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三章~新風紀委員会・親交会~
王子様と仮王子様
しおりを挟む・魅力対決
・忠誠心対決
・優しさ対決
・カリスマ性対決
「…勝負か。これだけだとよく分からないね?」
もう一度紙面を読み終えて、ポーズを決めたままの銀条に問い掛けると、よくぞ聞いてくれましたとばかりに身を乗り出してきた。
「そうでしょうね!勿論、この僕が完璧に準備は終えてありますからね。」
ふむふむ。この為に準備をしてくれたのか。やはり真面目何だろうな。
「えっらそ~。」と言う恵に若干びくつくが、直ぐに立ち直りを見せる。
「…此処では対決が出来ませんので、僕に着いてきて下さい。あ、用事がある方は良いですから。」
そう言って、千里に別室への誘導を始める。時間が掛かるかもしれないと帰っても良いと言ってきたが、やはり帰る者は居ない。
銀条の後を着いていく道中は、宇津井と園原が高等部メンバー一人ひとりに謝罪をしながら歩みを進めている。
彼らも大変そうだね。
何となく宇津井に労りの言葉を掛けると、深々と感謝されてしまった。 銀条…君は一体?
移動中は豪華な面々にすれ違う生徒達に慌てて礼をされながら、ある一室に着いたのだった。
「ご足労すみません。僕が対決用に作ったのは…此処です!」
入ったのはプレイルーム。中等部も高等部の生徒も自由に使用できる運動目的の部屋だった…筈なんだけれど。
「…おい、一体どうなってやがる?」
「うわ、珍しくどーかん。何これ?」
直久と明日霞は室内を見渡して驚きに目を見張り、知っているだろう中等部の宇津井と園原すらも固まっている。
四方の壁にはそれぞれ巨大なモニターが取り付けられ、それらを操作するだろうコンピュータとマイクも数多く設置されていた。唯一人満足そうな銀条が手を室内へ向けて、勝手に説明を始める。
「どうですか?これらは世紀の王子様対決をモニター&採点&サポートする為に三日三晩かけて作らせました。壁だってどんな音でも洩らさない防音ですからね。」
えっへん、と腰に手をあててとても誇らしげだ。
…あー。うん。特権振りかざすな、とも思うが僕への執念だと思うと何とも言えない。ドン引きする親衛隊隊長達の顔を見てほしい位だよ。
室内のモニターをよく見える椅子に座らせられ、控えていた執事が淹れてくれたお茶でやっと落ち着く。
「…では、最初の魅力対決ですが。」
「ああ。なんだい?」
うん。早速始まったなあ。よほど始めたかったらしい。
すると千里は銀条に別室に連れて行かれる。護衛だろうか、二人の執事が着いてきているのは銀条も気にしていない様だが。
しかし不思議だな。こんな時にチャチャを入れそうな黒鎖が姿を見せないなんて…。
まあ良いか、と思考を打ち切り銀条の説明を受ける。
「今回は魅力対決です!と言うのは、真の王子様ならどんな状況でも輝ける…。そんな訳で、此処からくじを引いた物を身に付けて魅力を発揮しますよ。」
つまりは、くじの入った箱から三枚引いたとてもダサい物を、スマートに着こなすのが内容らしい。
何と面ど…大変な勝負だな。
無理矢理進行役を任された宇津井がグッタリとくじ箱を、部屋の中央の台上に置いた。
公平正を期すって…急な勝負だからどうも出来ないよ?
