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プロローグ
若君様
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サラリと揺れる黒い髪を一つに縛り、中性的 な美形。身長は172センチで、細みで足は長 く詰襟のブレザーを隙無く身に着けた。
側で見守って居たメイド達は、全員が頬を染 めて主の見送りをする。
「…行ってらっしゃいませ『若様』。」
それに対し『若様』は麗しい微笑を浮かべ、 門をくぐり送迎車に乗り込む。
「行ってきます。僕の事を忘れないで下さい ね?」
途端に黄色い悲鳴が沸き起こり、その場に気 絶する者が続出したらしい。 勿論当の本人は気づいており、一人車内でく すりと笑っていた。
『若様』は、日本三大名家の一つ《春宮家》 の一人娘である。 そう、娘である。
「…ねえ僕、ちゃんと男に見えてる?」
「ええ。勿論でございますとも。お嬢様がま さか、女性に見える事は無いでしょう。」
老練の運転手に太鼓判を押され、若様は満足 げに頷く。
3年間男としてバレずに過ごせ。そうすれ ば、春宮家をお前にやろう。
中学を卒業した日、父に家を継ぎたいと言う と、その条件を出された。三大家は直系男子 のみが家を継げるのだが、娘しかおらず養子 を考えていた。
優秀な若君達を集め能力を見定めたものの、 その娘に一つとて叶う者は居なかった。能力 の劣る者に自分の立場を奪われる事が許せ ず、父に自分が継ぐと言えばそれを出された のだ。
向かうは全寮制男子校。幼稚舎から大学部ま である日本屈指の名門公だ。女とバレぬ自信 はあった。幼い頃から、中性的な容姿で間違 われる事もあったからだ。
メイド達さえ、時折女と忘れる者さえおり、 バレンタインには両手に余る量を頂いていた 程。
「…着きました。」
ぼんやりと考えていると、豪奢な門が目に入 る。今日から男として過ごし、家に帰る時間 はほとんど無い。
「行ってきます、爺や。」
老練の運転手は深々と頭を下げて『若様』を 見送った。
「行ってらっしゃいませ、若君様。」
側で見守って居たメイド達は、全員が頬を染 めて主の見送りをする。
「…行ってらっしゃいませ『若様』。」
それに対し『若様』は麗しい微笑を浮かべ、 門をくぐり送迎車に乗り込む。
「行ってきます。僕の事を忘れないで下さい ね?」
途端に黄色い悲鳴が沸き起こり、その場に気 絶する者が続出したらしい。 勿論当の本人は気づいており、一人車内でく すりと笑っていた。
『若様』は、日本三大名家の一つ《春宮家》 の一人娘である。 そう、娘である。
「…ねえ僕、ちゃんと男に見えてる?」
「ええ。勿論でございますとも。お嬢様がま さか、女性に見える事は無いでしょう。」
老練の運転手に太鼓判を押され、若様は満足 げに頷く。
3年間男としてバレずに過ごせ。そうすれ ば、春宮家をお前にやろう。
中学を卒業した日、父に家を継ぎたいと言う と、その条件を出された。三大家は直系男子 のみが家を継げるのだが、娘しかおらず養子 を考えていた。
優秀な若君達を集め能力を見定めたものの、 その娘に一つとて叶う者は居なかった。能力 の劣る者に自分の立場を奪われる事が許せ ず、父に自分が継ぐと言えばそれを出された のだ。
向かうは全寮制男子校。幼稚舎から大学部ま である日本屈指の名門公だ。女とバレぬ自信 はあった。幼い頃から、中性的な容姿で間違 われる事もあったからだ。
メイド達さえ、時折女と忘れる者さえおり、 バレンタインには両手に余る量を頂いていた 程。
「…着きました。」
ぼんやりと考えていると、豪奢な門が目に入 る。今日から男として過ごし、家に帰る時間 はほとんど無い。
「行ってきます、爺や。」
老練の運転手は深々と頭を下げて『若様』を 見送った。
「行ってらっしゃいませ、若君様。」
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