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ファビアン・デルヴォー視点
しおりを挟む「高等部を卒業したらギー公爵の第4正室として入るように。」
「承知致しました。」
中等部3年の秋、久しぶりに自邸へと戻り父から呼び出されたと思えば、淡白に告げられた内容に内心驚いた。
ギー公爵といえば、バルディオス帝国の最近台頭してきた御方だ。確か年齢は50歳近い…。
クラスはC級だが、ハレムでクラスの高いネコを取り入れた事で着々と家を大きくしているらしい。最近第4正室を病で亡くし、名家の子息を入れたいようだ。
タチである父の命に背ける筈も無く、文句は言えない。だが、父はジルックェンド連合国の王弟であり侯爵。産みの親は第2正室である私は、デルヴォー家の次男で伯爵位も持つ。相手方も重く扱ってくれるだろう。
父の部屋から出て、第2#__正室__はは#から泣きそうな顔で慰められる。我が家にはタチが産まれず、このままでは王族とはいえ力が弱まってしまう。子息が早くハレムに入り、タチを産まなくはならない。
「苦労をかけますねファビアン。大丈夫、ギー公爵はタチを産んだ場合、デルヴォー家に差し上げると仰って下さったそうですよ。それにお年を召された御方、気を張った生活も長く無いでしょうし…。」
「ええ、大丈夫です。」
顔には笑みを張り付け、自室へと戻る。ギー公爵の絵姿を見てみたが、髭や体毛の濃く浅黒い肌で肥え太った中年といった風に見えた。召使いの噂では声が大きくネコに怒鳴り散らし、風呂を好まず体臭はキツイ…。亡くなった第4正室は、本当はギー公爵の暴力によるものだと。
知らず唇を噛み締め、頬を伝う物に気付いた。
ネコであったがクラスはA、視力は弱いが常に身体は磨き上げ勉学を学び研鑽を積んできた。王族としての礼儀作法も誉められ、幼い頃から容姿を讃えられてきた。
高望みしていた訳ではない。
自室の本棚に並ぶ一冊を手に取り、好きな挿絵に目を落とす。運命的な出会いを果たしたタチとネコが愛を交わし、ネコは指輪を受け取り喜びの涙を流す。彼らのハレムは互いを尊重し
生涯幸せに暮らしました。
ネコは一度ハレムに入ると離縁出来ない。それは常識である。例外として、タチから離縁を言い渡された者は、それに含まれないが。
…ただの夢だ。素敵なタチと出会い、愛されること。正室じゃなくても良い、物語の様な美しい青年に情熱的な愛を囁かれ、口付けをされる。
そんな夢物語は、たった今砕かれてしまった。
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