王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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一章~新入生親睦会~

睡魔と

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うん。調子に乗ったなあ。

恵と甘い夜を過ごし、恵を帰らせた後は、それを思い出しかなり反省してしまった。

何やってるんだ僕?勢いでキスするなよ。王子様じゃないよ…犯罪者だよ。

我に返ると、結構な恥ずかしさに襲われる。そんな悶々と考え込んだ昨夜…現在、とても眠いです。毎日の習慣で、身支度だけは完璧に整え、靴を履く。

今日、小テストあるのにな。半分寝ている頭で出来るのだろうか?眠い…。…………………っは。

靴を履く途中で思考が飛び、慌てて頭を振る。小テストと言えども手を抜けない。直久に点数を抜かれる訳にはいかないからだ…。

それに、三人目と月宮の事も調べないとか。眠さでほとんど朝食は摂れず、そのまま学校に着き教室に入る。

ああ、眠い。早く着いた為に一番乗りだったようだ。よし…少し寝るか。

「…ハアハア…。」
「……?」

ふと教室の扉付近から、人の呼吸が聞こえる。

何か、妙に荒く無いか?
嫌な予感がするが顔には出さず、ゆっくりと扉の外に目を向けてみる。

えーっと?
目の前には何も見えず、声のする下方向に視線を落とす。

「…ハアハア…ハアハア。」

どうしよう…凄く見覚えがあるよ。
床に膝を着くそれは、千里の視線に気付くと飛び起きた。

「…っあ!お、おはようございます!」

眠さが恐ろしい。僕は、寝たいのに…。

「おはよう。誰かに用かい?」

僅かな苛立ちなど見せず、相手に微笑みかける。もしや、またストーカー?

「…あ、えっと。あの、その…春宮様、に…その…。」

ん?

「…もしや、謝りに来た?気にしなくて良いのに…君も懲りただろう?篠村。」

顔を赤くしたり青くしたりする相手に、溜め息が出そうになる。篠村 貴也。恵のストーカーだったが、キツーイお灸を据えた相手。

と言うか、良く来られたな。僕だったらトラウマレベルで、もう関わりたくないだろう。

「…その…違います。俺がいけなくて、春宮様は…当然の事をしただけで!」

何故か当然という言葉を強調する篠村に、千里は違和感を覚える。

…うん。……ん?ああ、眠いから変な考えにいくのか。

「…そう。じゃあ、もう大丈夫だよ。」

そろそろ誰か登校してくるだろう。その前に少しでも寝たい。

然り気無く帰れという仕草をすると、篠村は少しまごつき視線をさまよわせ、覚悟を決めた様に表情を引き締めた。

ああ、真面目にすれば程ほどの顔はしてるな。
直久や恵等の絶世の美形を見慣れている為、一般の高校なら確実にモテるだろう篠村をそう評価する。

「………あの!」
「うん、何?」

文句言うなら早く言えば良いのに。
しかし、篠村の次の言葉に千里の思考は止まる事となる。

「俺を……春宮様の、下僕にして下さい!」

……What happened?
うん。眠いからやっぱり僕おかしいみたい。

「…えーっと、下僕?」

すると、篠村の瞳が輝く。鼻息も荒い。

「はい!好きな時に罵って、痛め付けて下さい!」

あと…と篠村の頬がポッと赤くなる。

「…春宮様が望むなら、いつでも裸にもなります。…俺が犯されるのが見たいなら、それでも構いません…むしろ、見て欲しい。」

はい、撤収ー。つまり、彼の性癖を産み出してしまったのだろうか。いや、まさか…いやいやいや。これは夢、眠いから夢を見てるんだ。それにポッって…全く可愛くないからね。

心にブリザードが吹き荒れる千里だが、とにかくこの状況をどうにかしたい。帰って欲しい。今すぐ。

「…とりあえず、戻って貰えるかい?」
「では!下僕にしてくれますか?!」

嫌です。従者は欲しいと思っていたが、こんなモンスターは要らない。今日は厄日だろうか?僕は何か悪い事をしたのだろうか?

息を荒く内股になる相手に嫌悪感を感じ、思わず冷たい視線を送る。何故かそれに更に嬉しそうに頬を染める190センチの男。

何だっけ?ドMって言うんだっけ?マゾだと可愛い過ぎる。ああ、眠い。

「……春宮。…どう、したの?」

頭を抱えそうになる千里の耳に、聞き慣れた声が響く。

「守山、おはよう。」

今日も綺麗に揃った髪を揺らし、冷たい美貌で小さな笑みを浮かべる。挨拶を返し、何か言いたげな守山に苦笑する。

だろうね。ハアハア荒い息の男が居れば、誰だって疑問に思うだろう。

「…彼にお引き取り願いたいんだけど、帰ってくれなくてね?」
「………そう。」

千里の言い方になんとなく察したのか、守山が千里の前に立つ。

「帰れ。」

おお。…ありがとう守山。

簡潔に篠村へ告げる。千里と変わらない身長の守山だが、その鋭い視線に篠村がひるむ。

よし、帰れ。眠い。…守山の背中見てると、眠さが増してきたよ。

篠村が急にプルプル震える。

「…………~っですよ。」
「…ん?」
「……。」

何か言った?
じっと篠村を見れば、カッと目を見開いた。

「…その冷たい目ええええ!ぜんっぜん足りませんから!罵るなら、春宮様にお願いします!」

廊下でそう叫ぶ篠村の姿に、少しずつ登校して来た生徒たちの視線が刺さる。

「…変態。」
「いや、変態が可哀想だよ。」
「…そう、かも。」

顔色を悪くし、千里と守山はヒソヒソと言い合う。眠気も吹っ飛ぶ威力だった。ドン引きする二人の美形を余所に、変た…篠村はヒートアップしていく。

「…良いですか?まず、角度はこのぐらいで…上から目線で生ゴミを見るように見下してくだ………げびゃふ!!」

そして言い切る前に吹っ飛ぶ篠村。華麗にフェードアウトしていく篠村を、二人の人物が蹴りあげる。
途中で、呆気に取られる守山と千里に気付き、深くお辞儀をした。

「…おはようございます。守山様、春宮様。これは、我々が処分致しますので、お気になさらず穏やかにお過ごし下さい。」
「…あ、そう。ありがとう。」

この二人、守山の親衛隊だっけ?

「いえ。当然でございます。」

守山と千里が教室に入ったのを確認し、その二人は篠村を空き部屋に叩き込み、修羅の如く殴り倒す。

「…おい、てめえ…よくも、普段より早起きなさった守山様の安らかな一時を無駄にしてくれたなあ?」 
「アンタは我々が丁重に地獄へ送りますよ、この変態野郎が!」

((それに、守山智様親衛隊…別名、守山様と王子様を友達以上恋人未満にし隊の邪魔をした事は、万死に値する!))



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