119 / 124
三章~新風紀委員会・親交会~
軋みsideC
しおりを挟む黒鎖は、基本的に授業に出ては居ない。普段はふらふらと校内を彷徨いているらしいと噂されているが、実際は勿論情報収集である。裏の稼業の者としては、一流の腕を持つ黒鎖。
医務室で一晩を明かし、簡単な身支度を整えてクラスへと向かう。それは、気まぐれでは無く確信だった。今日は何かが起こる。そんな気がしていた。
「今日は、編入生を紹介します。」
適当な席に座り、知らぬ生徒の困惑した視線を気にせず腕枕で顔を臥せる。そこ俺の席…なんて言葉など興味ない。黒鎖の関心を買うなら、春宮千里に生まれ変わって来いと言われるだろう。
仕方なく生徒は別の席に座った。素行の悪い生徒や、成金の多いクラスだ。席なら常に空きがあるのであった。生徒も黒鎖のある程度の噂を知っているのか、少々怯えも見せていたが。
編入生か…あの中の誰が入るのか見物ですが。
黒鎖は昨日の者達を脳裏に思い浮かべ、意識だけを教室の外に向けておく。
「氷室 京介だ。」
「あれ?それだけですか?」
蒼白色の髪の生徒は口を閉ざす。担任教師の戸惑いに続く様に、氷室は小さく頷きクラスを見渡した。
「…Cクラスは馬鹿が多いと聞いたが、その通りのようだな。」
氷室の瞳には、堂々と携帯ゲームをしたり、制服を着崩している生徒が映り、幾人かがその言葉に反応する。
「あ?誰が馬鹿だと?」
「…転校生の分際で生意気なんだよ、ふざけんな!」
ドスの利いた声で立ち上がる生徒等を、氷室はただ冷たく見据えた。やはり馬鹿だと言いたげに見据え、ゆっくりと腰を屈め構える。
クラス内にピリッと緊張が漂うも、黒鎖は気にせず目を閉じるだけ。ただ、一瞬その構えを視界に捉えて妙な既視感があったのだが。
「おらあ!」
「…真っ直ぐに突っ込んで来るとは。」
呆れを含む氷室の呟きと共に、向かってきた生徒は教室の端まで叩きつけられた。
既に教師は巻き込まれまいと「授業の準備だ」と、わざとらしく出ていく。生徒同士の問題は、風紀委員の所轄だからか。しかし、その風紀委員が氷室自身だと知っていたのかは分からない。
「…ふん、他愛ない。」
向かってくる生徒を、独特の型で吹き飛ばし、叩き付ける。恐れを為した生徒は、早々に席に座ったまま縮こまったり、氷室をあからさまに応援していた。
「…こ、黒鎖さん、良いんですか?く、クラスが…。」
小声でそう言ってくる生徒の言葉など、耳に入らない。
というか、誰ですか~?
むしろ気まぐれに寄っただけで、仲間扱いしないで欲しいと思う黒鎖である。クラスメイトという概念すら無い。
「貴様は、来ないのか?」
「…はい?俺の事デスかー?」
氷室の突き刺す様な瞳を見返す。
あーあ…千里さんの所行きたいな~。こんな、可愛い子一人も居ないCクラスに居てもつまらないですねえ。ああ、そういえば?
そこでやっと相手の型を思い出す。数多くの裏家業に関わってきた黒鎖には、見覚えがあったのだ。
「…貴方と戦うメリットは無いですしねー。というか、どおりで見た事あると…。氷室家って、“あの家”の分家でしょう?」
間違っても月宮に付くような家では無かったが…。
その家の名を口にしかけた瞬間、氷室の拳が黒鎖の頬を横切った。その拳が空を切り、氷室の米神にピタリと当たる拳銃の銃口。既に、黒鎖の姿は氷室の視界から消え失せていた。教室内の生徒は、動きを止めて二人の動向を見守るだけである。
「…小癪な。」
「おやおや~?まさか、一人で勝てるとでも?」
あの時黒鎖が窮地に陥ったのは、あくまでもガードマンが居たからだ。例え武道を極めた者だろうと、彼とは一つ大きな差がある。人を殺めたか否か。
黒鎖の口元に笑みが浮かぶ。
「…貴方、綺麗すぎるんですよねえ?どーも、彼方側の人間だと思えない。」
「それが何だと言うんだ。貴様に関係があるのか?」
月宮の側に居た者全員、何かしらの闇を感じた黒鎖だったが、この氷室には大した暗さは見えない。
「いいえ~。なーんにも?貴方の目的とかどーでも良いですし。」
銃口を音も無く離し、のんびり欠伸をすると窓枠に手を掛ける。
何か理由があるのか…。考えられるのは、目的の為に組んでいるのか、脅されているのか…。千里さんに関わらなければ、別に興味ありませんがねえ。触れたら殺すけれど。
そのまま窓から飛び降り、木やポールに跳び移りながら難なく地面に着地し、ヒラヒラと手を振り姿を消し去った。
横目に黒鎖を捉え、静かに周囲を見渡した氷室は一言口にする。
「…面倒だ。全員掛かって来い。」
その後は血気盛んな生徒が数名居ただけで、勿論氷室に返り討ちにされた。ものの10分足らずでCクラスは、編入生に制圧される事となるのであった。
0
お気に入りに追加
554
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる