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二章~親交会・対立~
広がる波紋
しおりを挟む「…そういえば、最近学校に居ない事があったけれど、何かあったのかい?」
準備室の椅子に座り、隣りに座りノートパソコンを開く直久に、気にかかっていた事を口にする。
「…あ?ああ、まあ、色々な。」
質問に平静を装いながら目を泳がせる直久だが、
千里には大体の検討はついていた。早苗…千里の事情を知る唯一の女性で、幼稚舎から一緒だった幼馴染みの言葉。冬宮直久との婚約。
直久ならば婚約を一蹴しそうだが、早苗の家柄が関係しているのだろうか?早苗は確か、園原グループと並ぶ大手外資系のグループ…城ヶ根家だっけ。
まあ今は、そんな事に気を取られてはいられないか。3日間で黒鎖をこちら側に引き入れる事、恵の事情も調べなければならない。
「直久、それはそうと…親衛隊の様子はどうだい?」
「…あ?ああ。」
深く追究されず安堵する直久だが、問われた内容に少し思案する。
「俺の所は、とりあえず桐埼が押さえているな。…半数以上は中立派って所か。」
ふむ、と頷き返す。これから月宮がどう動くかによるが、春宮派か中立派なら良いが、月宮派がどれだけ居るか見極めなければ。
僕の親衛隊は、美景と歩が筆頭に春宮派。
智の所は、都丸兄弟筆頭に春宮派らしい。
明日霞の親衛隊だが、副隊長が鈴木の変わりに纏めているが、元々明日霞のセフレが多いからか、あまり纏まりが無くなっている様だ。
恵の所は、瀬良が何か考えているのだろうか?実際、恵の親衛隊が一番今は微妙なたち位置だろうが。
「そういや、今日の放課後に中等部の実行委員が顔見せに来るんだよな?」
思考に耽る千里の耳に、直久のどうでも良さげな声が入ってくる。
そっか。色々あって忘れていたな。
「千里、お前はどうするつもりだ?」
「…何がだい?」
何気無く言われた事は、千里にとっては簡単に決められない物だった。
「桜川を除名するかどうかだ。」
「…そうだね。もう少し、瀬良と美景の情報を待ってみてからにするよ。」
僕には、やはり朝の恵の姿は、本心じゃないのではと思ってしまうから。
直久と情報を纏めており、お昼前になった頃だろうか…準備室に瀬良がやって来た。
「…失礼致します。」
実は、彼とはあまり話した事が無かったな。
「やあ。早速だけど、何か新しい情報は入ったかい?」
興味の無さそうな直久は放って置き、瀬良に椅子を進めてみる。
「…………」
ん?どうかしたんだろうか。
椅子を進めたものの、瀬良は座る事なくあまり変わらない表情を苦悩に染めていた。流石の直久も、そんな瀬良を訝しそうに目を向ける。
「どうした?何があった。」
少し圧を込めた直久の言葉にも無言を貫き、嫌な静寂に包まれた室内。
「…申し訳、ありません。」
「瀬良?」
ふと、瀬良の謝罪が静かに響く。千里の脳内に知らず警報音が鳴り始める。続く瀬良の言葉は、千里に強い衝撃を与えるのには充分であった。
「…桜川様は、どうに話しをしても、普段の桜川様でした。特に脅されても、催眠を掛けられても無く…あくまで、月宮自身に好意を持ったのだと。」
まさか、とは思う。
けれども瀬良が恵の事で敢えて嘘を付く理由は無いだろう。瀬良は続けて「桜川様親衛隊は、暫く様子を見る事にします」と口にする。無言の千里と直久に居心地が悪いのか、瀬良は頭を下げて直ぐに立ち去って行った。
恵は、本当に月宮に惚れたのか?
「桜川の野郎、馬鹿だな。」
「…え?」
吐き捨てる様に言う直久に、思考が定まらない千里はただ首を傾げる。
「月宮なんかより、千里の方が良かったなんて直ぐに分かる事だってのにな。」
「…そう、だね。」
暗く落ちかけた思考を掬い上げられていく。一度目を閉じると、しっかりと視界を広げて不敵に口端を持ち上げた。
「ふふ。当たり前だろう?」
とりあえず、恵と瀬良は暫く親交会の実行委員会には呼べないだろう。今の優先事項は、黒鎖の引き入れ、明日霞の親衛隊の調査、智の回復、風紀委員のメンバー確認…か。簡単にメモ用紙に書き出していると、直久も気になったのか横目に覗いて来る。
「黒鎖か。」
「…そう、直久も何か気になる事があれば言って良いから。」
そんな話しをしている内に、実行委員のメンバーが集まって来た。入って来た美景がお茶の用意をしていると、直久が何か思い出したのかペンを持つ手を止める。
「そういや、どーでも良いが…黒鎖は、容姿の良い奴によく話し掛けてるらしいぜ?」
「うっわ、本当にどーでも良いし。」
黒鎖に良い思い出の無い明日霞など、嫌そうに顔をしかめている。
ああ。確か明日霞って「わんちゃん」とか言われてたよね。黒鎖に対しては、金か物か、って考えていたけれど…色も有りか?じゃあ、黒鎖の好みを探ってみようか。
「…あ、春宮様。」
「ん?なんだい、都丸。」
美景の淹れたコーヒーを一口啜りティーカップを置いた時、都丸兄の声に気づく。
今日は都丸弟が居ないので、智についているのだろう。…言った事は無いが、最近双子の見分けがつける様になってきた
「はい。守山様ですが、ここ2、3日で登校出来るかと。」
そっか。良かった…。都丸兄も嬉しそうだね。
「そう。迷惑じゃなければお見舞いに行っても良いかい?」
問い掛ければ間も置かずに是非!と強く都丸兄の拳が握られる。
雑談と、放課後の中等部との親交会会議についての確認を終え、とりあえずは解散となった。数枚の書類だけして置こうと、先に皆戻る様に促し、室内に一人の静寂を楽しむ。
さてと、中等部の実行委員会は…来るのは3人か。
2-S
銀条 彼方
2-S
園原 大翔
2-A
宇津井 誠
園原って、美景と関係が?
名前を読み返している時、一人の室内に扉を叩く音が耳に入った。
「はい、どうぞ。」
「失礼…しますう。」
弱々しく扉を開けたのは、千里が思っても居ない目を真っ赤に腫らした鈴木であった。
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