにしてからにするべきだと、母は伝えたかったのだろうが。
ユスファリムはすでに、様々な理由と必然の運命のもと、オルビアでなくてはならなくなっているが、こういう場合はどうするのかまでは教えてくれなかった。
だが、母はこうも言っていた。
『貴女が手放したくない相手なら、考えては駄目よ。真摯な気持ちを肝心なときに言えないなんて、悲しいでしょう?』
「──召し上がってくれるのですか?」
オルビアはクイッと腰を前に浮かせ、背中を弓なりにして直前で止まったままだったユスファリムの口へ、自身の胸を突き付けた。
「では、わたくしはそろそろ」
ユスファリムの膝の上で、しばらくの時間を過ごした。
お互いの幼い頃の話や、どんな本を好んで読むか、曲は何が好きかなど、本当に他愛のないお互いの事を話すうちに、実はもう2回ほどティーポットが空になっている。
その度に、オルビアがユスファリムの膝から降りようとするが、ゆるりと腹部に回された腕に阻まれる。
そうしているうちに、月は空の真上を少し過ぎた頃になった。
「ですが、明日の公務もありますし」
「大丈夫。そんなもの適当にやり過ごせる」
「で、でも、もしかしたらアルベルトが帰ってきているかも」
「それも大丈夫。門を越えたらすぐに門番が鳥を飛ばしてくれる。知らせはまだだから、もう少しゆっくりできる」
「し、しかし」
「いやか? 俺とこうしているのは」
何ともズルい言い方をするのか。と、オルビアは言葉に詰まった。
そして、困ったことに嫌ではないのだから、更に返事にも困る。
膝の上に横抱きにされ、甲斐甲斐しくあれこれしてもらい、時たま思い出したように小鳥の様な口付けを交わす。
それがどれもこれも嫌でないから、困る。オルビアは本当に困っていたのだ。
こうも簡単に絆されてしまう、単純な自分自身に一番困っている。
「ほら、答えて」
「んっ、くすぐったい、です」
「くすぐったい……だけか?」
耳に唇が触れてしまいそうな程の距離で、ダイレクトに流れ込むユスファリムの吐息と囁き声に、ゾクゾクと背筋がむず痒くなる。
時折混じる小さな水音に、ピクリと腰が反応するのをオルビア自身は気付かない。そして、それがどういうことかも知らない。
「やっ、ふぁりぃ…んぅ、ふふふ、ふぁ」
「オルビアは、耳が弱いようだな」
「んぁ、な、にぃ……んぅ、ゃっぁ、ぞ、くぞくして」
囁き声に混じって、ユスファリムは耳にキスを落とす。
それも、時折舌で撫でるような行為まで織り交ぜるものだから、オルビアはビクビクと反応しながら、ふにゃりと体の力を抜いてユスファリムにもたれ掛かった。
熱くなり始めた体を抱いて、ユスファリムは薄いワンピースの上から体を優しく撫でた。
「ゃ、いけませんっ! 私はっ」
「約束する。オルビア、君が本当に俺と生きる未来を願ってくれるときまで、君の純潔を破らないと───だから、触れさせてくれ」
緩い抵抗も虚しく、がぶりと噛み付くような深い口付けを交わされ、ワンピースの前のリボンがシュルリと解かれる。
交差して、止めてあったリボンの前を緩められ、他人の体温が直に触れる。ビリビリと痛いような心地いいような、そんな痺れが生まれる。
「あぁ、想像より柔らかい」
「そう、ぞう? ん、ゃ」
「君に会ってから何度となく想像した。華奢な体つきをしているのに、男を惑わすこの胸はどれ程柔らかいのか、その先はどんな色を──あぁ、なんと美味しそうな色か。食べ頃の熟れた桃色をしている」
ユスファリムの指先が、オルビアのまだ柔らかく形を成していない乳首を撫で、クルリクルリと乳輪を擽る。
それに合わせて、背筋がむず痒くビクビクと反応して肩が震えた。
「今度は濃くなってきた。オルビアのここは、気持ち良くなると色を変えて教えてくれる、従順なのだな」
「ゃ、んっは、んぅ……い、けませ、ファリー」
「大丈夫。君はただ感じるままにいればいいよ。俺が勝手にしていることだから、君は何も悪くない。ほら、段々と固くなってきた。───オルビア、食わせてくれ」
ユスファリムはそう言うと、胸のすぐ近くに口を開けて静止した。
熱く湿った吐息が乳首に触れるが、それ以上は何もない。もう、すっかり色付き立ち上がったオルビアは、急に無くなった刺激に戸惑い震えた。
「さぁ、君が望む通り。俺に君を食わせてくれ。そうしたら、ただただ、君を気持ち良くしてやる」
なんと高慢な口説き文句か。
普段のオルビアなら、男からこんな自分勝手で上からな発言をさせはしないし、許しもしないだろう。
王族の誇り高い金の百合は、誰よりも強くそれでいて女の頂点でなければいけなかった。男相手でも、見せていい隙などない。常に気を張り、手玉に取られないよう、夫たちの後方支援に念を入れ、侮らせてはいけなかった。
その点で言えば、オルビアの母は完璧だ。政務であろうと、公務であろうと、彼女は常に王の隣にいた。これは歴代の王妃としては異例だった。女が政治の席にいるなど、非常識だと初めはつま弾きにされたが、それを正当化する為に、『王が王妃を片時も離さないのだから仕方ない』という筋書きを用意させた。
まぁ、強ち間違いでもないのだが、それだけでもない。幼い頃からの才覚だろう。王妃には、人を見極めるのに長けていた。相手が自分に何を求めているのか、その人物が何を画策しているのか。詳細には分からなくとも、何となく察する。それが、王と幼少を共に過ごした右腕である宰相が、自信をもって選び、王へ紹介した妹だった。
王の揚げ足を取ろうとするものを黙って見極め、強かに上品に引き摺り下ろす。想像以上の力を発揮する王妃は、夫に対しての全てをオルビアにも伝授している最中だ。
母は言った。
『従ってもいいと思う男に出会ったならば、それは運命です。すべてをさらけ出し、従い、相手が望み、欲する女になれば良いのです。でも、ただ従順なだけが女の美徳でもない。簡単にあげてしまっては駄目よ。相手が一国を担う男なら特に、ね』
アルベルトと婚約したときには、母の言っている意味が理解できなかった。
従えと言うわりに、焦らせとも言う。あべこべな教えをオルビアは理解できないまま、ここまできた。だが、今なら分かる。
望めば、大抵のものは手に入れられる男が、生涯を共にする女だけは望もうとも簡単には手に出来ない。その手の中にすでにある筈なのに、コロリと転がる彼女をどうやっても手放せなくなるまで、骨抜きにしてからにするべきだと、母は伝えたかったのだろうが。
ユスファリムはすでに、様々な理由と必然の運命のもと、オルビアでなくてはならなくなっているが、こういう場合はどうするのかまでは教えてくれなかった。
だが、母はこうも言っていた。
『貴女が手放したくない相手なら、考えては駄目よ。真摯な気持ちを肝心なときに言えないなんて、悲しいでしょう?』
「──召し上がってくれるのですか?」
オルビアはクイッと腰を前に浮かせ、背中を弓なりにして直前で止まったままだったユスファリムの口へ、自身の胸を突き付けた。
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