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番外編✳︎平凡なタチの半生
しおりを挟む【ドニ・コション】
生まれ変わったら異世界とか笑えねえんだわ。
親の金で女遊び、競馬、パチンコ、少し危険な夜の繁華街に出掛けた。何より楽しいのは上ランクの女を抱く事。少し金を見せびらかせば、ケツを振ってついてくる。でかい胸を揉みしだいて、甲高い声が興奮を煽り、突っ込んだ時の快感は一度じゃ物足りなかった。
盛りのついた猿…それが俺。それなりに裕福な家で、働かずとも食うには困らない生活。極度の女狂いの俺には、街で女漁りをするのが楽しみだった。
今日はあの女にするか。頭はかるそーだけど胸はでけえし。
…それが俺の人生最後の記憶だった。頭がおかしいと思われそうだが、俺には前世という物を持っている。新たな人生に気付いた時に思ったのは、どうせならあの女に突っ込んで死にたかったのと、宝くじの結果見てねーわウケる。だった。
赤ん坊のまま少しずつ新しい世界の常識を理解していった所、この世界には前世とまるっきり常識が異なると知った。
人間は男女では無くタチネコに分かれ、女が居ないらしい。
俺はタチで、数が少ないから重宝されるのだと言う。
女が居ないとか、マジだりい。んな世界生きてる意味あんのかよ。タチには生きてるだけで金入る?どーでもいいけど、女よこせよ女。
物心つく頃には周囲の大人達は俺の機嫌取りに必死で、父親は俺が何をしても笑顔で肯定していた。父親の子どもにはタチが俺一人で、大事な跡取り様なんだと。俺専属の個室に、専属の使用人、俺を産んだ親は妾から側室に上がっていた。
8歳の冬、近くに居た使用人達を素裸にさせて雪の降る外で一晩待機を命じた。一人死んでしまったが、父親は無視を決め込み、生みの親は楽しそうに微笑んだ。貴方は好きなことだけして良いのだと。
12歳の夏、初めてネコを抱いた。女とは違う筈なのに、女の役目を持つ固い身体に嫌悪した。大して解さずに勢いだけで突っ込んでやれば、泣きながら喘ぐ相手に欲望を吐き出す。
男を抱いた気持ち悪さと、反する身体の快感に感情がついていかずに、抱いた相手を部屋から追い出して胃の中の物をぶちまけた。
気持ち悪い、気持ち悪い…
【ケール・フィッツ】
フィッツ家後継者のジルックェンド竜騎士団所属。品行方正で、真面目な好青年。
フィッツ家に必要なのは、そういった主である。
『良いか。我がフィッツ家はフィッツ騎士団の総領であり、勿体無くも王家に直接お仕えする事が出来る。お前も当主となるのだから、しっかりと念頭に置いて…』
しかし父上…
『…何だその顔は!もうお前しかタチが居ないのだから、煩わしい物言いは止めろ。』
はい、承知致しました。
腕が立ち、努力家で聡明で成績優秀。弟達の道導となりネコの扱いも心得て、騎士団の中では模範となるべき存在。あとは、ハレムを大きくしながらタチが産まれれば完璧だ。
そうだ、それで良い。下らないことを考えるな。自分の立場は、家の為に与えられた役割を全うするだけだ。
-お前しかタチが居ないのだから-
-いつか、一緒にこの家を出てさ…何も気にせず生きたいね-
-何で死んだのがお前じゃなかったんだ-
毎夜眠ると責め立てるのは、自分の無意識なのか、逝ってしまった君なのか。本当は何もしたくない。騎士団になど入りたく無かった。何故、フィッツ家唯一のタチが自分だけだと言って追い詰める?
「若様、お客様が参られました。」
「…分かった。直ぐに行こう。」
込み上げる暗い物を飲み込んで、完璧な笑みを浮かべる。俺の意思など必要無いのだから。
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