異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

文字の大きさ
上 下
69 / 120

いざバルディオス帝国III

しおりを挟む



…良かったー。いやー、まさか本物の王子様に会えるなんてビックリしたなあ。

王位継承順位が低いのだと言うユミルは、謙虚に微笑む。爵位も持たない家柄としては中流以下のアルフレッドにとって、本物の上流階級のタチ…それも同世代と関わるのは初めてだった。
勿論学園生活ではルークと知り合っているが、彼自身は小国の中流貴族だと笑っていたので4大国出身者とはまた印象が違う。

そういえば…。ユミル王子って、普通に人間に見えるな。獣人とか亜人の多い国じゃなかったか?まあ、流石に聞くのは失礼過ぎるか。

会場内の席も大方埋まってきており、晩餐会の開始も近い事だろう。ユミルとの会話は少しずつ砕けた内容になり、通りすがりに挨拶を受ける度にアルフレッドを紹介してくれた。
来客の比率としては、ハレムの主人と第1正室・ハレムの主人と子息タチ・ハレムの主人と子息ネコ…と、タチとネコの一対のみだが組み合わせはバラエティに富んでいた。

「ほう。ルキウス殿下の夫君とご学友でしたか。」
「デルヴォー伯爵閣下の夫君なのですね!」
「…実は、私の四男がハレムに入らず困っておりまして。周囲からは聡明で見目も良いと言われているのですが…。」
「おや、ご正室がお二人…?シュタルト殿のクラスならば、まだまだ正室が必要では無いでしょうか?いやいや、そういえば…」

ユミル経由で紹介される人々は、挨拶を交わすだけで終える者も居たが、ネコの子息を連れている親の場合、遠回しに入室を仄めかす者が多い。若くクラスの高いタチと知り合える機会等日常では中々無い、子を持つ親は必死なのだろう。
それでも隣に座るファビアンを見た途端、一様にそそくさと去っていくので不思議に思うアルフレッドだった。

カタリ…と空いていた斜め前の椅子が引かれた。
年は同じ位だろうか、金髪碧眼の高位貴族らしい容貌の少年である。先に反応したのはその隣に座るユミルだった。

「初めまして、ご挨拶してもよろしいですか?」
「ええ、構いませんけど。」

ユミルをチラリと見た少年だったが、何故か落ち着かなげにアルフレッドへ視線を向けていた。

ん?何だ?あれ、見てるの俺じゃなくて、ファビ?

確かめようと思うが、ユミルとの会話が続き様子を見ている事に決める。

「私はセリアル国代表のユミル・パパドプロスと申します。共に参りましたのは正室のカーリン、国では商家を営んでおります。」
「そうでしたか。私はフレデリク・フォンテーヌ、ジルックェンド連合国国王の六男で王位継承順位2位です。本日共に参ったのは第2正室のマルグリッド、男爵です。パパドプロス殿は初めてお会いしますが、今回どなたかの代役ですか?」
「…いえ、誰かの代わりでは無く…。」

ユミルと挨拶を交わすフレデリクと名乗る相手は、妙に棘の含まれる物言いであった。
相手がセリアル国の王族だと知らないとしか思えない言動だが、わざわざ訂正する性格でも無いユミルの表情は微妙そうだ。ファビアンが何か言おうとする気配に気付き、さりげなく手の平を向けて制する。

ネコよりタチが口を挟む方が良いと思っての判断だが、この時アルフレッドは失念していた。ファビアンはジルックェンド連合国の王族なので、フレデリクと呼ばれる少年は親戚では無いかと。

「ユミル殿下、私もよろしければご紹介下さいませんか?」
「…!はい。フレデリク殿下、此方はアルフレッド・シュタルト殿でバルディオス帝国第1皇子殿下の夫君とご学友だそうです。」
「………………存じています。」

アルフレッドのユミルへの敬称に目を丸くするフレデリクだったが、直ぐにその眼差しが冷たい光を放つ。
戸惑うアルフレッドに反して、ユミルは変化に気付かないのか笑みを浮かべる。

「ご存知だったのですね?もしや、お知り合いでしたか。」
「え?いや…何処かでお会い致しましたか?」

アルフレッドにとって、自らの家から出て人間関係が花開いたのは学園に入学してから…。他国のタチ、更に王族と知り合えるのも本日初めてだったのだ。
フレデリクの表情は更に固い物となり、苛立ちさえ浮かんでいた。

「…へえ。デルヴォー伯爵の夫になったと言うのに、従兄弟である私の名前すら知らなかったと言うのか?」

おっと……?確かに、ファビはジルックェンドの王族だったっけ。なるほどー、親戚筋なのに覚えてなかったからムカついたのか?うーん、でもなあ。

憎しみすら感じる視線には、大した心当たりが無い。社交界に通じていないアルフレッドに、名前を知らないからとそこまで怒りを向けてくるのだろうか。

「ご不快にさせた事、お詫び致します。第1正室の従兄弟ならば、私にとって家族も同然。どうか、今後とも親しくさせて頂きたいものです。」

誠心誠意の謝罪後、心からの笑顔を向ける。相手の怒りも憎しみも介さず、ただ親しみを込めた物だ。

「…お断りだ!」

……?!



しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

処理中です...