異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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びば学園生活19

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…最近、リオの様子がおかしい。なんというか、話しかけても上の空というか?こっちを見たかと思えば、慌てて目を逸らすし。なんだろ、嫌われたのか?

今日の午後はお互いに選択授業が重なった為、リオネルを誘い講義を受けた後お茶に誘っていた。穏やかな気候に涼しい風が吹き、リオネルとアルフレッドの髪を揺らした。
わざわざハレムの者では無いリオネルを誘ったのは、自身の考案するボードゲーム等の相談も兼ねていたりする。

「それで、こうすると一般に浸透しやすいのか。」
「は…はい…」
「そういえば、前に言ってた物の試作品てどうなったかな?」
「は…はい…」
「えーと聞いてる?」
「は…はい…」

うん、聞いてないな。これからの事考えるとあんまり良くない兆候だよなあ。嫌われるって言っても、理由が思い付かないし。普段はハレムの子と一緒に居るから、リオとの関わりも無かった筈…。

「リオ?………リオネル!」
「!あああ、は、はい!なっ何でしょうか。」

やっぱり聞いてなかったか。慌てて視線を向ける相手に苦笑し、大丈夫かと問い掛ければ勢い良く頷かれる。とりあえず大方の話は終わったので、気乗りしない者を引き留めるのも良くないだろう。そう思い、話を切り上げようと腰を浮かした時だった。

「シュタルト様、あの、」
「ん?」

此方を見つめるリオネルの顔は真剣そのもので、妙な迫力すら感じる。

「…あの、商品の開発について内密に話がありますので、何処か室内でお話し出来ないでしょうか?」
「あー、うん。いいよ。」

図書館棟の個室へと入室し、付いてきて貰っている護衛には声を掛けて外で待機させる。
何だろう、この緊張感。二人きりになった瞬間から、リオネルの額に滲む汗に気付く。確かに、タチと密室に居る為かと納得して向かい合わせのソファーに腰を下ろす。

「…失礼致します。」
「ん?うん。」

素早く同じソファに座る相手に内心驚いていた。距離感としては手を伸ばせば触れてしまう程で、流石にハレムの者では無いので他者が見れば誤解を受けるだろう。
…離れた方が良いのかな。
とも思ったが、何やら俯き眉を寄せる姿に云い知れぬ迫力を感じ、それは言い出せずに口を閉ざす。

「…っシュタルト様…」
「え…なに」

「…申し訳ありません、失礼致します!」

意味ありげにアルフレッドの手に重ねられたリオネルの手は、思いもしない来訪者の姿に素早く離された。恨めしげなリオネルの視線に怯む人物だが、不思議そうなアルフレッドに促され姿勢を正す。

「ご学友との御歓談中に無礼を承知なのですが…」

えーっと?この子は確か…あー、そうそう思い出した。フィッツ家に仕えてる子だったよな。ジレスによくくっついて来ていた気がする。

「どうかした?」
「…はい。アンリ様の事でして…その、誰にも言うなと口止めされましたが、やはり気にかかり…。」

歯切れの悪い口調に首を傾げ、隣のリオネルも興味を示し目線で続きを促している。更に問い詰めると、昨夜フィッツ家に呼び出されたアンリは、今朝方学園に帰って来たものの寮の自室で伏せったままらしい。
従者が側に寄るのも嫌がり、ジレスにも言うなとキツく言い含む有様だった。

確かにアルフレッドは、ラティーフとの騒動以来アンリの姿を見ていなかった。ファビアンから謹慎を言いつけられた為かと思っていたが。なんとなく落ち着かない心地となり、腰を浮かす。

「フィッツ家の主家であるデルヴォー伯爵閣下に申し上げるべきかと思いましたが、私ごときに判断が出来かねまして。…シュタルト様ならば、上手く収めて下さるのではと…」

思い詰めた末の行動だったようだ。
俺が彼の言動で不快をファビに訴えてしまえば、彼はフィッツ家から切り捨てられても仕方ないのに。それすら覚悟の上だったのなら、その思いを無碍に出来ない。

「リオ、悪いんだけど話は今度にしようか。」
「…はい、勿論です。」

ありがとう、と告げて直ぐに従者君の案内でアンリの部屋へと向かったのだ。





「…アンリ様、扉を開けてもよろしいでしょうか?」
「駄目。…誰も入るなと言ったよね。」

寮のアンリの自室には、心配そうな従者らしき者が数人控えており、アルフレッドの姿に驚き慌てた様子を見せた。それに軽く笑みを向け、扉に声を掛ける相手の肩に手を置き場所を譲って貰う。
何で誰とも会いたくないんだ?

「…アンリ。俺だよ、ちょっと良いかな?」
「!っ…あ、え!」

室内から衣擦れと寝台から転げ落ちた様な音が聞こえる。
1分も待たずに開け放たれた扉から、よく知った赤い髪の少年が姿を見せる。身体を覆う布団のシーツを手で握りしめ、血の気の引いた顔と目の下の隈が気に掛かった。

「シュタルト、様…んで…。」
「…最近顔を見せてくれなかったから、どうしたのかなって気になって。」

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