アイマスクをつけて、銀条と交互にくじを三回引いていく。くじの内容を見ないまま別の小部屋に入れば、様々な衣装や小物が目に入る。禿げ鬘やアフロまであるが、関係無いと祈りたい。
さてと?僕の身に付ける物は…。
くじをゆっくりと引いていく。すると、外から何やら宇津井の声が響いて来た。
【…早くも銀条彼方が着替えを終えました!さて、どうなるでしょうか?】
へえ?腹を括ったのか宇津井の声は進行らしい物になっている。中々やるね。
感心しながらくじの文字を読んでみた。
「…ええと、ジャージ、眼鏡、ペロペロキャンディー?」
うーん。これはまた微妙な。
その頃、モニター室では銀条の姿が全面に写し出されていた。銀条の引いた物は(うさぎ耳、作業用ゴム手袋、エプロン)であった。三つ以外は、自分のアレンジを加えて良いらしいが。
「はい皆さん、僕の姿を見て良いですよ。」
緊張も無く堂々とする銀条は、サラサラの自分の髪にふわふわのうさぎの耳を付けて、白のフリル付きブラウスとかぼちゃパンツの上に、半分に畳んだエプロンを腰に巻いている。
作業用手袋は、手に嵌めずエプロンのポケットからチラ見せで、洒落た調子を出している。
【えーっと…。銀条彼方さん、どういったコンセプトでしょうか?】
宇津井の瞳は疲れた様子だが、声はモニター室に聞こえるように声を張っていた。
「えっへん!コンセプトはね、森の花摘みをするうさぎさんだよ?この手袋は敢えて少し見せることで…【はい、分かりました。早速採点に入ります。】
中等部では可愛いいと絶賛される笑顔で生き生きと話す銀条の説明を遮り、宇津井は淡々と進めていく。
(これ以上高等部の顰蹙をかいたくないからな。)
【えー。採点は公正にする為に、また別の場で見ている方含んだ高等部メンバー50名、中等部メンバー50名で一人2点方式です。つまり、最高が200点となります。】
自信満々な銀条は胸を張りポーズを決めて、採点を待つ。
【では、採点開始!】
モニター室ではそれぞれが手元のスイッチを押し始めた。
【はい…結果が出ました。銀条彼方さん……………115点!】
「わー……………へえ!?」
銀条の万歳の形の腕が、見事に固まった。
115点…高等部からの評価は15点という事になるのか、それとも中等部から100点を取れていない可能性もあるが。
「…何でなんですかー!」
わあっと不満の声を上げる銀条に、モニター室からの声が聞こえる。
「あのさ、君が思ってる程可愛くないよ。」
「うさぎ耳とエプロンの色合いが合ってない。」
「…一々ポーズがうざったい。」
辛辣なコメントに、銀条はガクリと項垂れる。
井の中の蛙といった所か。恵や美景レベルの可愛いさを見慣れている高等部メンバーに、銀条では敵わなかったらしい。
しかし、中等部のモニター室では「可愛い」と大盛況だが。
…嫌だな。出ずらい。
此処までの音や声が聞こえていた千里は、苦笑しつつ宇津井に目配せする。
まあ僕は、ジャージと眼鏡とペロペロキャンディだからな。評価はどう転ぶか分からないね。コンセプト…特に無いな。
【それでは、春宮千里さんが着替えを終えました、よろしくお願いします。】
千里の姿は、黒のジャージで、下は少し捲り脹ら脛が見える程度で、上は七分のTシャツに上ジャージを腰で緩く巻き、眼鏡をずらして頭に掛けてキャンディは飴を取り去り棒を人差し指と中指で挟んでいた。
(うっわ。普段制服をキチッと着た人のちょっと緩い感じって…相当くるって。)
【…ええと、コンセプトとかがありましたら…?】
コンセプト…やっぱり思い付かない。
「うーん、そうだね。部活帰り…?」
考えつつ手を顎に宛て、曖昧に笑みを浮かべて誤魔化して置く。その笑みで、中等部のモニター室では揺れる程の黄色い悲鳴に包まれたらしい。高等部モニター室は既に言うまでも無い。
思考の止まっていた宇津井は慌てて、咳払いしマイクを握り直す。
【では、採点を開始します。】
(終わったな。自称王子…涙が出そうだ)
【………結果が出ました。春宮千里さん、200点!】
モニター室からの歓声が聞こえてくるのだった。
銀条が砂と化した様に見えたのは、勿論誰も知らない。
次は確か…。
千里の方は、早く終わらせたいという気持ちだけであった。
・魅力対決
春宮千里win
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