上 下
21 / 124
一章~新入生親睦会~

睡魔と

しおりを挟む

うん。調子に乗ったなあ。

恵と甘い夜を過ごし、恵を帰らせた後は、それを思い出しかなり反省してしまった。

何やってるんだ僕?勢いでキスするなよ。王子様じゃないよ…犯罪者だよ。

我に返ると、結構な恥ずかしさに襲われる。そんな悶々と考え込んだ昨夜…現在、とても眠いです。毎日の習慣で、身支度だけは完璧に整え、靴を履く。

今日、小テストあるのにな。半分寝ている頭で出来るのだろうか?眠い…。…………………っは。

靴を履く途中で思考が飛び、慌てて頭を振る。小テストと言えども手を抜けない。直久に点数を抜かれる訳にはいかないからだ…。

それに、三人目と月宮の事も調べないとか。眠さでほとんど朝食は摂れず、そのまま学校に着き教室に入る。

ああ、眠い。早く着いた為に一番乗りだったようだ。よし…少し寝るか。

「…ハアハア…。」
「……?」

ふと教室の扉付近から、人の呼吸が聞こえる。

何か、妙に荒く無いか?
嫌な予感がするが顔には出さず、ゆっくりと扉の外に目を向けてみる。

えーっと?
目の前には何も見えず、声のする下方向に視線を落とす。

「…ハアハア…ハアハア。」

どうしよう…凄く見覚えがあるよ。
床に膝を着くそれは、千里の視線に気付くと飛び起きた。

「…っあ!お、おはようございます!」

眠さが恐ろしい。僕は、寝たいのに…。

「おはよう。誰かに用かい?」

僅かな苛立ちなど見せず、相手に微笑みかける。もしや、またストーカー?

「…あ、えっと。あの、その…春宮様、に…その…。」

ん?

「…もしや、謝りに来た?気にしなくて良いのに…君も懲りただろう?篠村。」

顔を赤くしたり青くしたりする相手に、溜め息が出そうになる。篠村 貴也。恵のストーカーだったが、キツーイお灸を据えた相手。

と言うか、良く来られたな。僕だったらトラウマレベルで、もう関わりたくないだろう。

「…その…違います。俺がいけなくて、春宮様は…当然の事をしただけで!」

何故か当然という言葉を強調する篠村に、千里は違和感を覚える。

…うん。……ん?ああ、眠いから変な考えにいくのか。

「…そう。じゃあ、もう大丈夫だよ。」

そろそろ誰か登校してくるだろう。その前に少しでも寝たい。

然り気無く帰れという仕草をすると、篠村は少しまごつき視線をさまよわせ、覚悟を決めた様に表情を引き締めた。

ああ、真面目にすれば程ほどの顔はしてるな。
直久や恵等の絶世の美形を見慣れている為、一般の高校なら確実にモテるだろう篠村をそう評価する。

「………あの!」
「うん、何?」

文句言うなら早く言えば良いのに。
しかし、篠村の次の言葉に千里の思考は止まる事となる。

「俺を……春宮様の、下僕にして下さい!」

……What happened?
うん。眠いからやっぱり僕おかしいみたい。

「…えーっと、下僕?」

すると、篠村の瞳が輝く。鼻息も荒い。

「はい!好きな時に罵って、痛め付けて下さい!」

あと…と篠村の頬がポッと赤くなる。

「…春宮様が望むなら、いつでも裸にもなります。…俺が犯されるのが見たいなら、それでも構いません…むしろ、見て欲しい。」

はい、撤収ー。つまり、彼の性癖を産み出してしまったのだろうか。いや、まさか…いやいやいや。これは夢、眠いから夢を見てるんだ。それにポッって…全く可愛くないからね。

心にブリザードが吹き荒れる千里だが、とにかくこの状況をどうにかしたい。帰って欲しい。今すぐ。

「…とりあえず、戻って貰えるかい?」
「では!下僕にしてくれますか?!」

嫌です。従者は欲しいと思っていたが、こんなモンスターは要らない。今日は厄日だろうか?僕は何か悪い事をしたのだろうか?

息を荒く内股になる相手に嫌悪感を感じ、思わず冷たい視線を送る。何故かそれに更に嬉しそうに頬を染める190センチの男。

何だっけ?ドMって言うんだっけ?マゾだと可愛い過ぎる。ああ、眠い。

「……春宮。…どう、したの?」

頭を抱えそうになる千里の耳に、聞き慣れた声が響く。

「守山、おはよう。」

今日も綺麗に揃った髪を揺らし、冷たい美貌で小さな笑みを浮かべる。挨拶を返し、何か言いたげな守山に苦笑する。

だろうね。ハアハア荒い息の男が居れば、誰だって疑問に思うだろう。

「…彼にお引き取り願いたいんだけど、帰ってくれなくてね?」
「………そう。」

千里の言い方になんとなく察したのか、守山が千里の前に立つ。

「帰れ。」

おお。…ありがとう守山。

簡潔に篠村へ告げる。千里と変わらない身長の守山だが、その鋭い視線に篠村がひるむ。

よし、帰れ。眠い。…守山の背中見てると、眠さが増してきたよ。

篠村が急にプルプル震える。

「…………~っですよ。」
「…ん?」
「……。」

何か言った?
じっと篠村を見れば、カッと目を見開いた。

「…その冷たい目ええええ!ぜんっぜん足りませんから!罵るなら、春宮様にお願いします!」

廊下でそう叫ぶ篠村の姿に、少しずつ登校して来た生徒たちの視線が刺さる。

「…変態。」
「いや、変態が可哀想だよ。」
「…そう、かも。」

顔色を悪くし、千里と守山はヒソヒソと言い合う。眠気も吹っ飛ぶ威力だった。ドン引きする二人の美形を余所に、変た…篠村はヒートアップしていく。

「…良いですか?まず、角度はこのぐらいで…上から目線で生ゴミを見るように見下してくだ………げびゃふ!!」

そして言い切る前に吹っ飛ぶ篠村。華麗にフェードアウトしていく篠村を、二人の人物が蹴りあげる。
途中で、呆気に取られる守山と千里に気付き、深くお辞儀をした。

「…おはようございます。守山様、春宮様。これは、我々が処分致しますので、お気になさらず穏やかにお過ごし下さい。」
「…あ、そう。ありがとう。」

この二人、守山の親衛隊だっけ?

「いえ。当然でございます。」

守山と千里が教室に入ったのを確認し、その二人は篠村を空き部屋に叩き込み、修羅の如く殴り倒す。

「…おい、てめえ…よくも、普段より早起きなさった守山様の安らかな一時を無駄にしてくれたなあ?」 
「アンタは我々が丁重に地獄へ送りますよ、この変態野郎が!」

((それに、守山智様親衛隊…別名、守山様と王子様を友達以上恋人未満にし隊の邪魔をした事は、万死に値する!))



しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...