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※紫髪獣人視点
しおりを挟む僕の名前はチコ。身分のあった時代にはドラードの姓もあった。奴隷身分になった時は悲しいとか辛いとか感じる余裕も無くて、ただ身体を苛む痛みと戦うしか出来なかった。
4大国の1つセリアル国で育ったチコは、獣人が多く暮らす街で育った。
生まれた時に家へと来た監査官から決められたクラスはD。全ての人間に言えることだが、人は産まれて10日目に4大国が管理する中央機関より監査官がクラスと性別タチネコ決めにやって来る。
中央機関に古より魔導紋に蓄積された全ての民のデータ。 それらと照合しながら、実際に向かった監査官が容姿と全体図を水晶を通して記録する。
父であるタチの記録とクラス、産みの親の記録とクラス、家格、体型の比率、病気の有無、体毛の質、肌の潤い、フェロモンを受けた時の変化…事細かく照合され、クラスを判断する材料となる。
中央機関の水晶が表示したのはネコのD。クラスはチコの整った容姿に対して低かったのは、産みの親が妾でありEクラスだったからだろう。
獣人の中でタチのフェロモンの影響を受けやすい猫科であったチコは、幼い頃はなるべくタチから距離を取って過ごすようにした。それでも、将来は普通にハレムに入る事を夢見ていたのは、ネコとして当たり前の考えだ。
街の初等学校に通い始め、優秀な成績を修める様になり教師からの覚えも良かった。そんな日々の中、ある日人生が一変した。
冬の寒い日だった。父の風邪が思うより重く、肺炎を患ったかと思えば呆気なく亡くなってしまったのだ。突然のことで、遺書などある筈無く、正室が全てを取り仕切る。
父が持っていた土地と財産は正室が分け合い、側室は残りを貰い、妾の中の古株はおこぼれを貰いそれぞれ子を連れて屋敷を出ていった。Eクラスの気弱な産みの親は、大した財産も受けとれない。最悪なことに、帰る家は無い。
妾はクラスが低いことで、幼い内に捨てられてしまい、下働きをしながら生活していたらしい。ハレムを出た今、年を取って新しいタチに見初められるのは難しい。身を寄せる場所も無い。
直ぐに学校を辞めて、産みの親と仕事の多いだろう都市部へと向かう。安い家を借りて、産みの親と仕事を探す日々。いつ貯蓄が無くなってしまうか毎日恐怖だった。
運良く容姿を買われ、王宮の召使いとして雇われてからは食事をするのには困らなくなった。父の居ないDクラスのネコの為か、嫌味や陰口を言われても我慢するしかなかった。
転機が訪れたのは、国王陛下主宰の王宮勤めをする若者を対象とした学力試験。三年ごとに開催され、上位3名に入れば、学園都市ケラフへ受験させて貰えるのだ。
まず受験するのにもコネと資金が必要だが、金銭面については国がバックアップしてくれる。もしも合格出来た場合、学費や必要経費も手助けしてくれるらしい。
チコは働きながら一生懸命勉強した。学園都市ケラフへ入学し、卒業出来たら良い仕事に就ける。もしかしたら、烏滸がましくも素敵なタチと知り合えるかもしれない。
並々ならぬ努力の末、試験の三位に食い込めた。ケラフの受験にも受かり、周囲の祝福を受けて中等部二年へと編入することとなった。
産みの親には稼いだ当面の資金を全て手渡し、自分は国からの補助金を受け取る。学費を払い込み、教材や制服を揃え、日々慎ましく暮らせば充分な額は残った。
いつか、産みの親を楽にしてあげたい。ごく普通の生活をしたい…そう思っていた。
学園は夢のような場所だった。学生寮も住んでいた借り家とは違い、家具一式が揃いシミや穴の無い天井に壁。袖を通した制服はシルクの肌触り。食堂の一般向けの定食は量も多く、全て美味しい。まるで天国だった。
「よろしくお願い致します。」
ペコリと頭を下げたのは、中等部2年Ⅳ組。
Ⅳ組は普通科と呼ばれ、他の貴族科、騎士科とは棟が違う。組には亜人や獣人が五、六人は見えたので少しホッとした。
初めに声を掛けてくれたのは、同じ獣人だった。彼は勿論ネコであり、綺麗な金髪をした犬獣人。優しい笑顔は安心感を与えてくれる。
「君は何処から来たの?」
「…あの、セリアル国だよ。」
「へえー。お父様は?クラスは何?」
「…あ、えっと……」
笑顔のまま矢継ぎ早に聞いてくる相手に、僕は疑いもせずに有りのままを話した。自分はDクラスで、父は居ないけど国からの援助で入学できたことを。
何となく見下した笑みを浮かべる相手に居心地悪く感じていると、後ろから別の声がかけられた。周囲から「コション様」とざわめきが起こる。
「…ふうん?ハレムの獣人を増やしたいと思ってた所だ。顔も悪くないから、お前を僕の妾にしてやるよ。」
そう言って此方をねめつける相手に、キョトリと目を丸くする。周囲の雰囲気と、言動、うっすら感じるフェロモンにやっと理解し、慌てて椅子から降りて頭を下げた。
「…あ、ありがとうございます!」
驚いた。まさか、入学したその日にタチの御方からハレムに入れられるなんて。名誉なことなのに、何故か心のときめきは無い。嬉しいよりも、戸惑いの方が大きい。
*
あっさりと夜にコション様の自室へと呼ばれ、驚いた。自分の他にコション様に裸のまま甘えるネコ達。媚を売り、必死に機嫌を取る様子に言い知れない不安が募っていく。
…どうしよう。怖いや。
コション様に服を脱ぐよう命じられ、恥を捨てて生まれたままの姿になる。紫の髪と同じ色の耳と尻尾は獣人の証。ベッドに乱暴に押し付けられると、尻尾を思い切り握られる。
「……………!!」
あまりの痛みに声なき悲鳴を上げパクパクと口を開閉させるが、お構い無しに雑に身体を弄り回される。愛撫とは程遠いそれは、タチと初めての経験であるチコにとって、これが普通なのだと錯覚してしまう。
痛いな、気持ち悪いな…早く終わらないかな。
胸の突起を強くつねられ、耳を楽しそうに引っ張られ、よく慣らしても居ない尻の間に指を出し入れされ、鳥肌が止まらない。
「お前には勿体ないが、喜べ…くれてやるよ。」
何のことか分からないチコはその衝撃に身体を硬直させた。無理矢理捩じ込まれた物は、ネコの柔軟な後孔だが慣らしていない状態なのもあり、入り口に無数の傷をつけ血が滴る。
身体以上に、チコの心が受け入れられる状態では無かった。
「……あああ!う、痛い、痛いよお!」
痛みと苦しみ、初めての経験にパニックとなり、呻きながら泣きじゃくるチコ。
そんなチコに向けて、コションが行ったのは冷たい頬への拳だった。
「…はあ?何で泣いてんだよ、意味わからねえ。…あー萎えた。おい、お前ら相手しろ。」
その言葉に慌ててコションの相手を始めるハレムの者達。殴られて呆然とするチコに向けて、更に冷たい声が投げられる。
「…お前、罰としてクラス落ちさせるから。」
タチが行える権利として、ネコへの罰の1つ。
クラスを下げる。そのネコに父が居れば、嘆願や金を積み、免れることも出来る。だが、チコには助けくれる後ろ楯は持たない。
たった一言で、チコはEクラスへと落とされてしまったのだ。
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