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二章~親交会・対立~
対立
しおりを挟む慌てて走り込んできた守山の親衛隊隊長に守山を任せ、次の足音に振り返る。
「…春宮様。」
夏雪、と…四人の生徒?
「その者達が、加害者で良いのかい?」
雰囲気的にはCクラスの様だが、この四人だけでこの様な大それた事は出来ないだろう。
どう見ても小物臭がする。
「はい。ですが、どうやらもう一人この部屋に居たそうですね。」
「へえ?」
なるほど。その人物が指示を出していた可能性が高いか。月宮の個人的な部下か、例えば風紀委員だろうか。
「君達、その人の名前を教えてくれないかい?」
千里が敢えて優しく問い掛けるが、四人は必死に首を振る。
「い、言えねえ!殺されるっ…!」
「ずっとこの調子でした。」
どうやら夏雪も取り調べてくれたのか、どうやっても口を割らなかった様である。しかし、千里には確定的な証拠があった。
黒鎖により、この場所の事を知ったからだ。黒鎖と月宮の関係性は既に分かっている。と言う事は、この事態の指示も月宮だろうと思うが、そこまでは認められないだろう。
「…ああ。隠す必要は無いよ?僕は黒鎖から情報を貰っているからね。」
すると、一人が「え!」とあからさまな反応を浮かべた。
四人は夏雪により両手を後ろ手に縛られているので、手は動かせない状態だ。ごく普通の笑みを浮かべる千里は、反応を浮かべた一人に視線を送る。
「そう。君達の背後に居るのは、月宮かい?」
この際、部屋に居たもう一人の名前は良い。この疑問は確証にして置こう。
「…あ、い、言えない。」
「ん?別に言わなくても良いんだよ。」
千里は口元だけ笑みを掃く。瞳はぞっとする程の光を宿して。
「…卒業後、帰る家も、就職出来る場所も、住める場所も無いだろうけど。」
四人は瞬間、戦慄した。敵に回してはならない相手を敵に回してしまったと。しかし、どう思おうと既に遅い。千里にとって、彼らは既に敵である。
守山智を傷付けた事、敢えて自分では無く友人を狙った事、今後また周囲の人間へ危害が加えられない様に、千里は少し本気となっていた。
「…あ、あ…っお、俺達は、月宮様の部下、星河さんに…指示をされてやりました!」
一人がそう叫ぶと、他はもう終わりだと膝を着く。
「そう、ありがとう。」
やっぱりか。
一度目を閉じて、部屋を静かに出ていく。その間際、黙って立っていた夏雪に、更に彼らが凍り付く一言を言い捨てる。
「夏雪、四人を都丸兄弟に引き渡すように。」
「畏まりました。」
綺麗なお辞儀で請け負うと、四人を直ぐに引き摺って行った。
馬鹿な者達だ。
親衛隊の思いは、恐ろしく強い。そして、制裁はあまりの苛烈さに死を選んだ方がマシだと思うらしい。以前、千里に媚薬を盛った生徒は、親衛隊では無かった。それは千里もホッとしたのだが。
美景にその事が知られたその2時間後には、その生徒の姿は学校には無かった。親衛隊によって制裁の仕方は違うらしいが、彼らも覚悟をするべきだろう。…特に、守山親衛隊は武闘派である。どうなるだろうか。
考えている内に、Sクラスの教室へと着いていた。丁度午前の授業は終わった所だ。
良いタイミングだね。
端の席で立ち上がった月宮を見つけ、ゆっくりと近付いて行く。
僕は、月宮を許さない。学校内での争いに家は口を挟まない、それと此処での関係が後々重要になるのは知っている。けれど、それでも気持ちはまた違う。親衛隊にもこれは任せない。あくまで、喧嘩を売られたのは自分だ。売られた喧嘩を、買わせて貰おう。
「月宮。星河を使って、やってくれたみたいだね。」
星河の名に僅かに月宮の眉が上がる。これで、計画の失敗が分かっただろう。
「…何の事かな?」
「言った方が良いのかい?これだけの人間が聞いている中で。」
「…………。」
この時、動いていたクラス内の人間全ての動きが止まっていた。月宮と春宮の一触即発の雰囲気が伝わったのであろう。明日霞や恵、美景も珍しく冷たい雰囲気の千里に少し驚く。
千里寄の生徒は、月宮を非難する視線を向け中立的な生徒は怖々と様子を伺っている。動向が気になるのか、教室を出る生徒は居ない。
「…なるほど。そこまで言われれば、はいどうぞ…とは言えないな。では、謝罪をしろと?」
この場で智を襲わせた事がバレれば、月宮の分がわるくなるのは目に見えている。月宮の言葉に、千里はスッと笑みを止めた。
「いや。必要ない。」
その一言が終わる瞬間と、千里の拳が月宮の頬に勢い良く入ったのは同時だった。月宮が後ろによろめき、頬を抑える。
「……っ?!」
そこで千里は本気で残念に思ったのである。
自分が男だったら、もっと衝撃を与えてやれたのに。
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